3月31日 (水)
中川、小松 両氏と10時間。昨日のノートにミスがあることがわかり、彼らの 数値実験の結果は完璧に不思議なものになった。白紙にもどって、この3日間 で考えたことを思い出しながら、いくつかの筋を喋る。そのうちのひとつは、 当初想像していた "most probable backward trajectory" に関するもので、 これは堅実な計算が可能なのだが、労力のわりに計算の意味が不明になるおそれが あるので、ためらいを感じいていた。この路線の可能性に関して、(最後の)検討 をして、自分の研究課題のひとつとして継続するかどうかをきめる。
3月26日 (金) 〜 3月30日 (火) [学会]
「非平衡定常系において測定量間の新しい関係をみいだそう!」という 動きが、少しづつ増えてきたのが嬉しい。NESSでの相関関数と応答関数の 測定からエネルギー変換効率をきめる式を提案する原田さん; 拡散係数と 易動度の不等式を調べた佐々木さん;NESS での 遷移率を与える有効ポテンシャル を模索する中川さん; 林さんと僕の講演の前後に刺激的な話が並んだ。
佐々木さんのは、予想がはずれた!という negative statement だったけれど、 その予想は、僕等も結構真剣に検討していたので、反例には衝撃をうけた。 僕等にとっては、有効温度の物理的解釈とも関係するので、その破れについては さらに考察を深めないといけない。素朴な期待に反例があったときこそ、 それを越えることで理解が深まっていく... というのがここ数年の歴史だし。
中川さんの話は、第一印象で、最近林さんと議論していた「詳細釣合の破れ を測定量と絡めて定量化する課題」と密接につながっていると思ったので、 その後、相当な時間をとって、議論したり、考え込んだりすることになった。 色々な誤解があって紆余曲折しながらも、最低限の論旨ノートの構成はできたので、 帰宅後速攻でノートにする。3/31の朝に駒場で再度議論してもらうことになった。 (中川さんらが数値実験で見出したことを もっともらしい仮説から自分なりに 理解することはできたように思えるが、問題の核心は先送りしてしまったし、 肝心の僕等の課題との関係はみえないまま。)
原田さんの話は前に聞いていたので、最近準備中の実験の話を主に聞いた。うむむ。 高価な実験装置はやはりええなぁ。時間限定なので、楽しい使い道に関して、 僕等もあせって何か考えるべきではないあかな。(是認されるかどうかはともかく。)
そのセッションがあった夜、「有効アボガドロ数」で局所的にはもりあがった。 夜のうちは「いける、いける」と思っていたが、朝になると「狂っているかなぁ」 と思い直した。しかし、昼に、液液転移の話を聞いていると、なんとなくまたその 可能性も少し残したくなった。当面は、研究のしようがないけれど。
3月25日 (木)
学会で発表する院生のトラペをみて、構成とプレゼンの注意点などをいう。 僕を含めて ささ研から4人が発表するが、今回は「全員が完璧な発表」 をめざす。(僕がいちばんこけたりするかもしれないが。) どうせなら、 発表練習もすればよかったかとも思ったが、それは時間切れ。 用事があって金子研にいったら、金子さんたちあいのもとで発表練習 をやっていた。
昨夜でた林さんの数値実験の結果をみる。あれれ、なぜだ? 理論的なチェックを もう一度行うが、問題はないけどなぁ。いいデータがとれれば、僕の発表の最後に みせるつもりだったが、それは先送りするしかない。
昨日の議論で湧いていきた論点に関する関連資料をあつめる。これとこれとこれを 組み合わせれば、漠然としていたことを全て計算できる気がする。それらのリスト を林さんにわたし、(僕ともども)学会中の宿題にする。
3月24日 (水)
ついに40になってしまった。「40にして惑う!」と昨年の夏頃から いっていたとおりに、惑うことにためらいを感じないようにしたい。 (色々な意味の)現場におりてこずに、大局にたった発言とやらを表 からみえないところでいうだけのえらい先生にはなりたくない、 ということは忘れずにいたい。
と力んだついでに思い出した。 先週、KEK で もうすぐ60になられる研究者の方と2時間くらい話をする 機会があった。手掛けている研究テーマの選択にしろ、具体的な第一歩にしろ、 大変若々しく、目をかがやかせて喋ってくれた。色々な行政職を担っている 噂は聞いていたのだが、「30のときに何をやりたかったのか」を思い出して、 もういちど研究に専念できるような態勢をととのえたらしい。 「最近は、研究で躁状態がつづいている。」 と笑っておられたが、 こういう話は、聞く方も大変たのしいし、大きな刺激をうけた。
学会発表のトラペ書き。あとは、前日に手入れをしておしまい。
拡張 Einstein 関係式論文: 赤入れの検討。
拡張 FRR の議論の途中で、なかなか楽しげな予想がおりてきた。 攻略可能な気もするので明日速攻で関連文献をあつめて、学会中に なんとかしたいものだ。
3月23日 (火)
昨夜つくった 学会発表の講演構成案 。 10分発表+5分質疑なので、構成はこんなものかな。OHP 10枚。
学会発表の講演構成案 ver. 2 。 山場の(6)に2分つかいため、2枚けずって8枚に。清書は後日。 学会準備は、年を重ねるにつれ、丁寧になっている。年を重ねるにつれ、 「10分で発表なんかできない。学会にでても学生の未熟な発表ばっかり ではないか。」ということをおっしゃり、学会には原則不参加・原則未登檀 になっているえらい先生方(←蔑称としてつかっている) が増えていることへの 抵抗でもある。(1年に1回登檀するので目一杯だけど。)
拡張 Einstein 関係式論文の赤入れ。
3月22日 (月)
学会発表のうちあわせ: 林さんが DLG での 拡張 Einstein にしぼり、僕が fluctuating hydrodynamics での 拡張 FRR にしぼることにした。(このふたつ があると Green-Kubo の拡張はついてくる。)fluctuating hydrodynamics での解析はいいのだが、拡張 FRR の実際の測定をどうするか、というのが 色々と難しい。それを学会発表ときりはなして議論していたとき、 林さんが「とりあえず half-filled だったら、これでいいじゃないの?」と、 ある提案をした。僕は、速攻で、それは自明にダメで... と説明していたら、 そのダメな論旨は週末の僕の解析にも適用されるではないか。あれれ? ここにいたってそれではあまりに痛い。ノートを丁寧に検討しなおす。結局、 僕が速攻でダメだといったのが間違いだよなぁ.... というところで今日はおちつく。 林さんが数値実験のサポートを急遽とることになった。まにあって、僕の最後のトラペ でそのデータを紹介できたら、僕の話も大変綺麗にまとまるのだが。
拡張 Einstein の論文:赤入れ用草稿の作成まで。のびのびになったが、4月上旬 投稿は実現できそう。
3月21日 (日)
(外出先で)学会発表の構成案をねる。拡張Einstein の論文草稿に手をいれる。 推薦書案(ver.1)をしあげる。昨日のノートに関して、閉じた表現から 測定量間の関係におとすときに使った仮定について再考する。
3月20日 (土)
昨夜から、昨日白板に書いたことを紙にきちんと書く作業をしている。 自明だと思っていた命題の証明でつまったところで昨夜は寝た。午前中 は、家族で外出していたが、あいまの時間に喫茶店にはいって昨夜つ まった部分を考える。コーヒー2杯分で突破。午後、残りの部分の 続行にはいるが、夕方にふたたびつまる。睡眠時間が少ないせいか、 うたた寝をして、目がさめたらミスにきづいて復活。主張したいことは いえているようだ。これで学会発表の構成が楽になる。
大学の計算機につながらずにイライラする。文書ファイルは全て大学の計算機 においてあって、家での作業も大学の計算機に直接はいって行うスタイル になったので、ネットワークがきれると作業ができなくなってしまう。 何か対策をつくっておかないといけないのかもしれない。今日の予定 作業は推薦書書きだが、日付がかわったのにまだ終わっていない。
3月19日 (金)
学会では、fluctuating hydrodynamcis の立場で NESS における有効温度の 有用性を示す予定にしている。extended Einstein はみせれるのだが、 それだけでは、わざわざ連続場を解析する意義が少ないので、なんとしても 応答関数と時間相関関数の関係の拡張を(作業仮説なしで)モデルをいじって 具体的にみせたい...と、ここ2、3日 のたうっていた。朝の電車で、 これでいこう、、と最後の腹をくくって格闘するも、夕方には予想に反する命題が 示されてしまった。コーヒーを飲んで、大槻君にずり系の実験の話を聞いて、 林さんと拡張Einsetin の論文草稿のうちあわせをして、白板で「いかに崩壊するか」 を説明しようとした。説明の途中でうっかりミスが発覚し、それをなおすと、、 お、いけているではないか。
作業仮説つきの一般的な話をするより、やや特殊だが具体的なモデルでみせる方が 印象は強いだろうから、正直ほっとした。ノートに清書するまではわからないけれど。
3月18日 (木)
東京に戻る。それにしてもつくばは遠い。
大槻君のFDTの証明を聞いて、林さんと論文草稿の話をして、柴田君の数値実験の 話をきいて、林さんと FRR の話をする。途中、田崎さんとNESS の温度について e-mail で議論する。
3月17日 (水)
KEK 研究会: 色々な意味で有意義だった。記録として残したいことが3項目ある のだが、ちょっと日程感覚が狂っていたことに気がついて、いま、焦りまくって いる状態なので、(覚えていたら)別の機会にかこう。
3月16日 (火)
KEK 研究会 : 全くわけがわからんのだろうな... と想像していたら、 そうでもなく、すくなくともモデルをみとめたあとの解析としてやっていることの 筋はわかる。とくに、川合さんの話は、最近目をとおした統計力学モデルの解析と 似ていたので、次のトラペで議論することを心の中であてれてひとり喜んでいた。 ただし、モデルの解析結果を string theory の形式とむすびつけて 議論するのが主題であり、そのあたりはさっぱりわからないのだが。 全体の感想はまた後で。
僕の発表は、質疑応答でまずい点がひとつ、説明でまずい点が2箇所あったが、 時間も含めて全体の構成は(自分の発表の絶対評価では)よい部類にはいるだろう。 ただし、もう少し heat up を抑えて、80 % の力で喋るべきだな。 質疑応答ででた質問は、「構成された自由エネルギーからきまる エントロピーのミクロな解釈はどうなっているのか?」(米谷さん)、「local に 非平衡性が効く現象にどういうのがあるのか?」(川合さん)、 「境界条件の影響は?」(西村さん)、 「NESS において温度概念はどうなるのか?」(すいません、名前がわかりません) のほか、あとふたつくらいあった。非常に質の高い質問で、質問にたいして 喋りすぎたかもしれない。
講演中、ターゲートにしていた数人の人の顔を観察しながら喋っていた。うち ひとりは、途中で退屈そうにされていたが、残りの方々は、しっかりした目を 最後までもっていただいた。とくに、藤川さんは、(いつもそうなのかもしれ ないが)、終始、笑顔でうなづかれていた。調子にのって、「線形応答理論との 関係を補足する最後のトラペを、線形応答理論の論文も書かれている藤川さんの ために用意しました。」と軽口を叩いてしまった。
その後、研究会にこられたふしきさんにデータをみせてもらう。うぬぬ。 金さん経由でみせてもらったデータと色合いが違うのでは?
3月15日 (月)
いくつかの打合せをして、つくばへ。
3月14日 (日)
Sasa-Tasaki の長論文草稿が田崎さんからおくられてきた。 僕はこれまでひとことふたことの意見をいっただけで、執筆への貢献はゼロ なのだが、この重い論文草稿をみていると、非平衡統計の研究に関する 簡潔で本質的な概説をintro のどこかにいれるべきだなぁ、、と思い始めた。 普段から非平衡の本やまとまった論文をみていて不満に思っていたので、これを 書く絶好のチャンスではないか! というので、ねっころがったり、端末にむかったり してスタートをしたけれど、、、、、大変だ。全体像を整理するのを KEK での宿題 にして、その後、原論文たちを再読せねばならない。 できるかなぁ? この手の作業は好きだったのだが、研究との時間配分との兼ね合いだな。
そういうことを考え始めたついでに、 来年度夏学期の集中講義構成案 を書いてみた。内容を非平衡統計に絞って、 技術的な部分と精神的な部分のバランスを意識した議論を目指す。とりあえず 書いただけで、これから大幅に変更されるでしょう。来年度の集中講義に でたい人で具体的項目に希望がある人は連絡ください。
KEK 講演の準備はちょっと不十分だ。明日時間配分を丁寧にみなおさないといけない。 準備した内容は時間内におさめれるはずだが、OHP に丁寧に書き込んだので、 それを棒読みすると時間オーバーになる。あとは発表スタイルの問題だと思う。
3月13日 (土)
(木曜日に書いた)熱伝導 SST についての補足:現在の現象論として不完全な部分は、 化学ポテンシャルの$(T,J)$ 依存性をきめる手段の箇所だけにある。 (DLG ではそこもふくめてうまくいっている。) だから、そこを使わない 非平衡定常条件下での 様々予言は現状の理論でも強い説得力をもっている。そして、化学ポテンシャル の$(T,J)$ 依存性をきめるには、それを可能にする装置(= μ-wall ) がひとつあれば十分である。平衡熱力学において、理想半透膜がひとつあれば、 化学ポテンシャルの混合比依存性をきめれるのと同じである。
OHPをひととおり書く。明日手をいれながら仕上げて、あさって音をいれて 準備おしまい。(これっきりの人が大半だろうし、主催者たちとも数年は あわないだろうから、準備は丁寧にしたつもりでいる。結果に反映するか どうかはわからないけれど。) やはり時代の流れにのって、そのうちに パワポ とかに移行するのだろうな。
第49回物性若手夏の学校 の講師陣をみると、講義の講師6人中 3人が僕との連名論文がある。「僕は、低次元物性や液体金属や高分子まで 幅広くやっていますから... 」というのではない。僕は超狭い専門分野の 論文しか書いていない。うぬぬ、風の便りで聞いていたけれど、... いいのか?
3月12日 (金)
KEK 研究会の講演構成案 の最終検討 をしながら、OHP の下書きをしあげる。一般的な目標、目前にあるひとつの目標、 モデルを提示したあとの具体的な問... と 分解能をわけながら、問いかけ をそのつど述べる構成にした。
super string theory くらい分野がはなれていると、とにかく閉じた話にすること だけに意識を集中すればいいと判断した。例えば、日程があわなくて断ったが、 2年くらいまえに物性研であった「物性理論の展望とか何とか」という研究会で の講演が実現していたら、「非平衡統計=線形応答理論 〜 久保論文」という 先入観を聴衆がもっていることを意識しないといけないだろう。 「非平衡= G-L 的 方程式」という記述に馴染みきっている聴衆のまえでは、標的となる 現象を先に提示して、そういう記述の限界からはいらないといけないだろうし、 extended thermodynamics のグループの前で喋るなら、そういう先行研究との 差異を意識しないといけないだろう。等々、、面倒なことがあるように思える。 今回、そういうのはいっさい考えずに、「おませな大学4年生」が話の全体を 掴めることを意識した。(おませな4年生の例は、昔の自分にした。線形応答 の論文は読んでいても、DLG は知らない。揺らぎの式はしっていても、熱力学 の変分原理との対応を明示化できていない。)
3月10日 (水) 〜 3月11日 (木)
金さんのセミナー:ボツルマン方程式の解析方針にはじまって、解析の技術の諸々 や結果の解釈にいたるまで膨大な議論をしてきた成果をはじめてまとめて聞く機会 だった。それぞれの時期に議論してきたことを思いだしながら聞いた。と、感慨に ひたっている場合ではない。セミナー後、熱伝導 SST はまずいなぁ..と、あらた めて思った。熱力学関数を具体的に構成するのに、”○○という条件をみたす壁が 存在する” ことを現象論の範囲で仮定するのは、禁止事項に近い。もちろん、 ひとつでもその壁があれば、熱力学関数を決めることができるのだけれど、最低限、 その壁をつくる方針を具体的にみせないといけない。しかし、この問題は 悩みようがないから苦しい。MDで試行錯誤をするのは死ぬし、数学的な方針 は何もみえない。(あ、来週のKEK 講演では、熱伝導については コメントを するだけにしているけれど、どういうコメントが適切なのか考えないといけない。)
林さんのセミナー: 未整理のままに書かれたトラペを前にして勢いだけで喋って 失敗した数々の自分の経験を思い出した。(まだ失敗数の方が多いかな。) 成功と失敗をシーソーのようにくりかえすところまで真似しなくてよろしい。
大槻君のセミナー: いったん、実験室実験と数値実験データを全部ならべて 整理整頓する時期だと思う。粘性係数異常を示す玩具に関してはすぐにでも 色々なことができるはずだが、現実系の色々なことがわからないので、遠くの 方向性がみえてこない。
金さんのinformal セミナー:熱伝導希薄系と固体との境界面を力学レベルから 考察するモデルと問題の設定について、トラペ2枚で3時間近く議論する。 面白い問題が潜んでいそうな気がするが、今日のところは、これぞ、というのには 到達しなかった。また具体的な結果がではじめたら、それをみながらひらめくこと もあるかもしれない。歩きながらときどき考えてみよう。
3月9日 (火)
KEK 研究会の講演構成案 を改訂する。 H-S I + Sasa-Tasaki だけを睨んだ Introduction にして、全体をスリム にした。はじめて聞く人がほとんどだから、先の話( = H-S IV や H-S V)を 見越した構成はしないことにした。どうも、H-S I の話と H-S IV, V の関わり がみえる形での構成を半端に意識していて、無駄な時間をつかった。未解決の問題を なんとかしようとするのは、研究としておこなうべきで、発表準備ですべきではない。
どうも随伴応答関数の測定の仕方が間違っているようだ。不思議なことにそこで予想 された結果は多分正しいと思うけれど、実験としてみせたいので、再考すべし。
3月8日 (月)
佐野研で開かれた青柳氏のセミナーにいく。神経応答のモデルや神経発火の同期の 果たす役割など。動機と到達点がよくわかった。神経生理実験の人と共同でやって いる影響もあるのか、形式的でない理解をしているのは大変気持ちがいいし、また、 生理の泥々した部分にとらわれることなく、活発に楽しそうに研究が進んでいる様 もよかった。
3月7日 (日)
とりあえず KEK 研究会の講演構成案 を 書いて、II 節の下書きを書いた。今日までには全部下書きをおえる予定 だったが、悩む時間が長すぎた。
H-S IV 論文に速攻で手をいれて林さんにかえす。明日から赤入れに はいれたらいいが。
3月6日 (土)
いよいよ KEK 研究会の準備をしないといけないので、具体的に紙の裏にいくつかの バージョンを書く。今までも歩きながら考えてはきたのだが、うーん、、どれも いまいちで、優柔不断状態になっている。ざっとみた参加者リストで面識があるのは、 稲見さん、米谷さん、国友さん、磯さん、橋本さん くらいなので、彼らの顔を うかべながら案を検討したが、この作戦自体がまちがっているのかもしれない。
3月5日 (金)
Eyink-Lebowitz-Spohn の論文で、自分らの知見と関わるところを注意深くよむ。 この論文、自明なところはやたら丁寧なわりに、非自明なところは説明はなって ないし、証拠も論拠もない。(僕の基準では)論文として酷いもんだ。 非平衡といっても別世界の空気を感じる。とはいっても、"FRR in NESS" という言葉は同じだし、(当然だが)式も似ているので、無視できない。 集中して睨んで、自分らの最近の話との形式的な対応は完璧になった。 みかけの類似とは異なり、物理としては全く違うし、その価値は我々のが ずっと上だと思うので、FRR 論文を書くときは注意しないといけない。
そういえば、SST も言葉や式が Jou らと似ているからややこしい。まぁ、Sasa-Tasaki についた 膨大なreferee たちで Jou らのことに触れたのはいなくて、結局は、 「長距離相関」にびびる人が半数を越えるかどうか、、というのが是非の分かれ目 だったのだが。
それで思い出したが、「長時間尻尾」が線形応答理論を壊すのではないか、、 という危惧が蔓延した時期がある(そうだ)。いったい何にびびっているのか 僕には理解できないが、一度、不安が広がると、深く考えずに、やばいやばい やばい、、「長時間尻尾」を何とかしないといけない、、これこそは非平衡 統計の課題で.... という風になるのであろう。前にも書いたけれど、系の大 きさ固定で時間を(普通の時間スケール程度に)大きい領域でみれば、「長時間 尻尾」は抑制され、カレント相関の積分は確定する。これは、たとえば、「長 距離相関」がもっと長い距離では抑制されて状態量が確定するのと同じ。 だから、「長時間尻尾」は線形応答理論とは矛盾しないし、「長距離相関」 は(本当にあるかどうかはまだ不明だが)熱力学の存在と矛盾しない。
長時間尻尾も長距離相関も(それなりに)面白い話題で、僕等もそのでかたに ついて最近面白げな事実を知ったのだが、決して本流の問題にくるような ものではない。非平衡統計の研究は、そういう位置付けに関して、ある時期 から完全に狂ってきた、と僕は判断している。
3月4日 (木)
朝、胃液を吐いた。(二日よいではない。原因不明。) 夜、熱がでる。 なんとからだの弱いことよ。それでも今日中に処理したい書類があったので、 大学でいっきに処理する。[両親もときどきこの日記をみていて、体調わるい、 というのをみて心配してくれているのだが、研究に関連した記録として残す ので書いていこう。3/5にこれを書いている時点では酷くはないです。]
この代償として、数値的にみえている 応答関数/随伴応答関数/相関関数 の関係 (FRR) を導く作業仮説群を得たように思える。作業仮説(i) は、 平衡のカノニカル分布を弱くしたもので(= 田崎さんのいう弱カノニカルより もっと弱い)、マクロな系ではもっともらしい。作業仮説 (ii) は、 平衡での詳細つりあいを弱くしたもので、DLG ではもっともらしく思えるが、 ちょっとまだ表現の一般性に欠け、感覚もふやふやしている。 とにかくこのふたつの作業仮説があると、今、数値実験でみえている FRR を導くことができる。導き方は、火曜の夜の林さんの話しに尽きていて、 わかってしまえば簡単である。[作業仮説 (ii) は、朝、吐いている途中で みえてきたので、その代償で得た... という風に思ったのだろう。]
これらをミクロから理解する... なんてとばずに、当面、これらの 作業仮説群を 鍛えないといけない。とくに 仮説 (ii) は未熟すぎる。幸いなことに、仮説 (ii) に関係しているだろうと思える話が、Bertini らや Gregory-Lebowitz-Spohn らの論文にもちょこっとある。( 彼らのグループが " assume " している部分 にずっとひっかかっていた。Bertini らはそれを FRR とよび、Gregory らは、 まったく強調せずに、 知っているマクロモデルでは全部なりたっている関係だと、 さらっと書いている。) これらとの接点を明示的にし、仮説 (ii) をちゃんと理解 していくのが当面の仕事になるのであろう。
そういうのを考えながら帰宅していると、あれ? half-fillded 以外の場合は、 今の作業仮説では説明が難しいのでは? と急に不安になった。あ、そうか、 その場合は、数値実験もまだ丁寧にみていなかった。(昨日する予定だったのだが、 それどころでなくなったからなぁ。)
3月3日 (水)
昨日の林さんの議論でつかわれた「作業仮説」は強すぎて、数値実験で成り立たない ものまで予言してしまう。そこで作業仮説を少し弱めて、昨日の議論の拡張を行い、 数値実験で予想されていることが成り立つ条件をもとめると、ある3体2時間相関関数 が時間に関して奇関数であることが導かれる。数値的に測定しても、たしかに奇関数 に近いようだ。この事実に物理的な意味があれば嬉しいのだが、 わかるようでわからない。
extended Einstein の 論文: 結果の理解とその意義をのべる部分の草稿を書く。 (この部分はふたりが同時に草稿を書くことにした。非効率ではあるが、これを簡潔 に文章として整理することは「今」必要だと思ったから。) ↑ の「作業仮説」は この論文でもでてくるので、少しだけ変更する。ついでに不細工な式を整理整頓する。 ありゃ? まとめなおしたら、符号がひとつあわない。今日はもうやめ。
3月2日 (火)
昨夜とばした随伴応答関数のデータをみる。有効温度を導入しても応答関数単独 では、(tに関して最大)相対誤差数%のくいちがいがあるのに、随伴応答関数 と応答関数のくみあわせでは、(tに関して最大の)相対誤差数 1 %以下におさまる。 (間違いがなければ)、もはや Einstein 関係式 よりもよい精度でなりたっている。
さて、これをどう理解するかだが。。。そろそろ理論的考察もエンジンをかけよう と、朝の電車でぼーと方針を練る。何かできそうな気がしたので、おおらかな方針を 林さんにしゃべる。↑のデータをみて興奮した林さんは、寒気にあたって冷静に なってくる、、といい残して散歩にでかけ、帰って来るなりアイデア1をだす。 いけそうな気配なので白板に書いてもらうが、ボツ。帰りの電車でもう一度丁寧に やってみたけれど、おかしな関係式がでてしまった。変だなぁ.. と mail をみると、 林さんからアイデア2が届いていた。good idea ! とだけ返信して、それに のっかって計算をすすめる。ちょいと中断する用事があったのでそのついでに mail をみると、おおお、でているやん。
数学として厳密な証明ではなく、作業仮説をつかっているし、Bertini らの研究 との絡みがまだ明示的ではない。しかし、大きな前進だ。
3月1日 (月)
先週は、渋谷に3泊し、研究以外の仕事におわれた。体調は鼻をのぞいて治った けれど、その鼻がよくない。花粉症ではなく風邪からきたものだと思っているが、 ティシュの消費が半端でなく、研究室にためていたティシュがあっというまに空 になってしまった.. 。とかいってる場合ではなく、今日から本格的研究生活に もどりたい。(今週の事務仕事は、書類1と会議1だけ。)
まず文献を探す。1950年代の終りに線形応答理論をグリーン関数を駆使した形式 で議論するのがあって、そこでは遅延と先進をつかわれていたことを思い出した からである。[Bogoliubov や Zubarev ら。] (適当な物理量に対する)遅延 グリーンが応答関数に対応するので、昨日、言葉として導入した「随伴応答関数」 は、(適当な物理量に対する)先進グリーン関数と関係する。そのあたりの論じられ方 を調べておこうと思ったのだ。当然のことながら、平衡状態でのミクロ動力学しかみて いないので、随伴応答関数という概念がでてくるはずもなく、複素平面の算数技術 を駆使したいための道具としてでてくるだけのようだ。しかし、 このあたりの古い文献たちは、一応全部目を通した方がよいかもしれない。
(非平衡でも虚数成分がでてこない half-filled で) 随伴応答関数 のデータをみる。 ほー。それを t の関数とみたとき、応答関数との間にすき間が生じ、なんとその すきまの真中あたりを 相関関数を有効温度でわった関数が走っているではないか。 (くどいが平衡ではすき間はなく3本が重なる。) 第1データとしては上々だな。 最初はよくて精度をあげるとこける歴史をくりかえしているので、慎重にデータの 精度をあげていこう。昨日僕がとれなかった方法で林さんがデータがとれていたので その詳細を聞く。なるほど、何としてもデータが欲しい、、という執念で工夫を したのか....。ただし、その工夫を合理的にするにはいくつかの面倒な手続きが 必要だが。
H-S IV のレター論文草稿をもらったので、帰りの電車で読む。2、3日で 段落構成まで仕上げたいので、深夜に作業する。うーん、時間ぎれ。