4/30 (水)
あれ? 圧力場測定ルーチンにバグがあるなぁ。前はよかったから、周期境界 のせいだろうな。
あれ? 学振推薦書の項目が昨年までと違うなぁ。申請者の研究態度、研究能力 という項目と申請者の資質、将来性という項目が別にあるのか? どうかきわける のかな。
僕は、「流れ」とか「運」という言葉を普段からよくつかう。僕は今までは好運に めぐまれてきたが、好運とは、正念場・勝負どころ・賭けで「流れ」がうまいこと つかまってくれることだと思っている。勝負どころで流れをつかみそこねて失敗する ことは勿論あるが、そもそも、勝負どころを見逃してしまうとか、あるいは、勝負 どころ以外でやみくもに力をいれるとか、そういうことをしては、流れは掴めない のでないか、つまり、好運はやってこないのでないか、という、およそ科学者らし からぬことを信じている。(だから、ときおり「A君は流れを逃す選択をしたから、 彼はこの先うまくいかないだろう」と予言じみたことをいってしまう。今までは あたっているように思えるが、きっと、はずれた事例を忘れているせいだろう。)
学振PDの受け入れ先の選択やら、大学院の研究室の選択やら、(= 以上は僕はもうな いけど)、所属の選択やら、研究テーマの選択やら、という研究生活上では比較的大き なものから、明日の仕事や明日の研究で具体的に何をするか、という日々の選択 まで、勝負どころのタイミングを感じれて流れがつかまってくれることを祈っている。
僕が信じていることは、論理的なものとは思えないので、「具体的にどうすれば、 勝負どころのタイミングがわかって、流れをつかまえれるのですか?」と質問さ れると、どう答えていいのかわからない。大きい問題ほど、タイミングはふわふ わしているし、流れもよくみえないので、手をあわせる度合が大きくなる。ただ、 日々の仕事や研究では、ある程度意識的に、いいタイミングで流れをつかまえる ことができる気もする。そこを逃してしまうと、どうあがいてもろくなことには ならず、逆にそこさえばっちりおさえると意外にすんなりといくように思える。 どうなんだろうなぁ。
4/29 (火)
長らく閉店していた分子動力学を再開する。前にいじったのは2ヵ月前あたりで、 つけたしつけたしでプログラムを変えていったので、整理整頓もかねて、初心に かえり、基本形/平衡系 のプログラムからはじめる。まずは、エネルギー保存と 圧力場の均一性をたしかめることから...。 1週間のうちに、平衡系での状態方 程式と化学ポテンシャル測定の実装をやろう。(問題の熱伝導系は、まぁ、やり ながら考える。)
4/28 (月)
6時半おき。科研費交付申請書を手書きと切り貼りでだす。稲垣さんの学振申請書 にコメントをする。大槻君と先週のセミナーのおちについて話しをして、長期的な 研究計画のはなしをする。3年間の研究計画は、3年間で確実にできそうなことを書く のでなく、(運がよくて)3年のうちにできたら楽しいぞ、、と自分自身で思える ことを書くのがいいと思う。(3年間で絶対にできないことは書くのはだめだけど。)
講義を終えて部屋にきた田崎さんとカオスの話しなどをして、14:00から 小林さんとの「過冷却液体の実験」のinformal な話しに望む。ある波長で周期的な 空間的温度変化を過冷却液体に与えたときの、密度揺らぎの時間変化の測定を行う。 実験結果を虚心にみると、密度揺らぎにマイクロメーター以上の長さスケールがあ ることを示唆する、という信じがたい結果になっている。その実験結果のデータや そこにいたる詳細を丁寧にきくこと2時間半、僕は、その実験結果を説明する 案(描像)をもった。本当だったらちょっと面白い。だけど、その描像を理論的な 立場から検証するには面倒な計算がいる.... もうちょっと考えよう。
ちなみに、その実験結果は、何かしらの解釈がないととても認められない、と 評判がいまいち悪いそうだ。再現性のある結果であることに間違いなく、かつ、 実験設定の範囲で注意深くデータがとられていると思うから、その結果を 公にして、何かあるのかな? と問うのだって、立派な論文だと思う。 (だいたい見えた筋の上にちょっとしたものを付け加える実験より、そういうのが 面白い。) もちろん、変な結果をうみだす原因をつめることをやめてしまえば、 科学でなくなってしまう、のはいうまでもないが。
4/27 (日)
カオス講義の準備:はねる球のシンボル化のプログラムを書く。今年はじめに講義 の構想をねるとき、物理的な具体例に対してシンボル化を自分でやってみたいと 思った。シンボル化さえできれば、いわゆる「カオスの統計力学」も 一本の 時系列の不規則性も線形解析(Lyapunov解析)との関係も、それほど頭を悩まさなくて すむはずなので、間違ってなければ大きな区切りだ。
シンボル化とは、生成分割をつくることだが、非自明な例で自分でつくったことが なかったので、それに向けて試行錯誤をしていた。次の次の講義あたりに登場する が、はねる球の例題では (意味の説明ができる)13シンボルを使うことになる。 (ちなみに、マルコフ分割に近いが、厳密なマルコフ分割ではない。)
正直にいうと、はねる球で構成したと思っている生成分割は、数学的には完全では なく、近似でしかない可能性を残している (近似にすぎない、といい切っても いいかもしれない。数値的にはあまり影響はないのだが。) 非双曲点があるので、 えいやぁでやっている部分があるからである。このエイヤァをもうすこしきちん としようとすると、Grassberger -Kantz ('85) に自然にいきつくが、いずれにせよ、 そこの数学は、まだ僕は理解していない。 研究会の講演題目等の情報から想像 するに、九大数学の石井さんが最近このあたりをやっているような感じなので、 今度、じっくり聞いてみよう。
4/26 (土)
書類等2点。長女のパソコンをつかって、交付申請書をdown-load して、しあげ ようよう思ったが、やはり Word を使っていると苛立つばかりなのであきらめた。 月曜日の早朝に、大学で切り貼り作業を行うことにする。
4/25 (金)
カオス講義:horseshoe がつくる不変集合(= 写像で折り畳まれていく無限の帯び と逆写像で折り畳まれる無限の帯びの交わり)をつくるまで。実は、はねる球の horseshoe は、上がひらいている。horseshoe という言葉を出す前に「何にみえる か?」という質問をしたら、「かもめ」という素敵な答えがかえってきた。
熱力学講義: 田崎さんの忠告にしたがって、3限が終ったあとうがいをして、 3限と4限の合間に糖分入りのコーヒーとパンを食べる。そのせいか意識が とぶことはなかったが、疲れは明らかで、浮かれ気味で説明がはやくなりすぎる。 意識してブレーキをかけつつ、疲れをとばすようにしないといけないのかも しれない。バランスが難しい。
講義が終ったあと1時間弱くらい学生さんと雑談する。統計力学や熱力学の基礎的な 事柄について。学生さんの疑問はもっともなことが多く、本をみても疑問は全然解消 できない、と学生さんは嘆いていたが、そういうことをきちんと議論した本はないも のなぁ。折角、朝永さんの「物理学とは何だろうか」を読んで、そういう分野に興味 をもっても、それを深めていく題材がすくなすぎる。とりあえず、疑問に思うことを 自分なりに考えて、僕のところにくればいい、、とはいったけれど。
4/24 (木)
KISS 前半:enzyme activity の時間変化にみられる特異性を理解しようという PNAS論文の森田君による紹介。"memory landscape"という言葉はともかく、 実験は面白い。モデルの振舞の解釈は、池上さんがいってたのが正解だと思う。
KISS 後半:履歴依存破壊の中原実験に関する大槻君の発表。説明が丁寧で長すぎた きらいはあるが、プレゼンも研究の途中経過も素晴らしかった。機構特定に関する つめや、履歴依存破壊のモデルとしての妥当性や、モデルのもたらす現象の整理は まだ不十分だが、少しづつ、つぶしていけばよいだろう。
4/23 (水)
カオス講義の準備。不規則運動の理解にとって必要な基礎的なことを順に説明して いくだけで今週はいっぱいかな。(はねる球の "horseshoe" とそれからつくられる 不変集合を「具体的に」つくって、そこに埋め込まれている不規則運動を議論する。)
ネットワークが停止し、著しく作業効率がおちる。予定していたかなりの部分 ができなかった。
4/22 (火)
カオス講義の準備というか試行錯誤。少しみえてきた。先週末に考えていた今週の講義 構成は全部チャラにして、やりなおす方向で検討する。(だから今週もアニメはなし。)
科研費の交付申請書の〆切は来週月曜らしい。半日くらいでかけるだろうが、書く 時間が日曜くらいしかないのだけど... 朝の電車は自分の書類の手入れ。学振の 申請書へのコメントやら推薦書やらは来週からかなぁ。今月末に覚悟していた談話会は 来月だったので助かった。
4/21 (月)
田崎さんと熱伝導系の宿題の話しをする。(僕は手がとまっている。) 川崎さんが 研究室にこられたので話しをする。力学系の周期軌道展開にまつわる問題点と 山田さんの乱流統計の話しの理解にむけてなど。勉強にもなったし、川崎さんが 駒場に滞在する5月から楽しみだ。
4/20 (日)
ややフラフラしながら、自分の書類に手をいれる。日本語が下手で嫌になる。
4/19 (土)
朝からずっとカオス講義の準備のための試行錯誤。書いたプログラムは5つ。 うーむ。最初の佳境が近いので焦る。次回はこのあたりの問題意識をはっきり させるだけで時間が過ぎるだろうが、その次は「核心部分」に触れないとまず いよなぁ、、。[講義構成の具体的な話しはうまくいった段階でまとめてかく。 ... うまくいかなかったら書かない。] 焦りながらプログラムを書いて考えてい たせいか、夕方から体調不良になって、風呂にもはいらず寝る。
4/18 (金)
早朝から書類に手をいれる。
3限にカオスの講義;4限に熱力学の講義。死んだ。4限の熱力学は、自分でも何 をしゃべっているのかわからなくなって、しばし意識がとんだ。(異常にあつかった しな。) 1回目の今日はガイダンスみたいな話しだったので、それでも何とかつない だが、来週からは対策が必要かもしれない。3限のカオスは、今日のところは、 「あれ」で許して、というあたり。来週が重い。あそこからどう展開できるのか、 自分でもまだわからない。(アイデアは2、3あるのだけど、うまくいくか どうかがやってみないとわからない。)
4/17 (木)
朝、はねる球のとあるデータをじーとみながら、来週の講義構成を考える。 なんとなく方針はみえてきたが、具体的にどうするのだろう... という ところで時間ぎれ。(ゴールを知らずにこのような作業をしていたら、むちゃくちゃ 興奮して、睡眠不足の連発だったに違いない。ゴールを知っていることもあるし、 講義の構成という冷静な部分があるので、強い興奮はないけれど。)
KISS: 前半、FNMRIをつかった認知実験の PNAS 論文の紹介。設定はそこそこ 面白いが、主張になっていないデータだと思う。後半、分化のモデルにむけて。 実験の面白さはわかるが、モデル化の指針と方向は最後まで見えないままだった。
ある院生に申請書の意見をいったり、ある院生と1年スケールの研究計画の話しを したり、ある院生と研究の議論をしたり、ある院生と明日の講義の話しをしたり....。 ホテルで書類に手をいれるつもりが、まだ疲れがとれていないのか、早々に 寝てしまった。
4/16 (水)
睡眠を多めにとって疲れをとった。そのせいか、生産的な日だった。
カオス講義:なんとか今週分のメドがたった。問題設定をきちんとして、その設定の もとで自然にすすむ、という路線どうりになっていると思う。ただし、自然な道 の探索の試行錯誤にかなりの時間をくってしまった。研究の疑似体験みたいな側面も あるので、楽しい部分もあるが、週1回というのはストレスきつい。(力学や電磁気 や統計や連続体の講義準備は原則的には1日前だけで、あまり時間をかけていない。 熱力学は、初期のころ、膨大な時間をかけて準備したが、今はさすがにゼロ。) カオス講義には力んでいるのだろう。もう来週分の構想を悩みはじめている。
先週金曜日の数値計算上の不審な点について、簡単な例題をつくって算数として 正しく理解することを試みる。だいたい見えたので、一挙に清書する (紙の 裏だが)。将来、物理数学の講義か演習を担当するときに使えそうな例題だ。
夕方、議事録をかいたり、書類をかいたり。
4/15 (火)
「はねる玉」をいじくる。初心にかえって、虚心に観察し、自問し、考える。 うむ、すこしみえてきた。もうひとおし、これさえわかれば、今週分は OKだと思うが、まだみえない。
会議やら何やらでおちつかないし、研究も書類も気にはなっている。
4/14 (月)
朝、カオス講義の準備。昼ごろ色々な人と話しをして、14:00からフシキ さんと田崎さんと熱伝導系のはなし。たしか1月あたりに派手に現象をみせる方 に走るか、(多少物理的条件に不安を残しても)より簡単な系にいくかの選択を まよったのち、派手路線に移行したのだった。今日の話しでは、(デモも おわったことだし)、簡単な系にいく路線で再スタートをきってみるかぁ.. という感じでおわった。議論がつづいていたが、中江君の送別会のために打ち切り。
4/13 (日)
夢の中で次回のカオス講義をやっていた。明らかに重圧になっているので、次回の 講義分だけでもさっさと概要を抑えるべきなんだが、今日草稿をしあげる予定にし ていた書類を書く。一日ずっとがんばって草稿終了。次数制限がなかったので たっぷり書かせてもらった。電車やあいている時間で推敲・改訂作業をすれば、 なんとか間に合うかな。
4/12 (土)
書類かき。次数制限がないので膨れに膨れて終りがみえてこない。明日までに 草稿を仕上げないと日程的にやばいのだが。
カオス講義の補足:講義中にもいったけれど、高塚研や金子研や佐々研のM2以上 の人が講義にでる価値はたぶんない。道具としてはよくしっている(だろう)諸量に 到達するのが精いっぱいだろうし、もっとも難しいだろうランダムネスに関する 部分も公開されている講義ノート以上のことはない。ただし、カオスを普段から 使ったりみたり聞いたりしているけれど、初心にかえってゼロから理解の再構成 をしたい、という僕がこの講義に対して望むのと同じ動機をもっているなら、 少しは価値があるかもしれない。
また、昨日のガイダンスで、現象 --> 測定/解析 --> 概念化ということを強調した けれど、これは、これもカオス/あれもカオスと現象をみせまくる、という話しでは 決してない。(舌足らずだったかな。カオス病とかなんとか遊びで喋った部分に 混じってしまったかもしれない。) 例えば、既に予告した来週からの お題「はねる玉」だけで、少くとも3週間もたせるつもり。某さんのweb 日記 にある 「(この簡単な現象で)何を示そうとされているのか?」という疑問は もっともだし、そもそも僕自身が何をしようかまだ悩んでいるので、 胃がいたいのだ。
別の某さんのweb日記に「外国のTVショーのような...」という昨日の講義評が あったが、2回目以降は「NHKニュースのような...」になりかねない。4月は 時間的に苦しいからなぁ。3月には十分な時間があったのだから、言い訳できないが。
4/11 (金)
あれれ、今年の熱力学の講義はどこでやるんだっけ? 紙がみあたらないので、 教務に電話する。「僕はどこで講義するのでしょうか?」 手帳に場所を記入して、 段々気合いがはいってきたころ、教務から電話がかかってくる。 「あのー、今日は休講ですよ。」 カオスの講義はあるようなので、そっち だけにむけて気合いをいれなおそう。気合いをいれすぎて空回り...ということに 全然懲りていない。
カオス講義:ガイダンス。講義の基本方針「もし、君が僕がカオスをしらないで この現象にであったら.....」の提示まで。ほぼ予定どうり講義開始70分後あたり にこのフレーズをだす。
林さんの学会発表のつめ: 数値的な証拠がためがいるのだが、(ほんの僅かに) 何やら妙な振舞があるとのことなので僕も計算してみる。たしかにおかしいところ があるのは納得した。面白くはないが、これをつぶさないといけないので作戦会議。
4/10 (木)
明日のカオスの講義の準備。明日はガイダンスだけ。蝶々がはばたいたら 天気予報がどうしたとか、という(教養のどこかの講義でやっているような) ことはいわない。カオスが僕にどのようなインパクトを与えたか、という ことを正直に話しつつ、講義の基本路線を紹介するだけで時間ぎれであろう。 (2回目以降に関して依然手つかずなので、かなりの重圧を感じているのだけど。)
4/9 (水)
色々と苦しいのだが、とにかく前にすすむ。
ノートを書いていたら、脱線して帰ってこれなかった。(定常系間遷移に拡張された) エントロピー生成から(定常状態の)状態量を定義する、という危ない路線でも今の 場合は(結果的には)いけているということになっているのか...
うう。理由がよくわからないし、どうみても汎用性がある話しではない。そりゃ 当然で、かってなモデルでそんなことが成り立ってしまえば、物理でない。だから 理由を見出さないといけないのだが... それにしても、モデル研究の位置付けが 難しい。普遍性が確立するまえのモデル研究は、博打の要素がどうしてもつく。 (Ising なんていう冗談みたいな玩具が、臨界現象に関してあれほどの地位を 確立すると、誰が思っただろうか。) 一般的なことを考えれば考えるほど、 実験との対応を見ないと何もわからんなぁ、ということに落ち着いてしまう。 今年度の課題は「実験」なので、5月に京都(原田君のところ)に殴りこむか....
4/8 (火)
講義でやるアニメの準備を試みるも、整理がわるいので発掘するのに膨大な 時間がかかった。
セミナー(粘菌振動子):パタン遷移の問題はたしかに面白いが、のりてきには 10年以上前にピークがあるようなものかもしれない。(ただし、遍歴現象に ついてはあまり理解がすすんでいないので今でも課題になりえるが。) 対称性によるパタンの分類は、太古の話しかぁ? とおもっていたら、 最後の方はすぐには解釈できない実験データがあるようだった。しかし、 丁寧にデータをとったら僕がセミナーの場所でいったつまらない 標準的な話しになっているのでないか... と想像しているけど。
基礎科学科進学者歓迎会。
4/7 (月)
カオスの講義関係で大量に論文をうちだすも、方針が以前さだまらず。とりあえず、 やることを書き出していく。
学会発表のつめをどうするかという話し。
4/6 (日)
定常系間遷移のエントロピー生成と揺らぎ: 平衡の場合の証明を素直に定常系に 拡張したものと学会直前に林さんが数値計算でみいだしたものとの間のギャップが 埋まらない。(微妙に似た式なんだが。) 一旦ギブアップして、この件に関する ノートを書くことにしよう。
カオス講義:ちょっと数学の部分に踏むこめば、数コマくらいはすぐにとぶし、 (それなりに)明晰な展開はできるのと思うのだが、数学の部分というのは、 カオスとして感動的な部分でない。また、写像から入るのは説明がしやすく カオスや周辺事項の説明もしやすいが、どうも嫌いだ。(だから、coupled map も嫌い。遊んだけど。) 具体的な現象からだんだん数学化していく構成を考えて いるのだが、講義としてうまくいきそうな例題の選択がきまらない。 参考にしたい本もないのもつらい。ふりかえれば、物理学者がカオスをテーマに 論文をかきはじめたとき、数学の方はもう骨格ができていた。だから、 数学以外の自然科学がカオスを語るとき、どうも数学の翻訳みたいになってしまう から迫力がないのだよな。地学のローレンツは例外で、 その論文だけは数学にまけない迫力があるし、感動的だと思う。
4/5 (土)
2泊3日の休暇からかえる。(家族旅行なので)観光やらレジャーなどを組み込む ので、2泊3日ではせわしいし、完全休養というわけにはいかないし。
ひっかかっていた細かい部分を考える。一応の結論はでたつもりで、エントロピー 生成に関して、(揺らぎとの関係についてちゃんと証明できる)平衡の場合でも ズボラな計算方法はない。非平衡(高温極限)の場合は、DLS解があるので、YES/NO を数学的に議論する道があるが、有限温度の場合が苦しくなってしまった。 とりあえず高温極限の場合を確実におさえよう。
来週から講義がはじまる。今年はじめてやるカオスの講義の準備が心に重くのしか かる。まだ準備はゼロ。4月は他にもイベントが色々あるしなぁ。
4/2 (水)
学会での僕の発表は、(標準的な)連続場記述では絶対に説明できないことを印象深く みせることだけに焦点をあてた。非平衡格子気体では、熱力学の拡張を介して、 いままでみえなかった関係がみえてきた (林さんの昨秋の発表と今回の発表) のだから、そろそろ誰か実験を真剣に考えようよ、という主張をするために (易しい)数値実験のデモをおこなった。
もちろん、これが熱流誘起浸透圧のデモだとは断言はできない。板近傍の複雑な 理由によるものかもしれないし、熱流の非線形オーダーはいろいろあるから.. という個別論にとどまるかもしれない。しかし、いずれにせよ、局所平衡の破れを 0次オーダーとする現象を明示的にみせれたことには成功したと思う。
SSTとしては、密度ギャップと浸透圧の間の定量的関係をおさえないと何もいえない。 それには数値実験そのものもプロ化しないといけない。伊藤研には随分昔から いっているし、いそべさんには今回聞きにきてもらって、夏にセミナーでしゃべり にいくのだが、今回の講演をきいたある人から数値計算の協力の可能性を具体的に もうしでてくれた。実現するかどうかは近日中に打合せをしながら考えることに なるが、楽しいことだ。
さてさて、昨日ミスをみつけた計算はまだうまくいかない。これはそもそも 学会期間中に考える宿題の最初の問いで、学会前夜OHP書きのあと寝るまでの 2時間でやっつけるはずだったのものだ。(林さんの講演に対する湯川さんの 質問に林さんがもごもごしていたのは、この筋書きが大いに狂ったことも 関係する。) 今日も時間の合間にやっていたが、うまくいかない。 絶対に成り立つ式の確認ができない、というどあほな状況なので、さすがに 苛々してきた。ありゃ.. 林さんが打開しつつある?
明日から2泊3日の温泉にいって、脳味噌をレフレッシュしてこよう。
4/1 (火)
学会中、抱えていた宿題がまるでできず、おそろしく初歩的なところでとまっていた のだが、やっと原因がわかった。なんでこんなことが長時間わからなかったのか。 休養が必要なのかもしれない。
履歴依存破壊 (中原実験) : 大槻君は現象を再現するだけなら既にできているのだが、 再現するだけというのは任意性がありすぎるので、機構の特定に関連する話しを する。僕は基本的には大槻君のプランに意見をいうだけだが、もうゴールは 近い気がする。(その機構が正解かどうかは実験で決めるしかないが... )
Brownian motor (原田実験) : (実験として理論として)何をすれば我々のめざして いる体系と関係してくるか、という話しを林さんとする。今日の議論でリード したのは林さんであった。嬉しいことではあるが、自分の脳味噌が弱っている 気もする。
3/28 (金) 〜 3/31 (月)
学会。印象にのこったものをいくつかメモしておく。
原田君のlaser trap をつかったBrownian motor の実験:非平衡定常系を つくったあとで、(定常系をつくるのとは)別の外場をかけてその応答をみて、 揺らぎとの関係を探索しようとする。平衡(近傍)ならEinstein関係式として しられているものの定常系version。 非平衡系で動いたとか模様ができたとか 分離したとかでなく、未知の関係式(法則)を探索しようとする動機は、僕と 共通するものでもあり、かつ、そういう動機に根ざした実験的研究が若手から はじまっていることに感銘をうけた。もちろん、生易しいものでなく、 現時点では定性的なものにとどまっているが、その路線の実験を積極的に生かす 道をかんがえはじめる。
宮崎さんの 過冷却液体のfluctuating hydrodynamics + 非平衡条件 + MCT: 軟らかくいえば、ガラス化にともなう降伏応力発生の理論である。(宮崎さん は慎重なので、そこまではいいきっていない。) ガラス化にともなう降伏応力 の発生には興味をもっていたが、それを愚直にせめれる数少ない道 (が、うまくいかなかったらつまらない計算だけが残る危険性がある道)だと思って いた方針をすすめることによって、その結果に到達していた。MCT を使う時点で どうしても計算の海にはいってしまうが、彼の成功は、それをもっと簡単に議論 できる可能性を示していると思う。
田中豊一さんが最後にやろうとしたことをはじめてきいた。ゲルをつかって 生体機能の研究にきりこもうとするのだが、アイデアの非凡さとそのアイデアに もとづいて地道な進歩があったことに驚いた。ひとつの研究で成功をおさめても その拡張路線ですすむのでなく、ゲルという題材はそのままに、より大きな スケールの研究に賭けるのは、(僕が思っている)研究者本来の姿である。
苦言:ポスターセッションが盛り上がっているのは結構だが、何かおかしくないか? 個別的な議論ややりとりで理解が深まるのはたしかにあるが、あまりにも内向き指向が 大きくなりすぎている気がする。10分で自分の研究を(あまり背景を共有できてい ない)他人に伝えれることの難しさは、(僕も失敗をくりかえしてきたので)痛いほど わかるが、そういうことをやっていかないと、自分本位の研究で自己満足化して しまい、客観的な理解を得ようとする努力がおろそかになってしまう。人間とは 弱いものだからなぁ。