5/31(木)
朝、会議。昼、セミナー。院生との議論をはさんで、夕方、卒研案内。つかれ果て た後、朝にもらった 早川からの質問 に返事をおくる。(注:即答しなかったのは、単に時間が なかったからで、考え込んでいたわけではない。) 無用な混乱を避けるために、 ここでも答えを書いておこう。SST は定常状態熱力学というくらいだから、「定常 状態」を問題にしている。僕らの浸透圧という言葉は、ふたつの相の圧力(=壁 を垂直におす力)の差という意味でつかっている。(熱力学と同じ使い方。) むろん、定常状態での圧力差である。この値が0でない、というのが繰り返し 主張しているFIO であり、hydrodynamics では決しておこりえない効果である。 運動論の立場では、質量バランスの結果としてきまる圧力差のことである。温度 勾配による熱伝導側の圧力上昇は、浸透圧そのものではないが、第一近似的な 関係は容易にわかる。早川さんの解析は、断片的な情報しかないから、やって いることが完全にはわからないけど、すくなくとも、熱伝導による状態方程式の 変更効果がはいっていないようだけどなぁ。
5/30(水)
PRLから適当にdown-loadした論文をぱらぱらみる。(だいたい、5月中旬のもの。)
結晶成長のパタン選択について、マクロな機構があるのでなく、ミクロなイホウ性 が選択する、ということに関する最終version と称して、Kessler-Levine のコン ビが書いている。(15年前の理論で、参考文献のほとんどは80年代。) 彼らの 理論は、驚きも含んでいるし、いいと思うけど、もう少し普遍的な捉え方もあるん でないかな。M1 か M2 の頃、関連する論文を机に積んで、何かできそうに思った んだけど、できなかった。忘れた。
泡の実験がいくつかある。そこそこ面白いが、僕の視点で切ると....すぐにいい アイデアが浮かぶわけがないので、積んでおく。奥薗君が学生のときに川崎さんと 数値シミュレーションでやっていたテーマとも関係する。広島での会話を思い 出しながら、レオロジーなんとかせねばな。
"E_10 and B E_10 and Arithmetical Chaos in superstring cosmology" という 論文、、、冗談かと思った。引用されているArithmetical chaos のreview はあとで みておこう。M1 の頃、アーノルド猫写像の周期軌道を全て列挙するっていう論文 があって、初等数論に毛の生えた程度(=素イデアル分解がどうしたとか..)を使うの が目新しかったし、最後まで読んだ気もする。その論文のタイトルも Arithmetical chaosとかではなかったかな? 忘れた。あ、そうか、Wolfram の CAのルール90の周期軌道の分類(= たしか、Wolfram自身がやってた)も同じよ うなものだったかな。忘れた。
粉粒体の臨界現象:ううううううむ。相手にして詳細に考えるべきかどうか、critical.
構造ガラスの有限次元モデルのFDTの破れに関するコメントとreply。ふむ、ふむ、 なるほど。「おぉぉい、みきちゃん。論文はどうなった。」
5/29(火)
基研研究会 まで1週間をきった。昨年より、基研の事務運営方針がかなりかわったため、とま どうことも多かったが、事務量は相対的には減ったかもしれない。(書類は増えた が、無駄な労力は減った。) もちろん、世話人の皆さんが、かなりの部分の雑務を やってくれているのも大きい。今日は、その詰めの仕事などをちらほらする。
前に、基研研究会の世話人代表をやったのは、1992年の5/25ー5/27 だった。そのときの手帳をみると、6日前は、懇親会の参加者名簿を作ったり、 座長の割り振りをやっている。今回、懇親会は水口にまかせているし、座長の割 り振りは当日だな。
5/28(月)
仕事能率が悪く、ヤケクソで2時まで格闘。(* 研究ではない。)
5/27(日)
〆切が近い書類の原案でもつくっておこうと思ったが、まったくはかどらなかったの で、ぼけっと太田さんの質問を考える。太田さんの質問とは、「もし定常状態がSST 自由エネルギー最小原理で特徴づけられるなら、定常状態での揺らぎの力学(や緩和動 力学)にポテンシャルがあることになるのか?」 というものである。まず、勝手な 変数に対しては、間違いなく NO である。理由は、詳細つりあいが破れていている から、と即答できる。(ちなみに、(昨日の日記で触れた)不可逆循環理論では、詳細 つりあいの破れの程度を揺らぎの循環によって定量化し、それと応答の非対称性(=相 反性の破れの部分)との関係を明らかにする。)
だから、揺らぎの時間発展に対しては、ポテンシャルはない、、、と言ってもよさそ うだが、そう即答していいのか? SSTをつくるときには、変数のとりかたに細心の注 意を払う。その結果として、「SST変数の揺らぎの動力学は、ポテンシャル系になる」 ということもありえるのでないか。状態に関する変分原理とのバランスでは、この方が すっきりする。もし、これが正しいなら、定常状態への緩和や応答については、極め て使いやすい理論になる。逆に、もしこれが実現していないなら、ノンポテンシャル パートの表現を明らかにしないといけない。
考えるヒントはいくつかあるが、まだ暗闇に近い。
そもそも、「非平衡定常状態がSST自由エネルギー最小原理で特徴づけられる」という ことが、奇跡的なことに思えてきて、何か急に不安になってきた。 。。(* 1月下旬 / 3月下旬と奇数月の終りに不安になったから、5月の下旬に不 安になるのは、予想されたこと? 過去2回の不安は、正しく解消されてきたが。)
5/26(土)
5/24、25の広島滞在は、非常に有意義だった。第一に、SSTの位置付けに関し て、僕が即答できない重要な問いを太田さんに指摘されたこと。十分に考えてい たつもりでも、まだ尽くしていなかった。(言い訳をすれば、1年くらい前には その問題を認識していた。しかし、問題点の多さに、この半年は頭から消えて いた。)第2に、レオロジー系の諸々を太田さんと奥園君に教えてもらったこと。 SSTのひとつの応用として、レオロジー系の膨大な経験則(のいくつか)を系統的 に記述することを考えて いる。そのためには、レオロジー系について知らないといけないのだが、そういう のは勉強してもすぐにわかるものではない。まずは、単純なレオロジー系で答えが 簡単でなさそうものについて、明確な問題設定をして、SSTを武器にして攻撃しよう。 第3に、高分子実験の戸田さんに実験との関連での貴重なコメントを頂いたこと。 熱伝導状態での固液界面は、実験的にしばしば見ていて、すくなくとも大きくずれ ているようなものではない。(明示的に測ったことはないが。) また、実験的に もっと測りやすいのは、例えば、、という具体的なコメントだった。(それを理論 的に追求しようとすると、太田さんの指摘された問いを真面目に考えないといけない。)
70年代前半、富田研は、非平衡定常状態を特徴づけようとする「不可逆循環理論」 (ICT)を推進しており、太田さんは修士学生のとき、ICTとオンサーガー理論の関係 などの論文も書いている。太田さんのSSTへの反応の早さと理解の深さは、そのことと 無関係ではないだろう。太田さんは、その後、博士過程で川崎さんについていって、 相分離動力学などの研究にはいり、富田研も、津田-富田のBZ map などでカオスが 主要研究テーマになった。ICTは、独自の面白さはあるものの、大きな影響力はない 枠組として、静かに表舞台からひくことになった。
5/23(水)
広島でのセミナー発表の準備を終日する。途中、考え込んでしまったせいで、 夜中の1:30までかかってしまった。午前中全部をつかって、熱素/反熱素 揺らぎの説明を考えるのに費してしまったのが、時間配分としてまずかった。
僕にとって、タイミングのいいセミナー準備になった。flux-induced osmosis (FIO) からはいって、SST形式の説明と予言をし、その理論の妥当性を考えるヒントとして、 Hatano-Sasaをもってきて、その後で、FIOにもどり、FIOに必要なSSTの基盤をミクロ から考え、SST-統計力学を仮定として導入し、具体計算の結果だけをみせる。 新幹線の中で考えるべき点もいくつか明示的にわかった。
5/22(火)
疲れがピークに達しているようだ。今週は、会議がひとつもはいっておらず、熱力の 講義も5月祭で休講になったので、珍しく余裕がある週のはずだった。なのに、講義 の休講通知を受け取ったその日に、太田さんから広島にくるようにいわれた。それ で、今週の木/金は広島にいくことになった。 今日は、広島でのセミナー発表の下 書きをして、明るいうちに大学を離れる。早く寝よう。
SSTの現象論の範囲なら、Jouの膨大な研究は一応しらべとかないといけない。PRL論 文をみて応答したと思われる Jou から〒がおくられてきた。(ちなみに、彼らなら、 flux-induced osmosis に到達していても、おかしくはない。) また、別件で、大信 田君から、希薄気体力学の諸現象とSSTの関連との問い合わせもあった。非平衡熱力 学がらみとの関連は、ひととうりチェックしたつもりだが、そういう熱と流体がミク ロレベル(=平均自由行程レベル)で関わる話の現象論的領域はまだみつくしてない。
5/21(月)
午後、学習院大学を訪問し、田崎さんとSSTの現状整理をする。囲碁でいうと、布石 をしている段階なので、局所的にこわだりすぎるとよくない、といいながらも、局所 的につっぱしって失敗することが多い。いくつかの問題が、全面解決しないまま宙に 浮いているけども、確実に前進はしている(とは思う)。
例えば、ミクロからみたときの変分原理をどう理解するのか、という問題はまだ宙に 浮いている。おそらく第2法則から変分原理にいくときの大事な点をまだ掴んでいな い。また、long-range correlation の存在とSSTとの絡みも不明なまま。あるいは、 SST-baseのhydrodynamicsの構成もpendingしたまま。この2週間あまり、 flux-induced osmosisを集中的にやって、臨界点での第一オーダーの定量的評価を おえたいま、確信に近く意識してきたのは「Ψを究めること」の重要性である。 これをどのレベルで消化するかによって、SSTの展望も位置付けも変わってくる。
5/20(日)
昨日のflux-induced osmosisの見積もりは、(疲れて)頭が過熱していたままやって いたので、今日きちんとやりなおす。臨界圧力 P, 臨界温度 T, (温度-臨界温度)/ 臨界温度 ε, 温度差 ΔT, 温度勾配方向の長さ L とするとき、観測される浸透圧 P_*は、
P_* / P = -(ΔT/T)^2 * (d/L)^2 * ε^{-γ}
と書ける。臨界指数γは 定圧熱容量の発散の指数で 1.21 と測定されている。 d は長さの次元をもった物理量で、例えば Xe の場合、10 Åのオーダーである。 (粘性係数の弱い発散は、考慮に入れていない。)
臨界点で発散するといっても、系の大きさ L が cm オーダーなら、まずみえない だろう。実験で観測するには、マイクロスケールの装置を組まないといけないが、 今の技術をもってすれば、その気になれば、検出できると思う。マクロ装置でやる なら、He 使って低温でやるとか、マクロ分子を使ってやるとか、という手があるかも。
浸透圧の正しい次元解析的評価も書き下したが、そこから浸透圧が生じる機構の筋 書きを抽出できていない。この筋書きが分かると、Ψの物理的な意味がよりはっき りしてくると思うのだが、もうちょいだな。
5/19(土)
Ψの臨界点近傍での正しい次元解析的評価は、(線形非平衡領域で)、
Ψ \sim 温度差 /温度 * 密度相関長 * 速度相関長/動粘性係数
であった。Xeの実験データを使って、flux-induced osmosisを検出できるか どうかを見積もってみる。(速度相関長はÅと仮定する。) うまーく実験 すれば、なんとか見えるかな、というところだと思う。(実験の知識がな いので、強い実感はないのだが。) この次元解析は、臨界点から離れても こんなもんじゃないのかな。。早川の希薄側からの展開がまとまったら比 べたいな。
だから、通常の流体の通常の状態でΨ(あるいは、浸透圧)を実測するのは困難 だと思う。線形非平衡領域を越えると、密度相関も速度相関も長距離秩序が強 くなってくることが知られているので、状況が一変する可能性はある。(逆に、 この長距離相関の存在のせいで、SSTという枠組がない、という可能性すらでて くるのだが、、。)
5/18(金)
計算する時間もノートをまとめる時間もないので、考え方の整理をする。(Jを 固定したままの)臨界点でΨは発散せず、速度の相関距離に比例する、と考える べきか...。そいつは平均自由行程や分子の大きさくらいのミクロパラメータ なんだろうな。ううむ。。。ってことは、定量的な予言が難しくなったかな。 SSTだけでなく、対応する統計力学の検証にもつながるはずだったのに。このま まそうなったら悔しい。
気をとりなおして、具体的な物質のデータを臨界点近傍の第一近似で得られた式に 代入して、ミクロパラメーターがどれくらいなら実測可能なものか、みてやろう。 動的臨界現象の生データは、、、おお、Swinney, 1973 か。昨年、還暦だったが、 若いときから、シャープで系統的なデータをとっている。週末に、計算のまとめの ノートを書いて、実験データからの整理をやろう。
早川が、希薄ガス領域での運動論で、SSTが予言するflux-induced osmosisを検 証しようとしている。温度差に比例する項は予言どうり消えたようだ。Ψの具体的 な顔を早くみたいな。
SSTの予言するものが、他の理論から検証できるなら、SSTなんていらない? そんな ことはない。長い演説をしたいところだが、臨界点でΨが使えるかどうかがはっき りしないと落ち着かないので、また、元気なときにでも。
5/16(水)
昨日のプランに従って計算実行。波数空間での積分は、久しぶりなので、ゆっく りやる。前提にした物理的な仮定にしたがって、閉じた式を書いて、有次元量を 前にだして、あとは積分して数字をだしておしまい、、、のはずが、積分が発散 するがな。 仕方ないので、発散する波数空間の積分に紫の cut-off k_cをいれ て、計算をすすめると、Ψが1/k_c に比例し、相関長依存性は消失してしまった。
(臨界揺らぎだけをとりこんでいる、という)計算の前提となっている物理的な条件 と一貫させるには、そのcut-offは(相関長)^{-1}くらいでないとおかしい。それを採用 すると、Ψ \sim \xi になるが、説得力は今いちだし、比例係数の数因子は不定 になる。もちろん、そのcut-offがもっとミクロなものと関わっている可能性だって ある。そうなると、今度は、前提条件と一貫してこないから、理論として成立しない。
うううむ。分かんなくなった。頭を冷やして考えないといけない。SSTの明確な 予言として、圧力差として測れる非平衡秩序度Ψという新しい物理量があるのは 間違いないが、定量的なところまでいかないと落ち着かないしな。
こぶ切断の後始末の通院最後の日。長かった。
5/15(火)
5/9(水)にΨの次元解析的な評価をやって、5/12(土)に(SSTの)統計力学的な 形式化をやって、それぞれΨ/Jが相関長に比例することを予想した。今日、平均場 近似のもとで、その比例係数の求め方がやっとわかった (仕上げは明日)。比例係数が どういう物性量や状態量で書けるか、というのは、「Ψの物理」を知る上でも大事 になるし、実験との定量的な対応も深くなる。計算は単純だが、考え方を混乱して しまった。「相関長に比例する」という主張が間違っているのか、、、とさえ思い はじめていた。
悩んだおかげで、動的臨界現象にも少し馴染んできたかな。
5/14(月)
非平衡定常状態での揺らぎについて、適当に論文をひろって読む。 臨界であろうと なかろうと、一般に、長距離の空間相関が生じる。ほう、いいね。して、その仕掛 けは、、。む、もうひとつ面白くないな。というか、想像と違うぞ。そうだとする と、土曜日のノートはおかしくないか?
およそ40日ぶりに、お風呂にどぼん。
5/13(日)
heat-flux induced osmosis : SSTを認めたときの予言よし。対応する統計力学を 仮定して、Ψを0-thオーダー的に評価した予言よし。次は、分子レベルの描像 とこれらの関係をvividにとらえたい。予言のレベルでは、一応の区切りがつい た(と思っている)が、これがないと次への発展がない(ように思える)。要するに、 5/9(水)の日記に書いた素朴なイメージを、昨日まとめた(形式的な)計算とつ なげればよい。
千葉動物公園で新緑鮮やかな木々に囲まれて、熱素/反熱素対の揺らぎの様子を 頭の中でぼーと想像していると、ある論文のintroduction のフレーズにかわった。 そうか! あれは、そういう話では? その論文はコピーしていないので、月曜日 に探して調べて見よう。(昨日のノートも、(たいした量ではないが)計算の部分は 全て千葉公園でやったので、2日連続で外出先での成果。)
5/12(土)
5/9(水)のノートの改訂版作成。SSTは熱力学の自然な拡張なのだから、平衡統計 力学の自然な拡張を仮定して、Ψのミクロ的な表現を得ようとする。「形式的な拡張」 なので、何も考えずに、一息でノートを書き上げて、田崎さんにおくる。見掛け上の 説得力は比較にならないくらいあがったと「書き終った今は」思うが、他人の目や 時間の経過を通さないと、わからんもんだ。ちなみに、最終結果は、5/9(水)の ノートと同じ。偏見と直感だけで悩みながら書いた論理性0のノートと仮定をはっき りさせた後は何も考えずにごりごり書いたノートの結論が同じとは面白い。
こぶ切断の後始末:今日で最後かと思ったら、2日延期とのこと。ううむ。
5/11(金)
heat-flux induced osmosis という名前は、thermal osmosisと対比する ために、考えなしでつけたけど、たしかに長すぎだな。黒木掲示版で牧野さんが 引用しているし、真面目に考えないと定着してしまうな。いい名前ないかな?
5/10(木)
heat-flux induced osmosis :今日の予言。
適当な流体でその実験をやって、圧力差の測定からΨを実験的にきめる。一方、 (エネルギー)密度揺らぎの空間相関を測定するという(いかにも物性的な)実験を やってその相関長 d を評価する。このとき、Ψ/J は dに比例する。
比例係数はもちろん条件によりまちまちだから、しょうもない結果と思うなかれ。 第一に、通常の流体で密度揺らぎ相関長なんてミクロなものだから、圧力差として 測るのは極めて困難というのがまずわかる。そして、同時に、臨界点では、d は発 散するから、現象を検出できるだけでなく、その発散の仕方から理論の妥当性まで わかる。だから、この予言は重要だ。(本当ならね。)
勿論、臨界点での発散の仕方は、平均場的な評価なので、厳密にはずれる。動的くり こみ群の結果とラフな考察を合体させると、そのずれかたは、熱伝導率のずれかた とも違う。(粘性係数の'弱い発散'の依存性との絡みかたが違うから。)
5/9(水)
heat-flux induced osmosis: 田崎さんの日記(5/9) のΨの表現に関するノート をかいて田崎さんにおくる。
僕も詳しく書いておこう。Ψは非平衡秩序変数というべき量で、熱流の存在によって 生じる「秩序」に相当する。(だから、熱伝導側の'エントロピー減少'を補償するため に、平衡側から粒子が流れ込んできて、圧力差が生じる、という風に理解している。) この秩序を視覚的にイメージするには、熱素と反熱素が断熱棒でつながっているよう な揺らぎを考えればわかりやすいと思う。平衡状態では、そんな揺らぎはキャンセル して消えるけど、温度差をかけたら、熱素は低温に、反熱素は高温に向かうので、温 度勾配の方向に揃った秩序がでる。わっかりやすい! (以上が、5/4の徳島行の 飛行機で頭にえがいたイメージ。)
といっても、イメージだけでは、検証しようがないので、Ψのもうちょと具体的 な数式表現をつくろうとしている。通常の流体では0かなと思ったり、有限にな ったり、まだうろうろ。昨日、夜更しして考えた結果によると、「(小さいかも しれないが)一般には有限」で、今日のノートはその線に沿っている。しかし、 「通常流体では0に近い」というイメージが消えないので、あっても非常に小さい ものだろう。そして、臨界点に近付くとその効果が特異的に大きくなるのは多分 ただしいので、観測にひっかかる、ってあたりが今の予想。(お。もうちょっと 議論できるかな。今、きがついた。寝るまでに、もう一発考えよう。)
もちろん、いずれにせよ、今の時点で論理的な説明があるはずがないので、へ理屈 に近い推論の段階。しかし、この推論の途中で、変分原理やら第2法則との関係や ら宿題にしてきたのが、むくむく顔をだす。ただし、この答えが、(数値)実験で検 証できれば、未知の統計力学への一歩になる。こういうのが楽しい。
5/8(火)
推薦書ひとつ完成。あとふたつ推敲中。時間かけているわりに、ワープロミスが (複数)あったようだ。すまん。
会議の間に、動的臨界現象の勉強をする。formalでない部分を知りたいので、 「MCTの心」に触れるあたりがよかろうと、美希ちゃんに川崎さんの本を借りて、 読んでみる。なるほど、MCTの第0段階の設定が味噌だな。臨界点近くで、heat flux induced osmosisの効果がどれくらいになるのか、MCT的に評価してみよう、 という気になった。数時間でできるはず。(たしかにいい本だ。買おう。)
5/7(月)
推薦書を書いたり、研究会の事務をしたり。パワー不足で、苦闘していたら、 大学時代の友人 から電話がかかってきた。暇らしい。そういうところもまだあるのか。いいなぁ。
heat flux induced osmosis: 定量的な評価を少しつっこんで考える。まず、「通常 の流体なら、この効果は熱力学極限ではみえない」、との予想は正しいように思える。 (ノートをまとめないと。) 次に、どういう場合に有限になるのか?...これは、まだ イメージの段階だが、いかにもありそうだけど本当かいな、というような奇妙な想 像を膨らませる。
5/6(日)
田崎さんの実験設定でみえる現象は、'heat flux induced osmosis'というべきもの。 言葉だけみると、(1873年に定量的に実験された)'thermal osmosis'と類似している が、全く違うもの。後者は、オンサーガーを経て、現存の非平衡統計につながった典 型的な実験。前者は、どのように発展するだろうか。現象の目新しさを越えて重要な 実験になる、っていう予感はかわらず。具体的な検証方法や理論的な位置付けなどを あれこれ考える。ガーゼ交換にいったり、3通の推薦書案を書いたりしながらなので、 机に向かってまとめる時間はないが、まぁ、今は、それでもいい。
5/5(土)
昨日、徳島にむかう直前の田崎さんのmailで、5/3(木)にふん切りをつけたうちの ひとつの「熱伝導SSTの物理的なイメージ」が、大惚けだったことを認識したので、旅 行中、論文をよまずに、ひたすら熱伝導を考えることになった。品川あたりで大惚け の実体が明確になり、徳島行の飛行機にのりこむころに、漠然としたイメージができ はじめた。その後、色々な関連事項を考えて、やっと熱伝導SSTの(さらに、SST自体 の)物理的なイメージがはっきりしてきたような気がしてきた。(その間、すべて頭の 中だけ。) 今度は大丈夫だろう。。。と、千葉に帰ってきて、即、田崎さん にmailをおくる。(まだ、技術的な問題で少し悩んでいるのもあるが、そっちは小さ い問題。)
田崎さんが考えた実験設定は、ずり系の話をそのまま熱伝導に焼き直した練習問題み たいなもので、僕は、当初軽く考えていた。(既存の理論との整合性を検討できるから いいかな。。くらい。) が、現象として新しいものを提案する、というだけでなく、 本格的な科学として、重要な段階にはいることになるかもしれない、と思い始めた。 (ただし、現象そのものは、工学関係でどこかにあるかも。。。)
考えたいことが、頭に溢れはじめてきた。こうなってくると面白い。これからの 1、2週間でどれくらい溢れるかが、この波の大きさをきめる。僕の今まで最大 の波は、98年2月7日からの2週間。このときの波をこえれるほど大きいもの になるのか、あるいは、期待ほど波はうねらずに、小さいままで終るのか。。。
5/4(金)
喫茶店で朝食をとりながら昨日の論旨を整理すると、やはりおかしい。昨日の深夜 に田崎さんから送られたノートをみても、やはりおかしい。(僕が、基本的なところ で誤解している、っていう可能性はあるけど。)
熱伝導SSTは難しいな、と妙に落ち着いて、田崎さんに「おかしい」というmailを 送る。あれ、でもなんでずり系はいいように思ったんだ? ずり系SSTの場合、strain rateの扱いをどう位置付けるか、ってのは、GW宿題の整理ノートのひとつの論点の はずで、、、同じ問題がおこらないのか?
色々な問題が錯綜したまま、整理もままならないまま、時間が過ぎていくなぁ。 明日は法事なので、夕方の飛行機で徳島にとびたつ。
5/3(木)
Confusion will be my epitaph..... ♪
というフレーズがふと頭に浮かんだので、BGMにつかってみた。ますます混迷してきた ので、
Ich schlief, ich schlief-, aus tiefem Traum bin ich erwacht:- Die Welt ist tief,...♪
にかえる。が、眠ったままで世界の深さに到達しそうにないので、
長い長いこの時間で一人道標さがしている.... まだ知らない未来に出会えるように...♪
にかえてみる。(全部わかった人はmailでもちょうだい。) おかしいなぁ。 田崎さんの後をおっかけて、ある設定での熱伝導問題にSSTを適用してみて、 その結果とSSTでない素朴な考察と比べたりしたりしているが、どうもおかしい。
CD何枚か後:よし、熱伝導ひとくぎり。SSTならではの予言を他のアプローチで検 証するのはやめ。実験まち。ただし、平衡の近くに限定して、熱流の共役変数が 体積*(物性の組合せ)としてかける、という結果はちょっと面白い。(本当だったらね。)
5/2(水)
4年生のセミナー(Von Mieses..):レポーターの準備の深さに依存するので、思う ようには進んでいない。たしかに楽ではない題材だが、メンバーからみても、な んとかなるだろうから、期待していよう。まだ序の序だが、5月中には、背景を 理解し、序論を終りたい。(僕自身も。) そのためには、Li-Vitanyiの1、2章を 全部読んでexerciseを全部解くこと、、と言いたいが、僕にもできそうもないし、 何かいいtextはないか、と探していたら、例のGacsのweb pageにあったLecture noteが簡潔でよさそうなので、これを宿題にした。
僕自身、randomnessの話は素人。Kolmogorov complexityも、Li-Vitanyiを摘みぐい 程度にあちこち読んだ痕跡はあるが、体系的にみに付けていないし、血肉となって いる状態にはほど遠い。しかぁし、無謀にも、冬学期に「エントロピー概論」と称 する大学院講義で、色々なエントロピーを徹底的に議論する..という題目を出して しまっている。熱力学はいい。統計力学はまぁいい。力学系はまぁまぁいい。 情報論は何とかなるかな。 Algorithmicな方は...大丈夫か? という状態。理想的には、これらの関係まで踏 み込みたいのだが、そのためには、まず、各論を押えないといけない。
Randomness、確率、情報、力学系、統計力学、熱力学の関係を議論すること自体は 珍しい ことではない。例えば、同じくGacsのweb pageにある 'The Boltzmann entropy and randomness tests' もその例。だけど、僕はどうも議論の展開の仕方が気に入らな いない。代わりのものをつくれるか、っていうとまだ無理だけど。僕が、ハミルト ンカオスでKSエントロピー(に関係した量)と熱力学エントロピーの定量的関係を数 値実験で議論した背景のひとつには、Randomnessから熱力学に至るラインを何とか したい、という動機もあった。形式的レベルを越えて、真に新しい理解に向かう可 能性をもつという点では、僕等の研究が一番いいとこにいるんでないか、と思 うこともある。(speculationがspeculationのまま終ったら意味ないから、そっちの 方向ももうちっとエンジンかけないとな。)
5/1(火)
東京から離れていうる間(5/4、5)に読む論文を複写。 が、JSPは1月までしか 図書にきていないので、Gacsの論文は複写できず。electricに download できない か、と思ったがよくわからない。あとは、細胞記憶やら結晶成長やら粉体やら量子 ホール効果やら。
と書いた瞬間に、片岡からmailがとんできて、Gacsのhome pageにあるとの情報が。 ここ です。 他にも面白そうな論文があるので、いくつかdownloadした。(Zurek - Bennet - Li - Vitanyiと連名の論文もあるな。実は、今朝、別の用事でLi-Vitanyiを久しぶりに 本だなからおろしたところだった。) Grayのreader's guideもあるのだが、それは、ps fileとプリンターの相性が悪い のか打ち出してくれない。仕方ないので、Gacsの本論文の方をうちだして読むこと にしよう。