5/31 (土)
ひさしぶりにゆっくりした時間がとれたので、Hayashi-Sasa III に関して長時間 熟考し方針転換にむけたノートを書く。
5/30 (金)
Hayashi-Sasa III: ラフにいって、Hayashi-Sasa II で(少くともみかけ上)うまく いっている(局所平衡が破れた状態での)密度揺らぎの話しと同じようにカレント揺らぎ も何とかならんか、というのが III のテーマである。しかし、そもそもかなり 質の違う話しで、どうにもこうにも真っ暗にしかみえない。こんなことはやめて 堅実にできることはたくさんあるのだから、そっちに集中するのがいいのでないか、 とふと思う。それでも、やたら強気な林さんにひっぱられて、III の議論をする。 時々光がみえそうになるが、よく考えると、結局はこじつけか自明かのどちらかで、 なかなか手のつけどころが難しい。もがいている途中で、Hayashi-Sasa II で見落としていた重要な論点があったことに気づいたのは好運だった。 これは、週末に確実にチェックしておかねばならない。
もの凄く時間をかけて強気に攻めても意味のある結果を得られなかったら、 何もないのと同じである。意味のある結果をだせなければ、どんなに問題を 深く考えていようと、どんなに意欲的であろうと、どんなに優秀であろうと、 だめである。その一方で、筋書きが見え見えの問題を考えたいとは全然思わない。 自分が知りたいことを知るために研究するのだが、結果を残せなければ 趣味でしかない。職業人としての科学者にプライドをもっている以上、 自分が知りたいこと知ることと結果を残すことは両立させないといけない。
わけのわからん問題を考えているときは楽しいのだが、その楽しさに流されて しまうとろくなことがない。Hayashi-Sasa III は始まったばかりで、まだ不毛 な時間を費したという感じではないが、敢えて自分にむけてメッセージを書いた。
5/29 (木)
午前、Hayashi-Sasa IIの数値積分。あれ?? 日記によると 4/11に 不審な挙動があることを林さんから知らされ、僕も確認したことになって いる事項が再現できない。不審なところなどない。 数値積分のアルゴリズ ムのよしあしは、基本的にはメッシュ数などの数値パラメータを変える ときの収束性のよしあし(と場合によっては計算時間)にあるのだが、 そういう点からすると、最初のもっとも原始的な版がいちばんいいではないか。 被積分関数に特異性があるのは事実なので、そこの処理を最初にしてしまうと かえって メッシュ数依存性が悪くなる、、、ということか。ちゃんとした 理由はわからないが、4/11の不審な点が確認されないのだから、 素朴なアルゴリズムのまま精度をあげる方向に転換すべきかな。 (今までの苦労は何だったのだ?)
談話会: Oono-Paniconi/Hatano-Sasa/Hayashi-Sasa II の説明の部分について、 もっと印象的かつ要点を的確に捉えたプレゼンがありえたことをホテルについて から気がついた。詰めに関する集中力が足らなかった。それを除けば、時間的・内容 的には、あれが精いっぱいだと思う。忙しい季節なのに遠方からいらした何人 かの方を含め大勢の人にきていただいて、ありがたいことだ。
5/28 (水)
朝のうちにカオス講義の準備を終らせよう、と思ったが、全然はかどらない。 やるべきことはわかっているのに、明らかに頭のある部分が他のことを 考えたがっていて、集中できていない。予定時間をだいぶオーバーして 何とか形をつくる。
Hayashi-Sasa II の数値積分にとりかかる。林さんが学会直前にやった積分評価では 被積分関数の特異的な部分を素朴にあつかっており、そのままでは少々まずい点が あることが4月上旬にわかった。この一ヵ月の間、ゆっくりと工夫しながら、 いよいよ欲しい値をみる段階になったのだが、何だかおかしい。 成り立つことが数学的に証明できる平衡の場合でも、最初の評価の方がはるかに いいし、ほぼ同じ精度で非平衡の場合にも「成り立ったら嬉しい式」が なりたっている。改良した積分では、平衡/非平衡とも同じように「遅い収束」を 示している。何か根本的に勘違いをしているのかもしれない。 面白くない作業なのでだらだらしたのがいけなかったのかな。 (別の積分評価で林さんの結果ももうすぐでるだろうから、それと比べて再検討かな。)
明日の 相関自然部会談話会 の最後の詰めをしないと いけないのだが、もっとも気になるのは Hayashi-Sasa IIIの方向性である。いよいよ 誰もいったことがない領域での試行錯誤にはいる。その最初の一撃に関する瞑想を する。(既に林さんは手計算をはじめているので、その結果も気になるが。)
5/27 (火)
例えば、周期ポテンシャル中のブラウン粒子の長時間の振舞は拡散的である。その 拡散係数はポテンシャルの形に依存する。この系に一様駆動力をかけると粒子は(平均 すると)一定速度で動く。駆動力と速度の比(=易動度)もポテンシャルの形に依存 する。ところで、駆動力が小さい極限で、拡散係数と易動度の比は、ポテンシャル の形に依存せずに(<-- ここ重要!)温度だけできまる、というのがEinstein の関係式 (or FDT)である。一般論としては誰もがしっている話しであるが、 具体例でふたつの量を別々に計算して、確かにそうなることを確認すると、 不思議な気分を味わうことができる。[易動度の計算は簡単だが、 FDTを使わないで拡散係数を直接計算するのにちょっとした「技」がいる。]
さて、駆動力がかかっている非平衡定常状態においても、拡散係数と易動度はモデル の範囲で別々に計算できる。たいした計算ではないので、計算したことがある人 は100人以上いるかもしれない。ここからが問題である。この算数の遊びみたいな 話しが、Hayashi-Sasa III の準備の準備の準備になっていると期待しているのである ... (to be continued ; 本当に続くんかいな。すぐポシャルかもしれない。)
5/26 (月)
Hayashi-Sasa III の準備の準備の準備の予備的考察(= ある確率過程を粗視化する という問題)に関する林さんの休日の成果をきく。自然な方針にたった計算で、 そのまま Mathematica を駆使していけば、最終的な答えに到達するかもしれないが、 そういうのをもっとも簡単に計算する「技」を伝える。 これと同じようにすればできるはず... といい残して議論を 離れたが、ちょっと不安だったので紙の裏に速攻で書き殴って様子をみると、あれれ 「その技」ではうまくいかないじゃないか。恰好つけてこけるのは最悪なので、 しばし集中する。結局、イリノイRGをつかって答えを先にみつけて、イリノイRGを使わ ない単純計算法に翻訳し、林さんに説明する。(粗視化の計算になじんでいた大学 院生時代でも1日や2日では解けなかっただろうな。) ふーん、結果は綺麗だし、 なかなか面白いな。準備の準備の準備の予備的考察だし、単純な設定のありがち な問題だから、どこかに議論されているだろうけれど。
田崎さんと Hayashi-Sasa I の化学ポテンシャルの位置付けについて話しを する。熱伝導系においても、しばらく離れると忘れてしまう重要なこと(=驚く ことではない)があったことを思いだした。基礎測定にくみこもう。
談話会の準備やHayashi-Sasa II の数値積分やちょっとした事務仕事などを したが、講義の準備ができていない。
5/25 (日)
談話会の準備:OHP書きの9割ほど終了。残りは月、火の時間の合間にできるだろう。 パワポのプレゼンがメジャーになりつつ中でのOHP による談話会も化石的かもしれ ないが、時間もないし、まぁよいだろう。その代わり、精魂こめた書き下ろしでっせ。
何故か頭が軽く感じるので、カオス講義の準備をせずに、Hayashi-Sasa II の懸案 の数値積分に向かう。が、どうも不透明だ。いっそ力まかせに計算機に長時間計算 させるのが賢いような気もしてきた。
5/24 (土)
談話会の準備:下書き。午後、疲れと頭痛を感じたので、布団に入って2時間 ほど熟睡する。前回との談話会とのオーバーラップは基本的にはゼロ。(ただし、 Sasa - Tasaki の位置付けについてはより明確に喋る。また、学会でみせたMDの デモを未来編の2枚目あたりにみせる。)
準備をしていても意識したが、SST計画は「ゴールなき疾走」では決してなく、 ゴールは明確だと思う。「熱力学の拡張ができるかどうかを決める。拡張が可能 ならば、それがどれくらいの現象群をカバーできるかを明らかにし、得られた体系 と矛盾のない統計的重率を与え、理論をできる限り豊かにする。」 ただ、 そのゴールに至る道のりは真っ暗で、とくに地道な積み上げが非常に難しい。 試行錯誤のほとんどは無駄死にしている感じがする。それでも、Hatano-Sasa, Sasa-Tasaki, Hayashi-Sasa, (Hayashi-Sasa II <- 詰め中 ) と未来につながる ものが残せているのは、結構びっくりすることでないのか、と思ったりもする。 思わせぶりにひきよせといて、結局大した話しではなかった.... という最悪の シナリオはあるけれども。(最悪のシナリオになったとしてもしかたない。 そういう「運」だった、ということかな。)
5/23 (金)
談話会の準備:前半 第I編から第IV編までを25分、後半 第V編25分、あそび 10分として、前半の構成に悩む。誰が何をした、という羅列はつまらない。 教官にとっても新鮮な視点をもりこみ、かつ、話しとして面白くする.... 。 昨夜からいくつかの案が浮かんたが、まだ確定しない。そのかわり、田崎さんと 中村君の協力で、大槻君がOHP シート最後の2枚分をつくってくれる。うーん、 この2枚に負けない本体となると、いよいよプレッシャーだなぁ。
カオス講義と熱力学講義:気管支の調子はまだよくないが、もう休講にするわけに いかない。熱力学講義の後半は声が変わってしまったが、最後まで喋る。カオス 講義は、数学の説明なのでいまいちだった。次回(来年?)は今日の部分も具体例 でいきたいものだ。熱力学講義で、僕の書く 温度 「T」 という文字にふた通りの フォントがあることを指摘され、「どう使い分けているのですか?」という 質問がでる。黒板をみると確かにそうだが、今まで意識したことがなかった。 不思議だ。
5/22 (木)
KISS:自己複製ループ間に相互作用を導入したCAモデルの構築。CA --> 自己複製子 --> population dynamics と階層を順にみればごく普通の振舞にみえる。折角、CA から構築するのだったら、(population dynamicsで典型的にみえる)渦巻きの影響を うけて複製子が変化するような振舞がみえたら驚くし興奮するのだが..。
WORD問題でばたばた。結局、フロッピィーを介したファイルのやりとりで、 Windows で書くことにする。大槻君と中村君のつきっきりの指導をうけ、 なんとか書類はできた。しかし、ファイルに細かい指定はなく、これだったら text 提出でええやんかぁ... と叫びたくなった。
会議がちょこちょこはいっている合間に、熱伝導MDのパラメータ調整や、来週のカオス 講義のための数値実験など。ひと区切りついたので、談話会の構想をホテルで練る。
5/21 (水)
来週木曜日にある 相関自然部会談話会 で喋らない といけない。要旨の〆切なので構成を明示的にする。1年半前に物理部会談話会 で喋ったときは、Sasa-Tasaki に焦点をあてたが、同じことを喋るのも嫌なので、 ちょっと目先を変えた。そもそも物理部会と相関自然部会(物理)の差は駒場以外 の人には理解不能だろうから、何故ふたつ談話会があるのか、というところから 疑問かもしれない。[清水さんや池上さんは物理部会;金子さんと佐々は相関自然部会。 ただし、大学院組織では金子/清水/佐々が同じグループで、池上さんが違う。]
カオス講義の準備で4月末に自分が書いた(シンボル化の)プログラムが全く理解 できす、3時間くらいつぶれてしまった。メモもノートも残さずに3週間さわら なければ他人か。。。おかげで今日の予定は狂いまくり。
それでも、Hayashi-Sasa No. II のつめの計算は一区切りするところまですすめる。 これは月曜日まで寝かす。
5/20 (火)
熱力学の拡張(Hayashi-Sasa No. I )の論文改訂稿を林さんが再投稿し、熱力学の 拡張(Hayashi-Sasa No. II )のつめの計算で停滞している部分について昼食時に 大槻君にアイデアをもらい、熱力学の拡張 (Hayashi-Sasa No. III ) に関する 攻め方を林さんと議論する。No. III は、うまくいけば原田実験とも密接に関係 するはずだが、まだ真っ暗な荒野にたたずんでいる感じがする。色々な可能性を 夢想するのは面白いが、現実的にしぼりこんでいくのは大変だろうな。
5/19 (月)
田崎さん、フシキさんと熱伝導MDに関する5時間くらいの議論する。着実 バージョンと現象バージョンの各々に関して、基礎的なことを再確認しつつ、 非平衡化学ポテンシャルに関する田崎さんのアイデアをきく。その議論に備えて 3週間前につまったままになっていたプログラムを再起動し、バグをとる。
5/17 (土)
日常生活にはほとんど支障ないが、このまま治らないと普段の講義はできない。 十何年前に同じ症状を患ったときには3週間以上だらだら続いた上、病院に いったときには、相当酷い状態になっていたことも思いだし、早めに手をうつ ことにし、病院にいって薬をもらう。
5/16 (金)
火曜の夜から調子が悪かった気管支の状態が悪化してきた。連続講義で声が出 続けるかどうか不安になったので、直前まで迷って、今日の3限カオス講義を 休講にし、4限の熱力学講義だけする。(5/30に卒研研究室訪問ガイダンス でつぶれる予定になっていたところにカオス講義を無理やりいれて今日の分を 埋めあわせる。) 熱力学講義は、75分過ぎで声を出すのがかなり困難になり、 80分過ぎで声を出す限界がきた。(何とか講義の形にはなったが、いつもの迫 力はないよなぁ...。) カオス講義をやってしまうと、熱力学講義は講義に ならなかっただろうから、カオス講義を休講にしたのは正解だったと思う。
5/15 (木)
kISS前半: 松浦君のネットワークの不可逆性。10分版の説明として中途半端 に50分くらいの中身を駆け足で入れようとするので全体像も詳細も伝わらない。 10分版で研究の紹介をするなら、先週の量子スピン系のプレゼンのように、 核心部分を明確に伝える構成にすべきであろう。そもそも、何故に前半に登場 したのであろう? どう考えても後半の内容では?
KISS後半:林さんの粗視化による詳細つりあいの回復のレビューは、内容を知り すぎていることもあって、構成や説明にたくさん不満はあるが、時間をかけて丁寧 に準備したことはわかった。
1ヵ月前に(稲垣さんの書類から)はじまった申請書へのコメントと推薦書は、 (〆切の関係で)残すところ稲垣さんの書類だけになった。正直いって飽きて きたのだが、申請書を読みコメントを書く。
基礎科学科進学ガイダンスの後の「学生との歓談会」。宴会係として準備と片付け をしないといけないので、会にも参加し基礎科の説明をする。高い理念と独自の特 色をもっているが、学生がその理念に沿った形で内容を消化するのは大変だと思う。
5/14 (水)
カオス講義の準備:はねる球はあと1回でひと区切りの予定だったが、どうしても 構成が気にいらず、「脱線」を1回はさむことにした。horseshoe がつくる不変 集合に対するシンボル化を終えたので、次はhorseshoe に頼らない シンボル化 をしないといけない。そこをいきなり「適当に」やるのはおかしいので、はねる 球を離れた理想概念についての説明を1回とることにしたのだ。今までは、 はねる球という具体例を対象にしていたので、数学的な条件については シランプリできた。ところが、理想化を行うにはどうしても数学的な条件に ふれないといけない。これらは空でできるほど僕は消化していないので本を読む。
まず、非平衡統計や物理の力学系として有名なGaspard の本。ざっとみたときは、 辞書としては使えるかな、くらいの印象だったが、ちょっとまじめに読むと、 不満だらけだ。一般的なことを数学の本から抜粋して説明しつつ、その抜粋が 不完全で、論旨がとおらない箇所はあるし、そもそも全体の構成のバランスが しっくりこない。仕方ないので、数学者の本にうつる。Pesin の解説が手元に あったので読む。これは明晰でまとめ方もよくわかる。が、これを講義でやるのは 至難の技だまぁ。 青木・白岩著「力学系とエントロピー」をみる。この本、 4年のとき、証明に細かい文句たれながら途中まで精読して、途中で流したのだが、 今みるといい本だ。コンパクト距離空間の同相写像のつくる力学系に限定しているが、 self-contained に基礎的なことを丁寧に議論している。勿論、こんなことを 講義でやるわけにはいかない。
と、あれこれ悩みながら、とりあえず60分バージョンをつくる。双曲性と マルコフ分割に関して視覚的なイメージができて、それを踏まえた理想力学系 の感じがわかれば次回講義の目標達成なのだろうが、どうも不出来だなぁ。。 (その部分も例題でやればいいのだが、物理的によい例題が思い付かない....)
5/13 (火)
朝、典型的な「ちりもつもれば山となる仕事」がきていた。うーん、今週4ー5 時間つぶれる勘定か。(今年度の委員会仕事はここ数年で最小なので、ちりが積 もりにくいのは幸いだが。いらんこと書いたらまずいかな。)
拡張されたFDRに関して、地道に数値積分の評価を少し前進させる。この話し 「お、こんな関係式がなりたっているのか!」まではよかったが、なまじ厳 密解があるので、数値積分の精度をできる限り完璧にしようとして泥沼化して しまっている。積分に特異性があることに気がついて、数値積分の評価を最 初から丁寧にやりなおす路線ですすもうとしているが、日々の感動は薄い。 それでも今日は特異性を数値的に同定するメドがたったので少し嬉しい。 (最初の「お!」という一番おいしいところは林さんがもっていったので、 僕はこの仕事では、一回も感嘆の声をだしてない。今度の「おお!」は、 3桁なんてけちなことをいわず4、5、6桁とビシーと一致する数字列を みたときだろうな。 4桁目から食い違う可能性もあるが... 恐いなぁ。)
5/12 (月)
4月以降、カオス講義の準備に頭をとられたり、学振書類にコメントかきまくった り、という例年にないことが続いていることを(隠れた)言い訳にして、研究がほと んどできていない。ちょこちょこやってはいるが、小さい壁のところですぐとまって しまっている。 ちょっと気分が悪くなってきたので、空気をかえたい、と朝突然 決意した。昼から田崎さん、夕方から研究室訪問の学生がくる予定だし、申請書 に絡んだ話しは間欠的にあるだろう。しかし、今日は何が何でも前に進もう! FDT拡張に関して技術的なところでとまっているが、こんなものは集中力が あれば一日でかたつくはずでないのか。。。と、妙に気合い入りまくりで、 大学に着く。
結果、僅かな研究時間ではあったが、抜群の集中力を発揮し前にすすめた。(完全に かたがついたわけではない。) やはり、今までの生活では集中力が足りなかった、 ということであろう。
帰る間際、林さんの次回のKISS発表に関係した話しを聞き、帰りの電車の中で今まで まともに読んでなかった論文を読みはじめる。(詳細つりあいが破れている系を 遠くからみると詳細つりあいが回復するという話し。) 何がおこっているのか カラクリがわかれば楽しそうなので、寝る前に考えてみる。
5/11 (日)
朝、ファイルみっつ分の仕事を予定どうり4時間で終了。夕方、次回のカオス講義 の準備をしていたら、疲れがでてきたのか、寒暖の差にやられたのか、集中力をかき、 中途半端なところでうろうろし、方針もかたまらず。
5/10 (土)
松下さんの還暦記念講演会およびパーティー:
佐野さんの「あたらしい生物像をめざして」は、紹介した各テーマが自己完結的 にまとまりすぎているのが気にいらなくて、今の生物学の流れに対して何をもって どう対抗しようとしているのかわからない、という意地悪な質問をしてしまう。 (分子生物学はみんなやっているから... という「反」と今までの非平衡の蓄積 の延長ですすめる、というのりはおかしい。佐野さんとは個人的に話しを何度 かしているので、そののりを越える模索のことを色々と聞いていたのだけど、 そういう話しはまとまった形で話せないから、反主流と蓄積の延長というので まとめてしまったのだと思う。
甲斐さんの「植物への刺激/応答の計測」は、植物が害虫の天敵の誘引物質をだす という事実とそれにまつわる話しが面白かった。非線形ネタに落そうとするのは おいといて、科学として楽しい話しである。(後で甲斐さんにいくつか情報を聞 いた。京大でそれを専門にやっている人の話しを聞きたくなった。)
早川の「粉体物理の新展開」は、実にスマートな講演だったので、10年単位 でみたときに何がゴールだと思っているのか、という意地悪な質問をしてしまう。 今の時点で明確な答えがあるとは思っていないが、そういう問いに対してどう 答えるのを聞きたかった。(揺らぎの指数が理論的には臨界近傍でしか求まって いないことと実験との関係は?というまともな質問もした。これは松下さんの 講演にもつながったからよかったでしょう。)
松下さんの「パタン形成の物理」は、久ぶりにみたバクテリアの相図で、パタン 的には全然面白くない、殻にとじこもって成長しない相とぎりぎりDLA成長をは じめるところの差に生物的な問題設定ができるのでないかと思った。現象として 派手な同心円成長のところで、遺伝子解析との関係が云々といっていたけれど、 そういう視点でやるなら、まず、休と活の境を対象にすべきだと思う。というので、 その境のことを質問したが、そんなところに興味がないという感じで一蹴された。
パーティーで「赤いジャケットきて一番前に座っているのは松下さんの演出 かと思ったら.... 」というスピーチをされる方がいた。いつもの服で一番 前に座っていたのだが、よく考えると還暦記念講演会/パーティーに赤い ジャケットでいく、というのは、結構失礼なことだったかもしれない。 松下さんは笑って済ましてくれたけれど。
5/9 (金)
カオス講義:horseshoe がつくる不変集合がbinary両側無限列の集合と1:1対応 し、不変集合上のダイナミクスがbinary両側無限列のシフトでかける。カオスの 根幹部分に位置する命題だと思っている。(これから、任意周期の周期軌道や非加算 無限個の非周期軌道があることなどが直ちにわかるし、あとからでてくる軌道不安定 性やら不規則性やら確率過程との対応もベースはここにある。)
という素晴らしい講義のはずだったのに、どうも符号が違っていたようだ。講義 がおわって二人に指摘された。準備するときにちょっと違和感を覚えたので確認 したつもりが、見落とししてた。本質的ではないが恰好の悪い間違い方だった。
熱力学講義:定点観測のように毎年やっている講義だが、クラスの雰囲気が毎年 違っていて面白い。(講義中の下らない話しに、笑うだけでなく、妙に合いの手 が入るのは初めての経験だ。ふと、KISSの鳥の話しを思い出した。) 講義が 終ったあと、準静的過程とそうでない過程の差をどう感覚的に納得するか、 というのを数人で延々やっていた。素晴らしい。
林さんが学会で発表した内容を完璧にする作業が難航している。FDTの拡張から 決まる密度揺らぎの数値的な収束値をおさえてから、算数を考える拠点にしよう と思っていたのだが、どうも気分の悪い点が続出してきた。うーむ。
5/8 (木)
朝、グラフを眺めて考える。午後、KISS。夕方と夜、学振申請書へのコメント。 申請書はようやく山場を越えたかな。おっと肝心の推薦書のことを忘れていた。
ある書類を Word でだせ、という指令が、Word ファイルの添付とともにくる。 そもそもWordファイルの添付はとりだせないし、down-load 等でとりだせても Word を使うのはかなりの重労働なんだが。(頼むから誰か、Word --> Tex --> Word というソフトを開発しておくれ [<-- おかしいけど。] 根本的には、 Windows 支配をやめさせるよい手をうってくれ。どちらも自分ではできない。)
5/7 (水)
朝、カオス講義の準備:先を見越して数学的な準備をするのは講義の趣旨 でなかったことを思いだし、休日に考えた路線を訂正する。最初の山場を 迎えて、あれもこれもいいたいのだが、今週も、抑えに抑えて核心のひと つを丁寧にやるだけにする。
論文を改訂し、学振申請書へのコメントを書いていたら時間がすぎた。
途中グラフをみながら考える時間をとったがよい戦略がうかばず。
5/6 (火)
学振申請書たちにコメントをする。誰に何をいったのか混乱してきた。 推薦書をいじる。
電話にでたら、ちょっと時間を食う学内仕事がまいこんできた。
講義の準備やMDの準備や論文改訂が気になりながら、別件にとりかかる。
5/5 (月)
微熱はさがってくれない(温度目盛は昨日と同じ37.1をさしている)が、 測定しなければもはや微熱ではない、というへ理屈で長女とボーリングをする。
カオス講義の準備:やることはきまっているので前回までよりずっと楽だが、 数学へのふみこみ加減で悩んで時間をくっている。(概念的なことをある程度 いっておかないと後でこまるが、どこからどの程度いうべきか、参加者の顔 ぶれを頭にうかべて考えこむ。とりあえず最低限必要なのは、大学2年程度 の数学なんだが.....)
5/4 (日)
微熱はさがってくれないが、もうあがらないとふんで、休憩をいっぱいとりながら、 ファイル4つ分の仕事を終える。(どれも草稿段階。)
5/3 (土)
微熱。完全休養にする。
5/2 (金)
大学にはいったが、熱があがってきてしんどいので、休講にする。(ゆっくりした 会話はできるが、いつもの講義は絶対にできない。)
ある学生から、「線形非平衡領域では熱力学関係式の局所平衡を仮定するが、 同時に、そこでの統計分布は局所平衡分布からずれている。両者の整合性は如何に? またそのとき温度をどう考えるのか?」 という自然で鋭い質問がくる 。僕は考えたことがあったので、丁寧な返事を書いた。 こういう自然な質問を若い人からもらうと嬉しくなる。非平衡理論に興味がある 人は考えたい。[明示的に説明しいている本を僕は知らない。おかしいよなぁ。]
帰りの電車で、福島さんと一緒になり、色々な雑談をする。僕は、スピングラス については完全な耳学問でしかない(=決してほめられたことではないが)ので、 こうした雑談で得る部分は多い。過冷却液体のガラス化とスピングラス転移の 関係を1回系統的にあらうべきだと思った。
5/1 (木)
KISS: 鳥(おす)のさえずりの複雑化の実験(岡の谷さん)に関して、鳥(めす)の合いの 手とのマッチングによる淘汰がおこっているのでないか、という数理モデルの提案。 実験は(噂には聞いていたが)面白いし、モデルの振舞も悪くない。(モデルはもう ちょっと自然にシンプルにできるでないか、とコメントしたら、その路線で今やって いるらしい。) しかし、鳥(おす)のさえずりと鳥(めす)の合いの手とのマッチングが 淘汰をひきおこす、とは思えないのだけどなぁ。カップルになるにはそもそも別の 要因(喙とか、顔とか)があって、カップルになったあとに、その関係を持続させた いときに、さえずりとあいの手のマッチングがそこそこいいようになっているだけ でないのか? 人間でもそうでしょう? (本人は真面目に疑問を呈していたのだが、 何故か、皆笑っていた。)
ありゃ、風邪をひいたらしい。8時に布団に入り、あれこれ考える。 「流れ」にかんして偉そうなことをかきながら、自分も焦って 流れをみうしなっていたことにきづく。