日々の研究

日々の研究(リスト)

来月の日々研究

7/31(火)

ばね分子すり系:数値実験開始。1時間でプログラムを書く。最初に、解けるモデル の結果の再現をする。ちょっと手間取ったが、最後のbugを帰りの電車でつぶして通 過する。解けるモデルは特殊すぎて色々と具合が悪い、というのが先日の結論なの で、もっとも簡単な解けないモデルに拡張する。今週中にこのモデルで「SST等式」 のチェックを行うのが目標だが、まずはモデルの個性になじまないといけない。短 時間の実験をたくさん行い、種々の物理量の平均値、揺らぎの大きさ、緩和時間な どのパラメータ依存性などを頭にたたき込んでいく。

7/30(月)

引越し:荷物あけなど。その勢いで、前の部屋では見苦しく床をはっていて 何度も人間の足をひっかけていた電話線(電話口から僕の計算機まで何メートルか ある)を180cmの高さにあげる。こういう作業は苦手なんだが、なんとかなった かな。

夜、お盆までにやることをだだだと書きつらねる。 Summer School 数理物理'01 の準備とSST関連の数値実験がmainだな。

深夜、数理物理の構成を考え始めるが、「確率の記述」と「確率過程の記述」 の導入にはまってしまい生産性はゼロ。(形式的な仮定ですましたくない。 かといって、エルゴードやら射影でミクロからひっぱってくるふりをするのは おそらく外している。) うううむ。

7/29(日)

引越し。基本的には子守役なんだが、非常に疲れた。

7/28(土)

明日引越しなので、ばたばたしてみるも、実質的にはあまり寄与していない。

7/27(金)

猛暑がすぎて、秋になったのか? 朝食時に、爽やかな風が部屋に吹き込んでくる。 昨日の頭痛は、いつものビール一本で治った。

金子さん主催の国際シンポジウムに参加する。行きの電車の中で、非平衡測度に 関して、モデルのミクロな情報を不定のまま、マクロな実験結果について結果を だしてしまう、Siggiaらの手品の種が分かった気がした。関連する文献などを思 い出しながら、どうすりゃ実証できるのか、SSTとの関係ではどうとらえるのか、 などを考えながら、会場(山上会館)についた。という背景があったので、「ミク ロで全て枚挙してからマクロを考えるのでなく、ミクロとマクロの関係で決まって くる機構を理解する」という金子さんのいつもの主張が、いつもより深く耳に届く。 勿論、生物の場合には、意味のある理論は簡単ではないけれども。

7/26(木)

午前、4件の書類の処理を完了させる。午後、会議。終了後、論文草稿に手をいれ て、田崎さんにおくる。いかん、頭痛がする。(珍しい。僕は頭が頑丈にできている のか、あまり頭痛にならない。)

論文草稿に手をいれるため、いくつか文献を読んだ。80年冒頭のSiggiaたちの 論文が面白かった。非平衡定常状態の揺らぎを研究するために、Langevin 形式 を「どう拡張すべきか」、、ではじまるのだが、論文の最後で、揺らぎを推測する一 般的な原理がない(からどうしようもない)...と終っている。( )内は佐々がつけた。 それでも、力づくで計算し、非平衡揺らぎの実験と比較しているから驚きではある。 論理的には、論文の最後で嘆いているように、1個未定関数があるからどうしよう もないはずなのに。しかも、abstractをよむと、統計を決めているらしい。。不思 議だ。持ってかえってちゃんと読んでみよう。(意味が解読できたら、参考文献に いれないといけないかもしれない。)

僕がこれからやろうとすることに近いが、原理なき拡張をやるわけではない。 「SSTが原理になりえるか」を問うのであって、うまくいけば、SSTが堅くなる だけでなく、新しい予言もついてくる。

7/25(水)

論文草稿の改訂:いじくりすぎてバランスが悪くなったかもしれないので、もう 一度検討しよう。他のワープロ作業たちは、だいたい予定どうりに仕上げる。 明日、てきぱき仕事をすれば、来週の水曜日あたりから、(研究集中の)夏休み モードにはいれるはずだが。。。

寝る前に、アインシュタイン1905年のブラウン運動の論文をみる。当然の ことだが、熱力学と統計力学を前提にして、Einstein関係式をみちびく。(確率 過程の言語になれすぎてしまって、こういう議論を忘れてしまっていたな。) 同様に、ばね分子ずり系の場合でも、非平衡定常状態での熱力学と統計力学が ある(と思っている)のだから、SSTを出発点にした論理展開で、設定された状況 に対応する(確率過程)モデルを美しく一意に絞り込めることができるかどうかが、 正しい論点だという気がしてきた。

寝ているとき、「ここでこれを使ったら、いけるはずなのに...」などと うめいていて、妻が心配していたらしい。(もちろん、記憶なし。)

7/24(火)

会議終了後に外にでた瞬間、「暑さ」の圧力で、建物におしもどされるかと 思った。東京の公式発表の温度は、38度を越えたらしい。

深夜、(決して公になることはない)書類を仕上げようと思ったが、ワープロを開く 気力がなく、クーラーの麓で天井をみていた。食欲が落ちるなどの夏バテはない のだが、研究時間ゼロというのがストレスになっているな。

7/23(月)

やるべき項目が多いので、手帳をみながら仕事をこなす。今日は、大小あわせて 9つのことをしないといけなかったが、どうも無理なようだし、明日は、午前から 会議だし、夕方に完遂はあきらめた。

明日からの好村さんの講義にいけないので、講義ノートを打ち出してつんどくこと にしよう。近いうちに必要になる予感はある。

ばね分子モデルのずり系は、ノイズをいじるという禁断の手をつかったapplication 次第なので、ちょっと寝かそう。(そう思って見ると、状況証拠はあるんだけど。)

どっちにしろ、ばね分子のΨのイメージは簡単すぎたので、逆に深みにはいれない という欠点があった。そこで、非平衡秩序変数が直観的にみえない題材を考えよう ....というわけで、寝る前の布団で、driven lattice gasを頭でうごかす。平衡で equal weightな配置が、非平衡のせいで重みがかわってくるのをみればよい。もっと も簡単なのは、ええとたぶん、3 x 3格子の3粒子の場合で、これとこれとこれが そうで、、どっちに重みが傾くんだ?? さっぱりわからん。最終的には、 local field としての非平衡秩序変数が、このスピン世界から定義できるはず? (ただし、SSTが本当なら。) ここの移行がわかるだけでも面白いな。引っ越しが 終ったら、即、モンテカルロやろう。

SST論文の草稿:手のいれようがないくらい濃密だが、導入部分でちょっとだけ 手をいれたくなったので、どのようにいれるかを考える。

7/22(日)

7年ぶりの引越し:引越しに向けて、片付けをしていると、7年間まったく触って いないものを見付けてしまう。例えば、「砂」のセット。色々な砂が袋にはいって いた。たしか10年前、家で実験しようと思って、(江坂の)東急ハンズで買った。 少しは実際に使ったはずだけど、残った奴だな。千葉にきてからは、押し入れの 奥に閉じ込められたままになっていた。捨てるのはもったいので、大学に持ってい くことにした。台所の奥からでてくるのは、おぞましいのもあるな。7年でよかった。

とりあえず、〆切のある書類からやっつけようと、片付けの合間と家族が寝ている間 にワープロをうつ。今日はたくさん書いた。物理は休憩。プールにもいけない。

7/21(土)

今日、予定していた書類は、完成せず。困った。明日は、明日の予定の書類がある のに。明日に積み残すと、雪ダルマ式に増えていく。。。引越し準備も、あれや これやとしないといけないし。

SSTのモデル研究の妥当性に関する「迷走」はつづく。(もっとも健全そうに思える) ハミルトン系+確率反射ルールの熱浴でも、平衡から離れると何故よくないか、と いうことを田崎さんに mailで 説明しようとしていて、「SSTとあうようにつくる」 以外の方向がすこしみえたかもしれない。そもそも、確率反射ルールは、bulkの統 計と反射ルールがconsistentになるようにデザインしないといけない。bulkの速度 分布がマクスエルからずれはじめた段階で、反射ルールを変更しないといけない。 この変更は、bulkとのself-consistencyで決めないといけないから厄介である。 (具体的にどうやるのかは、まだよくわからない。) このように苦労して調整 したモデルでは、SSTが成立すると思う。これで、SSTが成り立たなかったら、 SSTはアウトだろう。

しかし、もし反射ルールを今のルールに保ったまま、熱伝導をみるなら、 $(\Delta T)^2$のオーダーで食い違いがでる。摂動的にいえば、SSTはそのオーダー を厳しくみるので、その違いは本質的である。(正確には、SSTは線形非平衡など という制限をはずすことに意味がある。)

同様に、ブラウン運動型のモデルの場合には、ノイズを平衡の条件に保ったまま ではよくない。(非平衡度の2乗の寄与からよくない。) しかし、その場合には、 ノイズの条件を、確率反射熱浴モデルのように、consistencyから絞り込むことは できそうもない。昨日書いたように、SSTと整合ならば、どういう結果がみえるか、 、という論点しかないように思える。。射影の議論を組み合わせる、、という手も なきにしもあらずだが、、、ううううぬ、ちょっとしんどそう。

ついでに、ボルツマン方程式の場合は、非平衡度に応じて、方程式自身にどういう 風に補正が加わるべきか、と考えていたら、よくわからなかった。(BBGKYからボルツ マン方程式への導出にたちかえって考えると、補正がつくように思う。だけど、 どういう感じになるのかわからない。) もし、奇跡的に、希薄極限では、ボルツマン 方程式に補正が必要ないとすると、統計力学パートまで含めて、SSTとばっちりあう のかもしれない。

7/20(金)

月末に急拠引越しをすることになった。まだまだ夏休みモードでないのに、さらに 忙しくなる。関連する買物などにもでかける。色々なことが重なったので、来週冒 頭に予定していた京都いきは取り止めて、大学で(研究以外の)仕事を消化すること にした。

ずり流下のばね分子モデルの熱力学部分をどうしようかと考える。定積FIOの設定 のモデルなら、こんな感じでいいかな。SST側からの計算で、非平衡秩序変数Ψ を測定量であらわして、Ψに関するfluctuation-response-relation (FRR)が 成立するはずなので、ここで、この等式がなりたつかどうかをみる。。。という あたりだな、第一段階は。

昨日の瞑想をもうすこし丁寧に書いておこう。迷走かもしれないが。

実は、今のモデルでは、FIOはほぼ自明に成立するのだが、等式(=FRR)が成り 立つとはとても思えない。密度変化のずり率の2乗の効果がΨに寄与するのだが、 非平衡の扱いが「原理なき設定」なので、そこまでの議論にたえれるほどのモデルでは ない。そもそも、そういうモデルは、世の中にないのではないか? 例えば、村上 君(東大工)が格闘しているハニルトン系+確率境界は、「強いモデル」と一般的に 理解されているが、それでも壁の反射ルールは、平衡分布との整合性のみで決めら れているので、非平衡度の2次のオーダーでは信用ならない。金君(京大人環)が格 闘しているボルツマン方程式にしても、温度勾配の2次の項まで議論するなら、そ もそもモデル自身に温度勾配の2次の項がはいる余地があるので、(希薄領域での) 流体方程式を出すことはできても、SSTの正当性を議論する基盤はない。

SSTの等式を生の実験で検証されたなら、非平衡度の強さに関係なく、あらゆる非平 衡定常状態のモデルはSSTと矛盾してはならない、という強い原理をえることになる だろう。しかし、生実験で検証される前に、モデル研究でSSTを検証する、という計 画はそもそも実現不能ではないか。

できそうなことは、(揺らぎまで含めて)SSTと完全に整合するモデルをつくることで ある。例えば、ずり流下のばね分子モデルの場合、非平衡度の2次のオーダーから 流体の揺らぎに異方性が生じるので、そこをパラメータ化して、(揺らぎを含めて) SSTを合うように調整することができるかどうか、を問う。

即答はできないが、そのようなモデルはありそう。しかし、もし、それができたと して、どういう位置付けになるのかが分からない。「遊び」のレベルでは、面白い。 しかし、SSTの是非が確立していないまま、そこまで走るのは危険でもある。もちろ ん、モデルの絞られ方にも依存する。きわめて自然にモデルが絞られていくなら、 「SSTと完全に整合するモデル」に付与価値はつく。

現象論でやっているのに、実験がまだないときは、基盤のしっかりしたミクロ側 (e.g. 古典力学や量子力学レベル)にもどって、非平衡を議論できれば、信頼でき るようになる。しかし、この方針は極めて困難である。環境の扱いを「えいやぁ」 とやってしまえば、結局、モデルにすぎないのだから、それならば、現象論として あるべき姿をきちんと考えるのが正しい。そもそも、線形応答論ですら、ミクロか らはほとんど何も理解できていないだから、SSTどころでない。(注:ミクロから 理解できた、と思っている人がいるなら、立ち止まって考えよう。)力学レベルで のミクロとの対応を考えるのは、SSTが完成した後だろう。完成したら何とかなる んでないか、、と思うこともある。逆に、SSTがなけれは、線形応答理論の範囲で も、正しいミクロからの考察は、不可能に思える。

現象論に徹する範囲ですぐに思い付くことは、例えば、高分子ずり系のhigh-shearing rateの領域で、本質的な問題設定をし、通常のモデル(e.g. Doi-Onuki流)では全く あわないが、SSTにあうようなモデルにするとばっちりいける、、ということを提 出することかな。現象論の場合、問題設定が非常に大事だから....さてさて、 どうすりゃいいんだろう。

いずれにせよ、(揺らぎまで含めて)SSTと完全に整合するモデルをつくる方向で 走るのは止めない。現象を一旦忘れて、モデルをどれくらいの強さで絞っていく のかを楽しみながら、きたるべき現象レベルでの勝負のときに備える、というこ とかな。

7/19(木)

瞑想。第一点:やっぱり、SSTの熱力学部分からみないとだめだ。第2点:しかし、 SST熱力学の予言する不等号部分というのは、直感的におかしいことではないので、 そこだけをみせてもSSTの本当の凄さは実感できない。だから、SST統計力学とくみ あわさった証拠をださないといけない。第3点:しかし、線形非平衡領域ならとも かく、そもそもモデルに任意性がありまくる領域では、(統計力学も含めた)SSTと一 貫するかどうか、ということにどれだけの意味があるのか。第4点:それでもなお かつ歯を食いしばってモデル研究を続け、建設的なことを見出すにはどうすれば いいか。

7/18(水)

眠い。定期試験の監督2/3終了。恥ずかしいことに、監督に遅れてくる教官が結 構いる。眠いからよけいに腹がたって、言葉使いが荒れてしまった。

真夏の引越し? 8月上旬までに引っ越せ? で、書類はまだないので、作業に いつから入っていいのかわからない?? どういうこっちゃ。日程を決めれな かったら、何もかも決まっていかないではないか。いっていることが矛盾している、 と思わないのかな。眠いから余計に腹がたって、言葉づかいが荒れてしまった。

...という合間に、昨夜布団の上で理解したと思ったことについて、紙の上で具体 的に計算してみると、、、ありゃりゃ。ううううむ。きついなぁ。線形非平衡 領域だといいんだけどねぇ。。。て、それだと昨日の夕方のままではないか。 眠いけど、これは腹が立たない。

7/17(火)

土日にやった、ばね分子ずり系の応力計算のノートをTex化していると、ずり=0の 場合、「平衡統計力学」の結果とも矛盾しているではないか。がーん。これはいかん。 SSTどころでない。「計算間違い」と「慌てんぼミス」と「解釈間違い」の3点を発 見して、やっと辻褄があった。「非平衡の前に、平衡で完璧にしとかないといけな い」とか「外場をかける前に、外場=0の場合の性質を確認しないといけない」と か、周りにいいながら自分がこけていた。

というわけで、SST統計力学の考察は、明日から再出発。

明日は、7時前に家をでないといけないので、眠くないのに布団にはいる。 まったく寝つけず、結局、普段(1時-2時)より遅くなる。しかし、おかげで、 SST統計力学の考え方をやっと理解したつもりになった。紙に書いて確かめない といけない点や、技術的な問題はすこしあるものの、粗筋はつかんだと思う。 まず、この例題では、SST統計力学が期待された形できちんとあり、Hatano-Sasa の維持熱の議論と組み合わせて、輸送係数(の補正)もきまる。解ける玩具モデル なので、輸送係数の補正は、最初から計算されているが、このモデルに関係なく、 SST統計力学経由で計算できる形式になりそうなのは嬉しい。

実は、玩具モデルでの正しい応力表式に到達したあとも、「SST統計力学が期待された 形できちんとあり」ということが、見えなかった。具体的に計算された定常分布は、 期待された統計力学の形と違っていたからである。しかし、SSTの統計力学とは、SST の完全な熱力学関数できまる属性をミクロから確率で決めるものであり、それ以外の 量までをみることはない、、いや、みてはいけない、のである。確率過程としてモ デルが与えられたとき、定常分布関数は存在するが、その定常分布関数は、SST統計 力学のアンサンブルからすると細かいもろもろまではいっている。だから、そんな ものを真面目に受け取っていけない。例えば、ずりの場合、流体の速度方向の垂直 応力はマクロな量ではあるが、みてはいけない。これをみないことによって、統計力 学が書ける。勿論、SSTとして関わってくる、ずり応力や垂直応力は計算できる。 テンソルをなす物理量なのに、ある成分は捨てないといかない、ということを 悟ったのである。平衡統計力学を思い出しても、もっともらしいことに思えるし、 これこそが、「SSTから非平衡統計へ」という路線を象徴することではないだろうか。 今は興奮しているが、大きな一歩か、、真夏の夜の夢か...? (何時間寝たんだろう?)

7/16(月)

寺田君の中間発表。多粒子系における不可逆情報損失Iの計算は順調である。 (安定してうまくいくようになったのは、この最近だが。)熱力学極限で、 Iがエントロピー差に収束する、という直接証拠に到達する日も近そう。 1年前の論文も、夏休み中には改訂しないといけない。

SSTの熱力学パートで完全に混乱してしまったので、田崎さんと電話で直接話をする。 論点は明解になった。目前の計算ノートが抱えている問題が解決したわけではない が。。。

素粒子論の友人からchaotic string に関する明解なコメントをもらった。 「数字あわせ」とみるとしても、「素粒子論としての不自然さ」があることは、 よくわかった。また、ランダムネスや確率をつかって、標準理論のパラメータ を説明しようとする類似の研究も教えてもらった。

7/15(日)

あれこれ考えていると、結局のところ、SSTの熱力学パートの理解が不十分だから、 統計力学パートでふらふらする、ということになった。うーむ。

7/14(土)

ばね分子系のずり定常状態で、SSTと辻褄があった形に整理できるかどうかという先週 末の練習問題の続き。計算できるものを全部並べて、対応表を考える。「ばし」と、 はまらないので、山師的勘で、(あるべき)SST統計力学の形を変えたりして、ごにょ ごにょする。

役者は揃っているのだから、ジグソーパズルのように、しかるべきところにしかる べきピースをいれればいいだけのようにも思えるときもあるが、SSTが壊れて、 全てが壊れる可能性もあるしなぁ。落ち着かない。

7/13(金)

4年セミナー「ランダムネス」、最終回...にならず、延長戦へ。

熱力学講義の最終回、恰好よく最後を飾る...といきたかったが、手の抜 き方を失敗した。(プレゼントで風船をもらった。)

会議。説明資料をもって望むも質問なし。高塚さんの司会は明解かつ迅速なので 気持がよい。

Doi-Edwardsの本にある、"定常状態下のdynamical free energy"というのは、 たぶん、SST-free energyをLegendle変換して、仮想変位をあたえたときの変 化分だな。"Principle of virtual work"というのは、多分、The minimum (intrinsic) work principle of SST から帰結 されるようなものだな。会議の 合間に、(みきちゃんから借りた)本を読んで得た知見は重要だった。もう ちょっとまじめに検討しよう。今までDoi-Edwardsをみてなかったの は迂闊だったので、 慌てて、"The theory of Polymer Dynamics"を注文する。

昨年の8月の終り頃、土井さんが、SSTとレオロジーの関係について気にしていた 背景にはこういうのがあったのか。

7/12(木)

おっとっと。Christian Beck の'Chaotic strings and standard model parameters' (hep-th/0105152) が、実際以上にセンセーショナルに伝わるの はよくない。この日記の記述に責任もあるみたいなので、ちゃんと書いておこう。

ここです。

非平衡測度/流体の基礎をめぐる議論。。。うううーん。筋書きは実証できる ところまでひっぱらないと意味ないからな。何かひとつ欠けているような 気分がする。

7/11(水)

4年セミナー「ランダムネス」:Von Mises流の素朴なアイデアは「ランダムな無限 列から虚心坦懐に部分列を選んでもランダムな無限列になる」という点にある。これ を形式化することによって、ランダムネス(と同時に確率を)を定義しようとする試み はうまくいかなかった。このセミナーでは、確率は現代数学のものに従い、ランダム ネスはMartin-Lofなどに従い(= これらを勉強しつつ)、Von Misesの精神を追ってき た。今日到達したmain theorem をおおざっぱにいうと、次のようになる。

(Martin-Lofの意味で)ランダムネな系列から、「ある確率装置」をつかって、 部分列をぬきだすと、確率1で(Martin-Lofの意味で)ランダムな系列になる。

「確率装置」っていうのが不明なことに不満な人のために、明示的な例でかくと、

x が{0,1}の(Martin-Lofの意味での)ランダム系列とする。計算可能な確率分布に したがって生成された{0,1}系列 y をxの下に並べて、系列 y の数字が1のところ だけ、系列 x から選ぶことにより、系列xの部分列をつくる。この部分列は、確率 1で( Martin-Lofの意味での)ランダムになる。

例えば、「虚心坦懐に部分列をひとつ選ぶ」というところを、「xの値を参照しな いやり方で選ぶ」というデーモン禁止ルールくらいでいいんでないか、と思うかも しれない。(Von Misesのoriginalのアイデアだが。)実は、それだと上の定理に相 当することはいえない。

デーモンがでてきたところで、想像がつくように、上の定理は、熱力学の基礎とも 関係している(ように思える)。実は、論文の著者(Lambalgen)も、その対応に言及 しているのだが。。そのあたりまで踏み込んで考えるのは、将来の課題にしよう。

次回、Main TheoremとKolmogorov complexityとの関係を議論して、このセミナーは おしまいになる。

7/10(火)

今週は2倍モードの公務活動をしないといけないので、(木曜日だけでなく)今日の 夜もホテル泊。当然、まとまった研究時間はない。

それでも、あいた時間に、Christian Beck の'Chaotic strings and standard model parameters' (hep-th/0105152) を検討したり、参考文献をコピーしたり していた。今まででも、例えば、CMLをつかって、Ising クラスの相転移を実現 できる、という研究があった。こういう場合は、CMLそのものというより、CMLの 振舞いがマクロな普遍性を満たしていたことに意義があった。そして、CMLは、 その中で「簡単」に書けること(=表現レベルでは、glauber dynamicsより簡単。) という役割はあったが、その「簡単さ」に深遠さはなかった。今回のこの話は、 CMLの写像部分を変えるとまずだめ。確率過程で置き換えるのもほぼ無理だと思う。

専門家がみたら、瞬時に無意味であることがわかるかもしれないので、いかがわしさ がないか、現象論の部分でどれくらい真面目に解析されているのか、というのを、素 粒子論の友人に問い合わせている。(mixing angle なんて16年ぶりくらいなので、 未だ、色々なパラメータが空を飛んでいるレベル。)

まったくの無意味でなければ、僕なりにこの問題に関わっていこうかな、、と思い つつある。それだけ強い衝撃を受けた。昨夜、寝ながら考えた。ポイントは、(こけ てもいいから)僕にしかできない、意味のある、そして、まずはカオスの側に足をお いた、アプローチができるかどうかである。昨夜の答えはYESだったが。。どうかな。 まぁ、ゆるりとやろう。

7/9(月)

金子さんから、Christian Beck が書いた'Chaotic strings and standard model parameters' (hep-th/0105152)を教えてもらう。(Witten, Polchinski, Parisi, Kaneko が同時に引用されている論文ってのもまずないだろうが、それは さておき、) あるCMLのある量がstandard model (= QCD+Winberg-Salam)の結合定数 と高い精度で次々と対応づけられていく。エネルギースケールによる結合定数の 変化から、lepton, quark, gauge boson, neutrino, Higgs の質量が、小数の (= 個数はまだ読解できていない。) fitting parameter で決められる。たとえば、 neutrino, Higgs の質量は、高い精度で予言される。CMLとstandard theoryとの 対応の解釈に、stringの知見を使っているようだが、SST(=super string theory) の技術は全く使わない。だから、standard modelまでの知識があればよめる論文 である。今のところ深さはわからないが、偶然にしてはできすぎているように 見える。著者がこれらの対応を見出していたときは、興奮しただろうな。

ちなみに、C Beckは、(僕ももっている)カオスの入門的な本を書いてる人で CML数値計算の部分のデータを捏造しているとか、そういうことはない、と思う。

7/8(日)

昨日のノート:SST自由エネルギーから非平衡秩序変数を計算するところがガサツ だったので、丁寧に考え直さないといけない。とくに、土井さんの計算との関係を はっきりさせないといけない。

FIO論文原稿: まずコメントを書く。このコメントにしたがって、対案つくりに はいったが、「Ψの熱流相関による表現」の(論文のスペースに収まるような) 再導出を考え始めてしまう。。実は、すぐ上の問題とも絡んでいるはず。

市民プールに表示されている、14時現在の温度は、1週間前より10度も低い。 水温はほぼ同じ。

7/7(土)

ばねでつながれた粒子対にずり流を与えたときの定常状態を考察する。ただし、簡 単のため、粒子対が壁にぶつかるときの重心運動と相対運動の混合を無視しうる モデルにした。この場合、重心運動に関する並進運動と相対座標に関する循環運動 (=回転に近いが、純粋な回転ではない)を外部運動として分離すると、残った内部 運動は詳細つりあいをみたす。ここでの「ひきざん」は、Hatano-Sasaの維持発熱の ひきざんと等価になるので気持もよい。モデルが簡単なので、具体的に内部運動に 関する「非平衡ハミルトニアン」を書き下してSST分配関数を計算し、非平衡秩序変 数をもとめる。

非平衡秩序変数はモデルとして「やらせ的に」はいっていないから、そのミクロ モデルとの対応は自明ではない。そこで、その非平衡秩序変数に対するミクロな 対応物を探索することが次のステップだが、、、ええと、どこから攻めるんだ? ひとばん寝かそう。

田崎さんが書いたFIOの論文草稿ver.1が僕の手に渡って数日がたつ。これ以上寝かす わけにもいかないので、コメントと改訂案のポイントを絞る。(書くのは明日になる かな。) Letterにまとめるのは難しい。しかし、「非平衡秩序変数」の重要性が明確 にわかるように、現象論をきちんと整備した論文は必要であろう。

7/6(金)

Gacs論文のGrayのreader's guideの池上研/行田君によるreviewを昨日のセミナー で聞いた影響か、朝目覚めてから、その問題が頭にloadされて、素朴な疑問が いくつか湧いてきた。(単純に面白い、という以上に)意味があるのかどうか、 まだわからないけど、依然として刺激的である。(paper はまだ読んでいない。 読む予定にしていた5/4は、FIOを考えていた。夏の帰省のときに読もう。)

7/5(木)

なるほど。富田ー富田を非線形拡張すると、かの有名なきれいな分解の他に余分な 項がつくことは既に認知されていたようだ。(マクロ系では一般的?に消えるらし い、、とは理由がわからないが、DLGなどでは消えるそうだ。) しまったな。こう いうことは97年の講義のときにきちんと消化すべきだった。この力の実体もよ くわからないし、研究方針も迷う。この分解にとらわれずに、強引に循環運動を 定義して、残余を詳細つりあいをみたすようにすることもできるが、維持発熱の 議論と辻褄があわないしな。

7/4(水)

粘弾性SSTノートにひと区切りをつけて、しばらく寝かす。

「内部運動が詳細つりあいをみたすような、外部運動(=hydrodynamics, secular motion)と内部運動の分離がある」だろうという予想の証明にむけて、非自明な簡単 な例と格闘する。当初予想していた分解では内部運動の詳細つりあいが(おしいと ころで)示せないので、とりあえず、そういう分解がある、ということを示す路線 の証明を書き殴って寝ることにする。

7/3(火)

いかん。全然、自明でなかった。「思い込み」をもってみれば自明にみえるが、 その「思い込み」の根拠を考えると、もやもやしてくる。形式としては綺麗に まとまったが、物理的な部分の理解がまだまだ不十分に思える。ノートができる 直前で体調不良におそわれダウン。

7/2(月)

昨日の白紙宣言が嘘のよう。(考え方における)大きな蟲をとると、格闘していた 粘弾性ずりのモデルケースでは、全てがSSTと矛盾なく収まった。ばねの非線形性 に関係なく、きちんとSSTがあって、第2法則、変分原理、SST統計力学の全て成立 している。詳細つりあいも復活する。あまりにできすぎているから、また間違って いるかも?

ううううむ。このモデルでは自明なことに思えてきた。ずり流動下での熱力学的 性質(=弾性など)が、分配関数からきまる、というのは少し面白いが、レオロジー の結果としてわくわくするものはないし。

慎重にノートをまとめて、次は、(非線形)ばねでつながれた粒子対が、たくさんずり 流に浮いている場合をやろう。このときのマクロ変数は、物理的直観でわかるもの ではないだろう。こういうときでも、Ψによって、平衡の場合と同じようにみえて そこからセミマクロスケールの動力学を書き下そう。そんなことができれば、SSTが 強いといってもいいだろう。他方、基礎論的には、格子気体モデルで境界の化学 ポテンシャル差で駆動される場合に、非平衡測度が書けたら強いな。。。

7/1(日)

37.1度というのは、千葉にきてからの最高温度では?(京都では94年8月上旬に 3日連続で39度を超えたと記憶しているが。) 娘の付添という名目で市民プールに いった。子供を見ている人もたくさんいるようだし、ひたすら泳ぐコース(1往復、 100メートル)に時々いかせてもらう。心地よい疲労感のもと夜も早々に寝たが、 深夜に目が醒めてごそごそする。

予定では、今日辺りに、粘弾性関連のノートが完成しているはずだったのだが、 白紙に近い状態くらいまでに押し戻されてしまった。しかし、よくあることだし、 こうなってからの粘りで逆転したことも何度かあるからあきらめないけど。

先月の日々研究