日々の研究

日々の研究(リスト)

京大集中講義  12/15--12/17 最終更新:10月22日

神戸大集中講義 1/17 --1/19 最終更新:10月22日

 

10 月31 (日) 

ノート9頁を速攻で書いて、原田さんと林さんにおくる。 今日のところは間違いはないように思える。標準形理論の真髄は、 動力学を測定可能量が露になるように書き直していくことであり、 そういう意味で、非線形ランジュバンの標準形理論である。僕にとって、 標準形理論は、Bogoliubov らの非線形振動子に対するのがもっとも わかりやすく、その技法とMori-Fujisaka の非線形ランジュバンに対する 射影のアプローチをくみあわると、(林さんが神がかり的にみつけた) Hayashi-Sasa の直交条件が自然にでてくる、というのは、ノートを 書いていても楽しかった。

色々と次の展開がありえるのだが、欲張らず、まずは、わかりやすいデモを ひとつつけて、確固たる説得力を備えることだな。(理論として間違いない はずだが、使えることをアピールして地盤を固めるのも大事だ。)

10 月30 (土) 

たぶんできた。Hayashi-Sasa の直交条件は、「灯台」だったのだ。 形式的な射影は(恒等式の段階では)いくらでもつくれるが、粗視化 した段階で、きちんと測定される量をはじく射影の形式は、一意に きまる。何もないところからそれを考えるのは、困難をきわめるが、 遠くに「灯台」をみながら、あっちにむかっていけばいい、という風に とらえればよかった。[非線形Langevin に関する先行研究では、射影を きめる、というもっとも大事な問題が論点にすらなっていない。] 水曜日から、毎日ひとつづつおいこんでいって、今日の午後に、 最後の壁をとっぱした(つもり。)Hayashi-Sasa の条件の意味も たぶんわかった。モデルと状況によっては、直交条件を変更しないと いけないが、その変更のしかたもたぶんわかった。

来週火曜日をめどにノートを書くが、間違いでなければ、すぐに 使えることだけでもいくつかある。まず、時間依存の散逸係数の 閉じた表現がもとまる。(tilted potential の場合は、揺らす振動数 ωが大きくてもいいみたい。) 林さんが今やっている2体間の 非平衡有効相互作用を議論することがおそらく可能になる。 (現時点では、作業仮説が色々いるのだが、じかに議論できる。 算数の例題としてもちょっと面白い要素が加わって、パタンダイナミクス のパルス間相互作用の話と類似の話になるもよう。)つぶされる力の配分が じかにわかるので、原田さんが昨年からやっているエネルギー 効率を他の測定量からとらえるという方向性にも切り込んでいける(はず)。

原田さんの先行研究解説ノートをもらったのがちょうどひとつき前で、 それがなければ、最初の一歩がなかった。射影の方法を僕の言葉で完全 に理解したのが1週間前で、そこからは、正しい物理をにらんで、 ちゃんとしたのをつくっていくためにぼーとした時間を費やした。 とにかくノートを完成させよう。ぬかよろこびでないことを祈りつつ。

10 月27 (水) 〜 10月29日(金)

だいぶおいこんできた。水曜日、1歩前進。寝る前にtex 化し、 翌日はそのノートをにらむ。木曜日、1歩前進。tex 化して ノートをにらむ。金曜日、4時間睡眠でめがさめてしまった。 1歩前進。おそらく、あとひとつのはずだが、現在、停滞中。

10 月24 (日) 〜 10月26日(火)

いろいろ元気にしています。が、いろいろするのは、何もしない のと同じ、という言葉どうりに、何もしていない、という感じが強い。

あいている時間で、Langevin 系の normal form theory みたいな ことをつくろうと考えはじめてしまった。Fokker-Planck なら昨年 論文に書いたとおりだが、あれは、PDE 解析の標準的な手法のひとつ なので、方法として新しいものではない。今年前半の議論でも、 時系列に対する有効記述の話が頻繁にでてきて、これを議論する道具が ほしかった。「Hayashi-Sasa 9月号はそれの準備のためにあったのだ。 是非やれ。」と今日は夢にまででてきた。なんとなくできそうな気がするので、 いきかえりの電車とかで紙を睨んでいるのだけど、技術的にはとっかかり すらない。これができれば、あれも、これも、それも、、、結構、 協力な武器になるのだが。

10 月22 (金) 〜 10月23日(土)

やっと射影の形式を理解した。原田ノートの解説にもとづいて矛盾 のない式のありようについてこの1週間格闘していた。まず、系の状況や 自分がみたいものなどの「物理」とそれに無関係な「形式」の分離 をおさえた。原論文たちは、形式と物理がごちゃごちゃになって区別 されていない。また、その形式はたしてひくような無駄なことがいたる ところにあるので、超技巧になってしまっている。それもかなりほぐせた。

しかし、ここからが本当の問題で、これが本当に使えるのかどうか。 具体的には、NESS 下の測定可能な散逸係数を正しく与えるような枠組み になりうるのかどうか。有効記述したときに正しくノイズを与える ような枠組みになりうるのかどうか。マスを無視できるコロイド系 では、有効記述のノイズのわりあては、Hayashi-Sasa の直交条件で きまっていた(= Hayashi-Sasa の9月号)が、これを自然に含む射影が あるのかどうか。

ぼちぼちみていく。なるほど、なるほど、、射影のとりかたで記述が どうかわるかが頭の中でもみえてきた。(今まではそういうのは全くなしの 暗中模索状態だった。)そのなかに「ノイズの割り当て」をただしくできる のがあるかどうかだな。射影の問題では、そここそが問題の核心なのに、 そこがまったく議論されていない、という認識を公にしないといけない。 (金曜日も電話口で「Hayashi-Sasa 直交条件は、射影の方法ですでに やられているのでないのか?」ということをいわれて、「違うのですよ」 といっても伝わっている風ではなかったなぁ。。。)

10 月21 (木)

(ホストの)藤さんから連絡があり、未定だった京大の集中講義の日程が きまった。↑をつくったので随時更新していく予定。同時に神戸大のも 忘れないように書く。神戸のは、論文を書いてから講義構成を考えよう、 と段取りをきめたのだが、論文がいっこうにかけていないので、とまった ままになっている。やばいな。

京大の講義は、依頼にそって、川崎さんとの仕事をひとつの山場に もってきて、時空ギブスという視点から、そこへのパスをとおす、 という構成にした。SST も依頼のひとつなので、これは並列化して 行うことにした。Part A, Part B は随時まぜながら、かつ、 まざっているのが不自然にならないように時間割を考える。 もっとももめるであろう A-4-2 や B-3-2 は、最終日の午後に、 疲れ果てたところでやろう、、と。

10 月19日 (火)〜10月20日(水)

冬学期がはじまってから疲れのピークが月曜にくる。ちょっとよくない のでリズム調整が必要かもしれない。火曜日は、1時間遅く登校して、 岩田さんの話を聞いて、佐藤さん(元池上研)のセミナーにでて、残る時間で 射影の考え事をしていたらうたたねをしてしまった。けったくそ悪いので、 (普通の日には、リラックス時間にあてている)帰りの電車で、集中して 射影の考え事の続きをする。少しづつみえてきた。現時点で確実にわかった ことをノートにして、原田さんと林さんにおくっておく。火曜の夜、風呂で 岩田さんとの話を思い出していたら、根本的な間違いに気がついて、 慌ててmailをおくっておく。

オーストラリアの稲垣さんから嬉しいmail が届き、新潟の川崎さんから 「ぬ」というmail が届く。久々に Nigel (Goldenfeld) に連絡をとり、 RG 論文の宣伝をしておく。大袈裟な応答はあいかわらず。

10 月18日 (月) 

RG 論文 公開。 場の自由度をもった確率過程において時間相関関数の摂動計算したもの である。この手の問題では、たとえば、Zinn-Justin の教科書を読んで、 Field theoretical formulation を勉強して、ダイアグラムを書いて、 伝統的な手続きにしたがって、くりこまれた時間相関関数を計算すればよい。 こういう正当な技を勉強するのは大事であろう。しかし、高々、時間相関関数の 摂動計算をするのに、場の理論の形式をつかってダイアグラムを書く、、 というのは、何かはずしている。この論文では、Field theoretical formulation をすることなく、もっとも素朴な計算にたちながら、くりこみ群の考え方や その計算の仕方が「最小に」わかるような例題をとりあげた。 したがって、まだくりこみ群を勉強 していない人や勉強していても計算の海におぼれている人には役にたつと思う。

論文で取り上げた例題は、2次元外力駆動拡散系である。物理として新しい主張も はいっている。この系を(第2種)FDTをやぶる線形モデルで記述すると、 長距離空間相関がでることは知られているが、そのモデルの範囲では、 時間相関は指数減衰しかない。他方、この系を(第2種)FDTをやぶらない 非線形モデルで記述すると、時間相関には拡散係数に時間の対数補正が でることは知られているが、空間相関は局所的なままである。現実は、 (第2種)FDTをやぶる非線形モデルで記述するのが妥当であることは ほぼ間違いないのだから、その時間相関関数はどうなっているのであろう?  という素朴な問いを 考察したのである。その結果、第2種FDTの破れにともなって、時間相関 関数に時間の冪領域があらわれる、、ことになった。まぁ、ありがちな 範疇ではあるが、明示的な計算結果のデモとしては、ちょい面白いと思う。

また、日記でときおり書いていたように、それを目指した演習セミナーを開き、 その成果を論文にしたものである。セミナーでは、ガウス過程に関する知識だけを 前提にして、参考文献なして、参加者がゼロから試行錯誤で手を動かしてきた。 計算としては、ダイアグラムなしの裸の計算の実行でくらくらする部分がある。 そのもっとも困難な部分では、僕は単なる観客であり、中村君、大槻君の貢献に おっている。(夏休みに後追い計算をしたが、そういうのは楽。)

10 月17日 (日) 

射影演算子:原田ノートにもとづく整理ノートの続編を書いていて、少しづつ 賢くなってきたと思っていたら、前回のノート(10月5日)に根本的な欠陥 があることをみつけ、おたおたする。具体的な欠陥がある方が、論点が明快に なって集中しやすいので、これはよいことである。至急検討しないといけないが、 時間がとれないのがつらい。

10 月14日 (木)〜 15日(金) 

RG論文:中村君が 論文を投稿して、preprint server に up する。 (公開は月曜日の朝になる。)ついに摂動演習セミナーは最終回になった。 第3部の案として、未知の領域であがくことを考えていたのだが、 これはもう研究として、精神的にハードにやらないとやってけない。 もはや演習ではできないので、別の機会をまつことにした。

卒研:界面の不安定性の分子スケールへの侵入みたいな話を遠くにみながら、 ぼちぼちとその準備状況をみやま君に聞いたあとで、最新論文をぱらぱら みていたら、まさしくそういうことをやっている奴がいる。だれかと思えば、 またしても、L\"owen さん。例によってあらくたいが、アクティブだな。

いくつかの試行にとりかかろうとするが、手がとまり、結果としては、 もったいない時間の使い方をしてしまった。休日は、一点攻めをしてみよう。

10 月13日 (水) 

田崎さんにSST論文草稿(251k)をかえす。 コメントの分量は17kに膨らんだ。10で割って規格化すれば、 「マイナーコメントをちょこっとする」という感じがわかるが、 ざーとみただけでもクラクラしてくる。

RG論文草稿(23k):明日最後の議論をして、今週中に原稿を完成したい。

DLG-einstein論文改訂(39k): referee が喜んでいる論点をつけたしている のだが、まだ収束に向かわない。

夕方、明日、Leibler 氏のセミナーが本郷である情報が流れた。 午後の会議は研究室セミナーの14:30で退出する、と宣言してあるので、 研究室セミナーを中止すれば、そこから本郷にむかってもまにあうなぁ、 緊急案内をまわせばいいかなぁ、、と1分考えた。結局、やめた。 本郷へのいきかえりの時間をつぶす余裕もないし、有名人のすることは いやおうなく耳にはいってくる(実際、はいってきている)から、 耳学問ですむレベルならあえていくまでもない。 興味をもっている対象なので、刺激はうけるのは確実だと思いつつ、 ここ最近、そっち方面については、まったく頭をつかっていないから、 まともな議論はできないだろう....というのが判断の きめてになった。(もうちょっと前からわかっていたら、時間割りの こととかも含めて、ぜんぜん違っただろうに。)

10 月12日 (火) 

PNAS 論文:   論文題名に自分の名前が載るのは単純にうれしい。 論文の中身に関しては、これから、というのが正直なところだが。

論文のつめ(RG):よいしょ、よいしょ。論文のつめ(SST): うん、うん、うん。 論文改訂(DLG-ein): うーん、うーん。

接触しない球:岩田さんのアイデアを聞く。もとの問題をいったん切り離して、 別口にすすんでも面白いかもしれない。賭けだけど。

10 月10日 (日) 〜11日(月) 

SST論文のつめ、おわらん。

DLG-Einstein 論文のreferee への応答、林さんの草稿に手をいれる。

来年、米での6ヶ月滞在型研究会が受理されず、伊での1ヶ月滞在型研究会 として再申請されている模様だが、今度こそは、受理されるとうれしいなぁ。 受理されたとき全部出席する方向で、いまから日程を考える。その前に、仏で 1週間の研究交流会?みたいなのも申請されている。これは1週間だともったい ないので、予算を別枠でもってきて、もうちょっとぶらつく可能性を(心の中で) 検討している。(まだ受理されるかどうかも決まっていないのだが。)

10 月9日 (土) 

SST論文の論文草稿(tex)は 251K ある。何か「よし!」というのをみつけたときに その部分だけの報告を書く論文がだいたい 20k 〜25kで、計算をぐとぐとかいたり、 色々な周辺考察をかいたりすると、30k, 40k とふくらんでくる。これ以上に なるとなかなか読むのがしんどくなる。251 K というのは論文10枚分になる。 そのほとんどが田崎さんの手によるもので、論文書きへの僕の貢献はエラーバー 程度なのだが、もう最終段階なので、細かい点まで全部みる。

今日はひたすらその作業で、ほとんど完璧に近い草稿なのに1日かかって もおわらず、コメントを書いた文章(plain text)のサイズは 11 k まで 膨れてしまった。原稿サイズが10倍違うので、普通サイズの完璧に近い 論文草稿に1k くらいのコメントをちゃちゃとするくらいの感覚が、11k のコメントに対応するのだと思えば、まあ、そんなものか。もうちょっと コメントを追加して、それをふまえて草稿に手をいれて、田崎さんにかえす 予定にしている。

この論文については、書きたいことが湧いてくるのだが、 公開したときに書こう。

10 月6日 (水) 〜 10月8日(金)

ここいらでやすまないとやばい気がしたので、体調調整期間にする。 もちろん、論文の改訂や論文のしあげなど、最低限のことはやっています。

木曜日の大槻君のセミナー:簡単なモデルをくみあわせていって、論点を分岐 させながら、降伏応力の統計力学的起源にすこしづつ前進している。しかし、 くしくも、OHPに先攻研究と紹介があったとおり、先に攻められている分、 各ポイントでのつめがよわく感じる。そのあたりを少しいじわるく指摘した のだが、金曜日に大槻君にあったら、「鮮やかな予想」をたててきた。これが 本当だったらすばらしい。これなら、「あとぜめ」でもいける。残念ながら、 公開日記に詳細は書けない。半年後くらいには結実したらいいなぁ。。 いいアイデアがでたとき、もうフランスあたりでそれがでているのでないか、、 とか考えだすと、緊張感がたかまるのは本当だと思う。こういう緊張感を 味わえるのは非常に楽しいことだと思う。

10 月4日 (月) 〜 5日(火)

2日で10を越す用件をこなし、放心状態になっている。[清水さんと エレベーターの前で議論するとか、イギリスから帰ってきた金子さんと 話をするとかは、予定にない突発的なもので、上の数にはいっていない。] (”本当の”ダブルブッキングも2件やってしまっていた。)用件の多くは、 物理に関するセミナーだったり、講義だったり、議論だったので、つらくは ないし、どれも有意義だったのだけれど、分断して長時間にわたると疲労感 を覚えてしまう。急に寒くなって、体調も低空飛行だし。夏の疲れがでている のかもしれない。

10 月3日 (日)

原田ノートのおかげでやっと射影にピントがあってきた。平衡の場合は、 FDR があったから使える射影が(あらかじめ)わかっていただけで、非平衡 の場合には、そもそもどういう意味で使えるか、というところを「こみ」 でみないといけない、という視点から少しづつ前進。(つまり、そこを えいやぁ、とやっている限りは、いかなる意味でも意味のある命題はでない。)

10 月2日 (土)

調べ物をしていて、 Institute of Physics に遭遇した。案内はきていたが、みたことなかった。electric journal をのぞくて、(宣伝期間というのもあるせいだろうが)、Physical Biology は、 まずまずの秀作がそろっている。Libchaber の最近の仕事をしらなかったが、 さすがだな。references も参考になる。(木曜日の研究室セミナーでざっと 紹介する予定。)Journal of Statistical Mechanics をのぞくて、Cohen の Jarzysnki eq 批判と Chris の 応答がのっている。

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