日々の研究

来月の日々研究

4/30(月)

田崎さんが日記で紹介しているGacsの論文は面白そうだ。明日見てみよう。1次元 か。UTMは1次元でcodeができるけれども、それよりずっと難しい話だもんな。いい 加減なレベルでは、わかってもよさそうな気もするので、ちょっとシナリオを考えて みるも、ううむ。。

SST変分原理の整理ノート。冗長にだらだら書いているので、GW中に終るかどうか 微妙になってきた。ずり流の速度profileを決めるような変分原理は、'formal'には あるように思うが、その変分関数がSSTの枠組と遊離していては、使いものになら ない。(= formal nonsence という。非平衡熱力学の定番) そこで、(formalに期待 される)変分関数とSSTの枠組の関係を考えていて、ノートがとまったので、連休前 半の区切りとして、このノートとは別の「pathologyに関する意見」の簡単なまとめ を田崎さんにおくる。

4/29(日)

お? いいかもしれない。単純系の範囲でも、制御変数を力学変数にすると、当然、 測度は変わる。ふたつの系をくっつけるときは、その測度のかけ算だと考えるのが 自然だろう。平衡の場合、途中を全部とばしても同じ結果だが、非平衡の場合は、 このように複合系の測度を考えないといけないのだと思う。多分。玩具ではいいように 見えるし、他の期待との相性もいいかな。明日、ゆっくりと検討。

4/28(土)

昨年のGWは、1日を除いて、毎日、ほとんど全ての時間を計算機実験の試行錯誤に 費していたんだっけ。 精神的にも相当追い詰められた/追い込んだ状態になった。 (日記を書いていなかっので、もう忘れかけているが。)

今年は、SSTのもやもやを整理し、これからすべきことをはっきりさせる、という ことに費すことにしている。紙の裏に書いた「ちょっとした考えや計算」は何十枚 (=そのほとんどは自明なことや無意味なこと)もたまっているし、もやもやを頭で 支え続ける時間的な限界もきている。整理して100 % クリアーになるとは思えない けど、何が自明なことで、何をこれから考えるのか、というふん切りがいる。

昨年の試行錯誤は、結局、GW中には解決しなかった。アイデアも次々と変化させて いくが、同時に計算間違いもしょっちゅう発生するので、計算bugなのかアイデアの 間違いなのか、その見極めの戦いに消耗していた。しかし、GW終了後、急速にみえ てきて、論文につながり、さらにはそれが、SST第2法則の論文につながった。(あ とから見れば、SST第2法則は、独立に議論できるものだし、ハミルトン系の話より 簡単だけど、個人史的には、ハミルトン系の話が具体的にみえたからこそ、わかった 話。)

今年も、GW中消耗する日々が続くかもしれないが、GW終了後、急速にみえてきたら いいな。GW序盤なので、まだ精神的にも余裕があって、期待感の表明と。

4/27(金)

熱力学講義:第一法則。講義を止めて、「わからん」と食ってかかってくれる学生 がいるので助かる。(ちなみに、彼は、針金ぐりぐりの実験で火傷をしたらしい。) その学生とは、講義後の延長戦で、納得してもらう。曰く、「高校のときの仕事は、 過程に依存しないものばかりでしたから。」 たしかに、そのあたりの相違をもっと 明示的に例としてだすべきだったかもしれない。(準静的仕事などは次回。)

明日(今晩?)から、SSTのひと区切りにむけてのノートの作成だ。

4/25(水)

水曜日は、原則的に、研究日として確保したいのだが、今週はだめ。population dynamics + evolution のセミナーにでるのがやっと。阿部さんのTsallis統計の セミナーにもでたかったが、これは会議とぶつかって、でれなかった。(きちんと 話しを聞いて、意義づけを自分でしっかりとしたかった。外にでかけていって聞く 気はしないけど、近くでやるなら、是非でたかったのに。)

熱力学講義の受講者(1年生)から、「ファンデルワールス状態方程式の概略図に 苦戦!」というmailがくる。たしかに面倒そうだな。僕はやる気がしないので、自 分でチェックせずに、レポート課題にしている。グラフ概形の変化の完璧解答をつ くるのも大事だが、まぁ、そこはそこそこにしても、「あれ?何か変でないか?」と 自分で問題をふくらまて、解答をだしてくれると嬉しい。(昨年、そういうのも何通 かあって、中には「よくある話し」以外のことに言及しているのもあった。こうい うのは楽しい。)

こぶの切開口からの出血も膿の排出も持続しているので、夜更しとアルコールが禁止。 (ガーゼ交換と消毒は、まだまだ、毎日続けないといけないらしい。) 研究の進展は 0だし、辛い日々だな。

4/23(月)

稲垣さんの研究の話:昨年、12月の続き。粉の動力学をやっている人が近くにきた のだから、理論のひとつやふたつ....のための、頭の準備体操。DEMが履歴依存性を再 現できるのかどうか;もしYESならその機構は何か、という素朴な問いに答えれるはず だと思う。無論、すぐにはわからんが、6月の研究会までに、問題の焦点をあてれる くらいにしたいが。。

先週日曜日に計算して、火曜日に間違いが発覚して放置してあったものと本質的に 同じ計算について、田崎さんから「そこのところは見届けて?」とのmailがきて しまい、「いや、そいつは放置したまんま」との答えをおくる。その計算は、「根 性」をいれれば、数時間で計算ができるはずだが、その面倒な計算をやる前に全体 のストーリーを抑えた方がよかろうと。。。

といっても、今日は、書類をたくさん仕上げるなど、充実した一日だったので、 SSTについては進歩なし。寝ながらちょっとやろう。

4/22(日)

SST:着地点(=次の出発点)を模索する。第2法則と変分原理の関係はまだ宙ぶらりん のまま。(うまくいかない例題はあるのだが。) 一方、平衡と非平衡の合体のさせ方の 気分はわかってきた。流体極限をとらずに、ミクロとマクロな微妙な比が、理論に はいってくると考えるべきで、もし、想像しているのが正しいとすると、速度profile 決定の(ある種の)変分原理を含む理論になっているはず。勿論、まだ想像に過ぎない し、第2法則との関係が浮いたままだから、気持はすっきりしないが、GW終るまでに は、シナリオを整理したノートをまとめて、同時に、このシナリオを検証する具体的 な方法を考えたい。推測して、証拠を集める、というのが僕の研究スタイルだし。 (でも、まだ「わくわく」はこないから、推測の確信度は低い。)

交付申請書原案作成。何か締め切りが年々早くなってないか?

4/21(土)

昨夜、今までの計算で不毛なものをゴミ箱へ。残ったものだけをならべてみると、 ふむふむ。ふむ?

1分のガーゼ交換に2時間を要するとは、なんとかならんかな。(いい病院だとは 思うし、そのために患者も多いのだろうけど。) 待っているあいだ、頭の中で昨夜の 続きをやろうとするが、隣のおばさんたちの大きな声の雑談に敗北す。

講演トラペ原案作成。まじめに推敲するつもりなら、たしかにtex化した方がいいな。 手書きから乗り換えるか。(そのうちに、power point とかになるのかな。)

4/20(金)

熱力学講義:いかんな、疲れていたので早口モードになってしまったかもしれない。 「針金をぐりぐりする」例題を、科学としてきちんと表現するための、道具だてな ど。細かいことは本にあるので、おおまかなことだけ。

講義の後に、(レポート課題として出した)針金をぐりぐりして温度があがるミクロ な機構について、数人の学生と雑談。本を見て完全な答えを書くのでなく、既存の 知識を使って、機構をあれこれ推測するのも楽しいでしょう。。。と。先週のレポ ート課題としてだした、ゴムを題材にした実験結果も提出されたが、なかなかに面 白い。

田崎さんや僕の本の断熱過程や等温過程の記号法は、(まだ)local rule である。 だから、講義では、「この記号は、この講義の外で使っても理解されない可能性が ある。」と付け加えている。(*ただし、僕の定期試験でも、その記号法を知らないと 解けない問題は出さないが。) 学生から、「じゃぁ、普通は、どういう記号をつかって いるのですか?」という質問がでた。「断熱と等温の区別は、文脈で判断しないと いけないし、そもそも、過程の記号もない。」というのが答えだが、あらためて「過 程の記号」なしで、熱力学を展開するってのは、とんでもなく苦しいのでないか、と 思う。

4/19(木)

夕ご飯を食べて、早々とホテルに。おおお。う? むむむ。う?を繰り返す。 色々と試行錯誤の計算をしていて、経験値は確実にアップしているが、クリ アーなところにいかなくて、ストレスも溜ってきたが、なんかいい気配を感 じる。なんとか週末に突破するぞ。

4/18(水)

通常の熱力学では、「変位の拘束」に関係した変分原理がある。ミクロ的には、 「完全に拘束された変位」から「完全に自由な変位」までを、1パラメータで 書くことができて、その時間変化と第2法則を組み合わせて、変分原理をえる。 SSTでは、「速度の拘束」に関係した変分原理があるのを期待したいのだけど、 パラドクスがある。そこで、ミクロ的に考えようとしているのだが、「完全に 拘束された速度」から「完全に自由な速度」までを、1パラメータで書くこと ができない、、というのが最近の悩み。昨日の玩具でも、速度の拘束とその除 去は、表現できているが、両者がスムーズにつなげていない。なんでや?

こぶの切断:化膿が酷かったらしく、根本からの切断は諦めたもよう。切った のだから、化膿は治るだろうし、まぁいいか。何本も打った麻酔が切れたら痛 いのかなぁ。(局部麻酔って、時間がたつと、体をまわるのか? 眠い...眠い。)

4/17(火)

日曜日、夜更ししてやった計算は、かなり最初でこけていた。さっさと寝れば よかったということか。

SST変分原理のための玩具で、速度拘束をはずして、速度を一意に決定する式は、可 解条件とも解釈できる。(無理にそう解釈する必要もないが。) これは、いたるとこ ろで遭遇するパタン。(例えば、ソリトン系+摂動で、未摂動解で色々な速度をもっ たソリトン解のうち摂動を加えることによってある速度をもったソリトン解が一個 選ばれるなどが典型。) ほう。条件反射的に、「動的縮約で可解条件からきまる発 展方程式は、イリノイRGでは、くりこみ群方程式として得られる。」ということを 思い出した。関係ないのかな? .....ええと。楽しい夢をみながら寝よう。

4/16(月)

研究会のプログラム: 僕が先走りすぎたところもあって、一部に混乱を招いて しまった。e-mailだとニュアンスが伝わらないので、電話で直接話しをする。 しかし、実際の運営は、相当に難しい。

予算も極めて面倒。基研共同利用事務に電話をかけて、「help!」 担当の方が、 優しい方でよかった。

背中のこぶ切断後のcareを駒場の保健センターでやってもらえるか相談。毎日、千葉の 病院にいくのは、時間的に不可能だから。駒場の保健センターの人は、直接お会いし ても、電話ででも、優しい人ばかりだなぁ。

先学期の試験結果報告にミスがあったらしい。修正せねば。

矢熊君の研究の話しをじっくり聞く。パタンと非平衡性の絡みってのは、昔の 僕と今の僕の絡みっていうところでもあるので、これからの展開を楽しみにしたい。

夢の中では、SST変分原理はできたんだけどな。起きたら消えた。論文のrevise2件 は、4月中にと予定していたが、絶望的になりつつある。書いている途中の論文 /原稿って、今いくつあるんだ? 全部とまっているぞ。

4/15(日)

4成分線形Langevin+定ベクトル力の定常分布なんて、ちょちょいのちょいの はずが、、あれ? 初等計算のはず..だよな。SST変分原理の謎解明へ.....こんな ところで、こけてはいけない。夜更しして、バグをとって、定常分布をもとめて みるも...???あれ? モデルがわるいのか?勘違いしているのか? 計算は夜更し すればできるが、肝心なものは時間かけてもだめか。

4/14(土)

6月の研究会のプログラム原案を作成する。48件の一般講演の申し込みがあったの は、世話人としては嬉しい限りである。(参加人数は、100人弱くらいと予想。) しかし、プログラム作成は難しい。議論時間=講演時間/2. を基本ルールにして、議 論の時間をゆったりとりたい。多くの面白そうな研究が、講演バランス等の関係で、 ポスター発表にまわってもらっているので、ポスター発表の時間も十分欲しい。 おおおお。

構成を色々いじっていると、わけがわからなくなってきたので、頭を冷やすために も、とりあえずの ver 0.1 を無理矢理に完成させて、世話人グループにおくる。 (手元には、既に ver 0.2 ができてしまっているが、あせらず、世話人グループか らの意見をまとう。)

旅費予算のラフな評価をする。工夫が必要かもしれない。これは、基研の共同利用 事務と相談して、来週中に原案を完成しないといけない。

病院にいくと、「いけませんね。(背中のこぶ)切りましょう。」ビールが悪かった か、ワインが悪かったか、梅酒がわるかったか、、。来週、水曜日に決行。身体的 にもきつい週になるかな。。

4/13(金)

熱力学の講義:第1回「一般的導入」。物理学における熱力学の位置付けのふつうの 話のあと、「熱学」と「力学」の統一理論が熱力学だ、ということで、このふたつが 絡み合っているものを挙げよ、と学生に問う。活発に、ときに笑える答えを出してく れて、だいたいネタがでそろう。(例:針金をぐりぐりやって切るときに、あつくな る。) これらをみながら、共通部分をみぬこう、と問う。色々あって、笑いもあっ て、僕の意図した答え「熱くするのは簡単だけど、冷たくするのは大変だ」に到達。 そこから、「○○することができない」ことを表現すること...といういつものやつ に話をひっぱって、熱力学が、単なる基礎科目という以上に、科学として重要である ことを主張。「○○することができない」というのは他にどんなのがあるのか?と問 う。今日の講義のクライマックスあたりだな。最初の方にでた答えが、

「(好きな)女を自分のものにすることができません」

素晴らしい。しかし、「自分のものにする」というのを「彼女にする」というこ とだとするとだな、君はできないかもしれないが、僕はできた。科学というのは、 ○○の条件のもとでは、○○がいつもおこる、ということが大事で.... 科学の 意義に脱線。もとにもどって、着地すべきところに着地しておしまい。

今年のクラスは、「ボケ」役がいるのが特徴かな。また、うまく答えをひっぱって くれる学生もいる。ありがたいことだ。

4/12(木)

6月に京都でやる 研究会

非平衡系の新局面 -- 運動・機能・構造 --
の参加講演申し込み〆切は明日になっている。情報量が少なすぎる、という声も あったので、企画講演をもうすこし具体的にかく。が、基本は、一般講演である ことにかわりない。研究会の全体像は、一般講演申し込み〆切後に具体的になる。

「それって変でないの? どういう人が講演するのかがわかって、それをみて研究会 にいくかどうかを決めるのでないの?」という声も何度か聞いた。そのたびごとに 次のように答えている。

研究会(workshop)は、受動的に話しを聞いたり、知識を吸収するのを主目的にする のでない。もっと大事なことは、研究することである。あるいは、研究そのものを 実感することである。おそらく、発表者の講演の中には、立ち上がったばかりで方 向性がはっきりしないのもあろう、未熟な点も多々あろう。しかし、そういう発表 でも、「次に何を考えればいいのか」「どういう問題設定をすればいいのか」「ど うすれば面白くなるのか」などを問うことによって、大きく研究が展開することが ありえるとおもう。発表者だけでなく、講演を聞くもの(とくに、世話人)は、それ をしんしに考え、意見を表明するという緊張感が欲しい。また、これから研究をは じめようとする人にとっては、そういう緊張感を味わう機会になったらいいな。

もちろん、個人によって研究の重点や嗜好は全然違う。Aさんが面白いと思う研究の 方向性とBさんが面白いと思う研究の方向性は違うだろう。しかし、だからこそ、そ れを具体的に言葉にして、議論したい。抽象的な議論ではなく、具体的な研究発表 に即した議論である。....そんなことできるの?という不安は正直いってあるのだ が、やるからには、世話人のひとりである自分が楽しめるようにしないとね。

4/11(水)

SST: 一般的に考えていても埓があかないので、とにかく手を動かすために何をすべき かを考える。いき詰まっている根源は、制御変数と力学変数の差にあると決めつけ て、それを考えるための強引なモデルをでっちあげる。これを解析すれば、変分原理 の謎が解明されるはずなんだが? ええと、時間ぎれ。次は週末。

4/10(火)

ばたばたしていて、研究時間0だが、Bricmontのセミナーにはいった。2d NS方 程式+ノイズに不変測度があるためにノイズがどんな性質をもつべきか、という話。話 のながれとそのアイデアは理解したつもりで聞いていた。ただしその問題の数理 物理としての意義や難しさについては、判断できない。合理的に見える結果の厳 密な証明だから、すげぇと思う類のものではない。証明の最後につかった、○○ の定理(メモが手元にない)はあとで勉強してみよう。

セミナー中に素朴な質問を幾つかして、セミナー終了後、自己紹介して、今研究 していることを2文で説明して、論文もってくるのわすれた... というところで おしまい。

4/9(月)

研究会 の申し込み〆切が迫っている (今週いっぱい)。が、参加申込は少ないようだ。この 研究会は、普段聞けない話や有名人の講演を聞く会ではない。そういう話を聞いて、 ふうーん、というのでなく、「研究する」会のようなものにしたい。自由参加の大 きな研究会で、そういうスタイルでやるのは難しいし、参加者全員が「研究する」 ことに参加はできないだろう。しかし、数人でも公の場所で「研究のための議論」 に加われば、聴きてにまわる参加者は、講演を聞くのでなく、「研究する過程」を 聞くことになる。どこかで聞いて知っている話でも、何を問題にして、どこまでわ かって、どういう展望があるのか、次に何をすればいいのか、、、を徹底的に議論 することを目的にしたい。(しかし、講演申し込みが多くなったら、運営は難しい な。メリハリをどうやってつけるかだな。)

という理念はあるのだが、小心者の僕としては、議論を誘起するための若干の企画 講演も準備した方がいいかな、、、とばたばたしている。まだ、まとまらないが、 この2、3日のうちにはまとめたい。しかし、企画ものは所詮世話人のない知恵を 絞ってでてきたものだし、本当の期待は、一般講演の中にあるんだけど。。

腰の違和感はとれずに、すたすた歩けないが、隣の院生室で大掃除をしていたので、 時々邪魔しにいった。新メンバーの稲垣さん(D1)と中江君(M1)君が強力で、本当は 綺麗好きだった寺田君(M2)も力を発揮して、見違えるほどになった。「(ほぼ)研究 室あげての大掃除」というのは、佐々研にとってはじめての研究室行事かもしれ ない。

4/8(日)

田崎さんの「悟り」は、昨日書いたものより強烈なようだ。

SSTでは、質的に新しい一般的な関係式の予言ができるが、それが本当に重要になる のは、対応する統計力学 SSST(Steady State Statistical Mechanics)を構築できた ときである。僕が変分原理に拘っているのは、熱力学的な側面だけでなく、それが SSSTにつながる、と思っているからである。だからこそ、田崎さんの「そこをみる な」という悟りに抵抗していた。

ところが、田崎さんの「悟り」の核心は、「そこをみるな」でなく、「そこをみな いことによってのみSSSTが可能である」というものらしい。これは強烈である。こ の意味することを丁寧に書くのは差し控えるが、なるほどこれが本当なら、驚くべ ことだし、(コペルニクス的)転回になる。それにあわせた状況証拠が頭にちらほら 浮かんでしまうが、僕はもうすこしふんばる。

腰に軽い違和感を覚える。経験則によると、これは腰痛の前兆現象なので、湿布を 投入し休養に徹する。

4/7(土)

田崎さんが悟ったことの具体的な内容がもうひとつはっきりしなかったので、質問を 送りつづける。

今日のやりとりを通じて僕が判断した範囲では、田崎さんの「悟り」は、展望に関 するものである。端的にいうと、「非平衡部分の変分原理をSSTでみてはいけない」 というのが田崎さんの見解である。僕は、今の段階で、その見解に賛成しない。 (苦しいのは百も承知だが、模索を止めるには早すぎる。)他方、現状理解に関して は、対立することはない。懸案の力学と熱力学の整合性に関しては、大野さんが学 会時に指摘したこと[force = intensiveを先に仮定すれば、現象論として無矛盾] 以上につけ加わることはないと思う。

展望への見解というのは、現状理解への見解と違って、論理的な整理で共通認識に 到達するべきものではないから、「今すぐに」答えが定まるものではない。しかし、 展望をどうみるか、というのは、科学をやっているときに非常に大事なのはいうま でもない。僕が、これから先、いない魚をつろうとして、不毛な時間を費すことに なるのか、田崎さんが、いるはずの魚を逃してしまうことになるのか。(僕は常に 不毛な時間を費しているように思えるから、たぶん、今度もそうかな。しかし、自 分が納得するためにも、ここで思考停止するわけにはいかない。)

数年前にできた背中のこぶ(=ふんりゅう)に傷がついて化膿したらしい。ちょっと ハードスケジュールだったし、睡眠時間は無茶苦茶すくなかったから、抵抗力がお ちていたのだろう。このこぶは、時間とともに成長するらしいので、切った方がいい らしいが....切ると面倒なので、とりあえず、薬で化膿を直すことに。 治療中の禁 アルコール命令も下ってしまった。「薬で化膿を抑え切れないようだったら、切ってし まうよ。そしたら、しばらく毎日通院ね、、」と通告された。(ビールを飲まない日 は、1年に片手の指でおさまるくらいしかないんだが、、、困ったな。)

担当の外科医は、非常に明晰で、こちらの質問に対する答えとその説明も完璧だから 気持がよい。こういう医者なら、安心してみてもらえる。大学の教官もそうあるべき か? ということに関して長いコメントを書いていたが、やめた。(無論、答えはそう 単純ではない。)

4/6(金)

ガイダンスやら進学歓迎パーティーやらがあったのだが、それらがきまる前から 決まっていた通り、Chrisとの最後の議論にでかける。(ただし、研究室ではない。)

基本的には、昨年の夏の議論の復習。もっとも簡単に実験でチェックできて、かつ、 その結果が他の物理法則から導出できないものは何か、という問いを昨年の夏に途中 まで考えた。SSTの形式が、膨大な灰色部分をもちつつも、大きくなろうとしている 今からみれば、それをやったあとの展望がわかりにくこともあるが、何が自明で何 が非自明なのか、というのを簡単な例題で詰めるのも必要かな。。。と、e-mail のやりとりをできるだけ増やそう、というのを約束して、Chrisと別れた。

思わぬアクシデントはあったが、楽しい1週間だった。Chrisは明日から韓国。

4/5(木)

午前3時に救急車をよんで、長女を病院に、という事態になったため、午前中に 大学にいくことは不可能になってしまった。 もう起きているだろうな、という頃に、 Chrisが泊まっているホテルに電話したら、既にいなかった。そこで、事情説明の e-mailを書いたのだが、今日に限って、LANLの計算機の具合が悪かったのか、朝の e-mailを見れなかったらしい。結局、4時間にわたって、事情がつたわらないまま になってしまい、「佐々はいったい何をしているのや?」と、僕なら単純に立腹する 状態になってしまった。(Chrisは、そういうことを微塵にもみせないが。) 今 から思えば、万全を尽くす手は色々あったのだが、社会生活の営なみに疎い部分が でてしまった。

気をとりなおして、金子さんとこにChrisといく。僕は、金子さんの話しは、ある程度 知っているが、今日はとくに実験や生生物との関連を意識して質問した。3時間くら い話しを聞くと、今までで一番洗脳されたかもしれない。金子さんの見方に、全面的 に同意するわけではないが、科学としての健全性を保ちつつ、誰もがやっていないも のを模索する、というのがよくわかった。とくに、COE実験の諸々が有機的につな がってくれば、非常に面白くなるだろう。ただ、理論的に何かを考えよう、とすると 何か足掛かりがいるな。。金子さんがやっていたモデルは「実験への動機づけ」とい う位置づけでは非常にいいが、理論的に考える出発点にはなりえないように思える。 今年は、もうちょっと、そういう問題にはいりこんでみるか。。。などと単純な影響 をうけた。(Chrisも驚いたんでないかな。)

夕方、Chrisとの研究室での最後の議論。直感的にはいいと思っていた非平衡定常状態 測度のひとつのつくりかたが間違いである、ということを形式的には納得した。ミク ロレベルから考えるときの定常状態測度のデリケートさを始めて感覚的に認識できた かもしれない。(デリケートだ、ということがわかっただけで、気味悪さの実体がわ かったわけではない。)

4/4(水)

SST第2法則経由での変分原理の導出をChrisの前でやろうとする。(まとまったノート はない。) 鋭いつっこみのお蔭で、論点がはっきりした。ひとりでノートに書いてい るだけだと、そこに至るまでに、どれだけ時間がかかったかわからない。わかる前の 議論が大事ということを再認識。

4/3(火)

午前中。面白い対象ではないが、理論骨格をはっきりさせるために、希薄流体の摂動 の範囲で、SSTがどういう顔をしているのか、というのをChrisと黒板にかきまくる。 (細かいことは、何かの本をみれば、ちゃんとわかるだろう、、というところまで納 得した。)が、いずれにせよ、変分原理に関してはおかしいまま。(いくつかの論点は はっきりしたように思うが。)

午後、Chrisのセミナー。すでに勉強した人も多かったから、おお、と驚くものでは なかったかもしれないが、instructive な presentationは、実にスマートだった。

しかし、なんといっても足立さん。セミナー開始後20分、赤いズボンで'Nice to meet you again!' と講演者に声をかけて入ってきた。夜のChrisの歓迎会でも、足立 さんパワーが炸裂しつづけた。とにかくよく笑った。(足立さんのエピソードだけで 1時間は笑えるのに、本人が目の前にいるのだから、何時間でも笑えてしまう。)

僕がM2のとき、D3の足立さんと相部屋だった。実に多くのことを教わったし、議論し てもらったし、「酒」につれていってもらった。僕は苦しいときだっので、足立さん がいなければ、相当まいっていただろう、と思う。足立さんは、もっと公の場所に でるべきだ、、、と最後の方は、絡みまくってしまった。

4/2(月)

午前中、Chrisと一緒に大学にいく。昼前から18時半まで議論。

Chrisは、今朝5時半に起きたというのに、長時間に渡って議論をすることになって、 しんどいめをあわせたかもしれない。全てがクリアーになっているわけではないの で、何もかもごじゃまぜのまま現状を伝えた。(田崎さんの昨夜のmailの解釈は伝え ていない。)

いくつか得ることはあった。技術的に僕がきちんと理解していなかったところと、 僕がチェックすべきだったのにさぼっていたところ。後者は、今なやんでいる ずり系SSTにとっても大事かもしれないので、今晩、検討せねば。

ちなみに、Chris は足立さん(現 東工大)がBerkleyのPost-docだったときの、Doctor の学生で、足立さんと親しかったらしい。そういう意味では、僕とChrisは、足立さん を共通の先輩としてもつ、という間柄でもある。

4/1(日)

夢の中:なぜか、院生を叱咤(激励)していた。ううーむ。夢解釈的には....?

午前中、考えごと。要するに、2月に考えていたことが"finish"していないことに 尽きる。そのためには、モデルが、、モデルが、、モデルが、、いる。

午後、Chrisを成田に迎えにいく。千葉から車だとあっというまにつく。(もちろん、 妻の運転。cf. 2月24日の日記)しかし、到着の1時間の遅れと、すごい混雑にま きこまれて、着いてからゲートまで1時間かかったので、待ち疲れをした。筑30年 以上の狭い公務員官舎に招待する。(Chrisがひとりで住んでいるSanta fe の「泥の 家」より狭い。)

僕は、日常会話の英語は、「全くだめ」といっていいくらいだめ。それでも、話し にくい日本人と話しをするより楽しく思えるのは不思議だ。

(鬼才)大信田氏が研究日記をはじめた。片岡かほんじょうくん、日記集にLINKして くれないかな。

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