1/31(水)
川崎恭治さんがボルツマン賞をもらうことになった。全ての賞が実体を反映している わけではないし、賞をとったこと自体がすばらしいのではない、のはわかっている が、素直にうれしく思う。
賞の対象は、30年前のモード結合理論である。この難解な理論の位置づけについ て、書きたいこともある。が、それはさておき、僕が川崎さんを素晴らしいと思って いるのは、年齢を重ねるほどに、軟らかくなっている様である。例えば、近年、ガラ ス転移について、理論的なアプローチを模索されているが、最近の論文も、博士過程 の院生が、困って、困って、困って、うった手、というのがにじみでる(刺激的な)論 文である。この論文が、未来に残るかどうかは、いくつかの検討をしないと、わから ない。しかし、僕は、そういう論文が好きだ。
僕は、学振を当時九大の川崎さんのところにだしていたので、助手職がきまらな ければ、川崎さんのところにいった可能性もあった。川崎さんの助手だった、 小貫さん、太田さん、関本さん、川勝さんや学生だった早川のように、川崎さん の近くにいた人は、大変だった、という話しはよくきくが、僕が川崎さんとこに いっていたらどうなってたんだろう。
1/30(火)
数件の(大学運営上の)諸事が平行してあってパンク寸前。やることを手帳に 書いているけれども、書き忘れなどもあって、次々と忘れていたものが発覚 してくる。まだ何か忘れてるかな。
そもそも並列作業は苦手なので、学生時代も基本的には講義を捨てて、自分の ペースで勉強した。だから、熱力学をはじめ、とれなかった単位も多いが。 (単位をおとすようだから、凝固点移動を間違えた?)
気分もよろしくないので、コーヒーを飲んで。。。部屋から脱出しよう。明日は、 朝早いし。.... と思ったが。あぁあぁ。また、事務上のトラブル発生。
佐藤勝彦氏からおくられてきたノートの結果が気になっているが、詳細はまだ 検討していない。2年くらい悩んでいたことに決着か?
1/28(日)
朝になっても水はでていない。困った、困った、とぼやいていると、 9時過ぎになおった。
SST第2法則から出発し、「何も考えずに」、変分原理と相平衡条件を書き下して、 凝固点移動を計算をすると、凝固点はさがる、という結果になった。(ノートまと める。)
が、「考えると」、納得できず、混乱している。(「考えると」、凝固点があがる、 方向にひきずられるような。) 混乱の原因は、、、やっとわかってきた、、かな?
1/27(土)
ばたばたしているうちに、昨年投稿した論文3つのreferee reportが全部かえって きている。全部、split decision. negative judgeの方は、誤読されている部分が あるのは確かだが、refereeは「なんでもわかる人」ではないのだから、よくあるこ と。
Hatano-Sasa(cond-mat/0010405) は、はたのが改訂/返答の案をつくってくれたので、 最初の応答がすんだが、後のふたつは、2月中旬以降に対応する予定。(憂鬱だな。)
どっちにしても、それらの論文は、「それに続くもの」がないとわかりにくいのは 確かである。positive な評価をしたrefereeたちも、そこを推測して、プラスalpha の価値を認めているようだ。こういう部分の価値判断というのは難しい。
勿論、最終的には、誰もがわかるようなところにまで話しを発展させるべきだし、 数年後までには、まとまったものにするつもりではあるけど。
さて、そのうちのひとつのSST. 1/8のノートおよびそれにひきつづく定符合性 の議論にbugがある、というのがもっともらしいかもしれない。単純に、SSTの第2 法則に従う自由エネルギーと相平衡の議論のときにつかった自由エネルギーを混乱 して使ったため、符合が反対にでたかな? (というスケッチはつくった。) 慎重に検討中だが、、、熱力学って難しいなぁ。。まったく。
千葉も大雪。停電数回。あ、水もとまった。
1/26(金)
講義と書類のあいまに、膨大な数のe-mailのやりとり。
自分のために状況を整理する。まず、大野論文の他にふたつの知見がある。
(1) 非平衡定常状態をマルコフ確率過程で記述するなら、形式的には、定常状態 熱力学(SST)はつくれる。とくに、ランジュバン系の場合には、維持発熱も非平衡 エントロピーもミクロな対応物を与えることができて、もっともな解釈もつけれる (これが、Hatano-Sasa,cond-mat/0010405)。
(2) ずり系において、定常状態熱力学がきちんとあるならば、「凝固点はずり によって上昇する。」これは、僕の1/8のノート。(* 欲しい人は連絡を。) 田崎さんが今日そのチェックをして、固液転移に関しては、結果はよいらしい。 (気液転移は、補正がつくらしいが。)
(1)については、論文の書き方が親切でないので、維持発熱がピンとこない、と いうこともあるが、これは、説明すればわかってもらえる、と思っている。(ただし、 ランジュバン系はやはり特殊だから、なじみがないと感覚までわからない かも しれない。僕が、Spohn のtext の Lattice gas がピンとこないのと同じ?)
(2)の直観的におかしさをどう考えるのか、というのがもっとシーリアス。 田崎さんは、「平衡熱力学と矛盾するのでうけいれられないので、SSTは崩壊だ。」 と1/26の日記に書いているが、平衡熱力学と論理的に矛盾するというもの ではない。しかし、おかしいのは事実だから、どうなっているのか、きちんとした 説明が必要である。
その一方で、ずり系に関して、ミクロモデルからのSSTの導出をやれば説得力を ます。変分原理もふくめて。これは、1/8から未完と書きつづけている、 ノートを完成させることに他ならず、2月中にはなんとかしたい。そうすれば、 SSTは崩壊だ、とはならない。できるはず。
1/25(木)
昨日の仕事は、田崎さんの1/24の日記に書いてあるような再構成という大プラン でなく、大野論文の揺らぎに関する結果を自分なりに確認するのが目的だった。で、 ずり系の場合、平衡に近ければ、大野論文の結果を納得した。つまり、SSTにアイ ンシュタインの揺らぎの理論を適用すると、オンサーガー理論の結果がでる。 (ただし、色々と細かいことが未完なのと、条件がいくつかいるのと、少し繁雑な 議論なので、もう少しクリアーなものにしないといけん。) ずり系のSST第2法則の ミクロモデルからの導出も(方針はわかっているが)未完だし、未完ノートがたまって いく。今日は、てきぱきとたくさんの(研究以外の)仕事をこなす(予定)。
ずりによって凝固点が上昇する、というのは、純粋にSSTだけででるようだ。僕は、 SSTで凝固点移動の式をだして、符合を統計力学経由で導出していたが、その符合は、 大野さんが3年前にいわれていたように、変分原理から確定する。(田崎さんが昨日 3行メモをおくってくれた。)
しかし、直観的に、納得していない。変な気がしてしかたない。
1/24(水)
ずり系の定常状態熱力学:佐々真一著、熱力学入門 (共立出版)のレベルで、 ゆるされる操作/状態量/相加性/示量性/変分原理を具体的に丁寧に書く。 その後、揺らぎの理論をきちんと書く(予定)。第2法則 --> 変分原理は、 論理的には直接的ではない、と思う。大野さん の論文も誤解を招くし、フェルミの熱力学の教科書(およびそれにのっとった膨大な 教科書)の記述は、混乱のもとだと思う。
他人の日記をみると、田崎さん、はたの、矢熊君、林さんがSSTについて書いている。 (矢熊君は面白そうな研究をしているので一度話しを聞きたいが、じつは、本人を認 識できていない。すいません。論文ができたら下さい。) 静かなブームだな。 (外国ではやって骨格部分をやりつくされたのちに、誰かが日本に輸入して、 東京ではやるという、よくあるパタンよりはいいけど。)
1/23(火)
戸田山和久著「論理学をつくる」 (名古屋大学出版会) が生協に積んであった。 ぱらぱらみたら、面白かったので、買ってしまった。ちょっと重たいけど、し ばらくは電車の友にしよう。論理学の本は、何冊かもっている(はずだ)けど、 消化不良のままなので、どこまでいけるか楽しみだな。
論理学の体系は、自然言語や自然認識(計算)から抽象された構造だろうけれども、 その構造そのものだけでなく、そうした構造がどのようにでてきたのか、という ことにもっと関心が ある。例えば、自然言語でなくても、「音」なり「信号」なりが文節化され、そこ に、論理とよばれている構造が生じたのだろう。。。。と、多分、多くの人が興味 をもっているだろうし、そういう単純な想像は誰もができる。問題はその次である。 物理や化学の法則から、論理やら計算やらの世界にどうやってつないでいいのか。 それを研究するためにどこからどのように考えるかが簡単でない。 僕にとっては、 力学系から熱力学へ;粒の力と運動からレオロジーへ;物理/化学から論理/計算 へは、似たような問題意識なのかもしれない。だから、論理/計算は勉強はするに しても、そこから研究にはいっていくのは、ぼくのやりたいことではない。
お? computing with cells and atomsという本があるなぁ。とりあえず、注文しよう。
1/22(月)
今日、予定していた様々な所用は、昼間ずっと格闘して、残すところ、明日の講義 の準備だけ。(18時現在。) 研究するときには、頭を抱えこんだり、眠ったり、 歩きまわったりするのだが、そういう生活と正反対で、てきぱきと書類をしあげて いった。今月は、そういう充実感溢れる日々が多いなぁ。
寝る前の2時間くらいは、そんな生活に抵抗しておこう。
あ、そうだ。基研研究会「非平衡系の新局面 -- 運動、機能、構造 --」は 6月4日(月)から6月6日(水)までの確定。
1/21(日)
6時におきて千葉をでて、センタ試験の裏方業務で終日過ごす。業務の合間に、 シンポジウムの要旨の推敲をするが、なかなか構成がきまらない。大野さんの 定常状態熱力学(SST)の講演をうけて僕が喋るので、ミクロな動力学からSSTを どう考えるか、を出発点にして、でもいきなりでは手がかりがないから、ハミ ルトン系での試行錯誤が不思議とうまくいって、それを踏まえてSSTに戻る、と いう実際の個人史の順序に近い構成にした。(もちろん、ハミルトン系いれなく ても、Jarzynski等式から直接SSTにいくのは、形式的レベルでは、わかってし まえば簡単ではある。形式以外の部分については、まだ浅いが。)
問題意識と戦略のあとは、議論の前提と現状の到達点と問題点を整理すれば、 40分でも足らないくらいかもしれない。これくらいの時間の発表って失敗 ばかりだから、今度は成功したいな。
1/20(土)
午前中、書類書き。午後から、シンポジウムの要旨書き。明日は、一日、公務員として の仕事があるので、今日、草稿を仕上げないと間に合わない。さて、どうすべぇ。
1/19(金)
3月の物理学会で、「熱力学第2法則をめぐる新しい展開」とするシンポジウムが ある。その要旨の〆切が近いので、他の発表者の大野さん、田崎さんと内容に関す る議論の機会をもった。定常状態熱力学の現状を整理するだけで、時間が過ぎてし まった。
大野さんの定常状態熱力学は、20世紀の非平衡統計を根本から書きなおし、かつ、 (定性的に新しい次元の)予言ができる、、、可能性がある。が、まだ発展途上なの で、「可能性」の程度が、参加者にまったく伝わらないこともありえる。実際、5 年前にはじめてその構想を聞いたとき、理論の骨格は全く見えなかった。
この5年の間に、僕自身、熱力学を徹底的に復習し、非平衡論を復習し、ハミルトン 系のカオス固有の量から熱力学を構築することがほぼできるようになった。それらを 踏まえて、やっと、(かなり広いクラスの)ミクロモデルから定常状態熱力学を議論 できるようになってきた、と思う。例えば、この1ヵ月の宿題の結果として、「凝固点 はずりによって必ずあがる」というのが結論として導かれる(はず)。(1日あれば、多 分、書けるだろう未完のノートの内容も含む。ただし、物理的にも自然だ! というと ころまでの検討は終っていない。)
まだ、理論として、すっきりしていないところは多々ある。とくに、標準的な 線形非平衡統計との関係は、「すぱっ」といくはずなのに、僕には、未熟なま まなのように思える。これくらいは、さっさとやらないと。。。。(というても、 頭がまわってくれないと何とも困る。このまま、脳味噌が硬化したまま動いて くれないと、、、などは滅多に思わないのだが、、、考えると結構な恐怖だな。 科学者の場合、肉体年齢が高くなっても脳味噌が軟らかい人の例をしっている から、プロ野球のように、36歳ともなるとそろそろ限界で...ということも ないのだろう、と信じたい。)
1/18(木)
京都の基研に、研究会の申請にいってきた。6月上旬に、「非平衡系の新局面 -- 運動、機能、構造 --」という1回かぎりで完全公開/自由参加の研究会をやる ことがほぼ確実になった。正式日程がきまったりweb page ができたら、ここでも 知らせます。僕の日記を読んでいる人は、日記の内容が内容だから、おそらく限 られた人だと思うけど、伝染していって多くの人に情報がいきわたればいいかな。
やるからには、学問的に刺激あるものにしたい。しかし、何が刺激になるか、とい うのは、人によって違うので、難しい部分もある。いずれにせよ、そのための工夫 は、世話人グループを中心にして議論をすすめていくことになる。事務的には、し んどい部分はあるのだが、ただでは転ばん、つもり。
新幹線の中で、粉の静力学をやっていたが、ばしっといかない。何か自明なことを 堂々めぐりしているだけなような気もする。
1/16(火)
粉の静力学:休憩モードだったのだが、田崎さんの進展ぶりをみて、少し再開。 (競争しているわけではないんだが。) 都合がいいのか悪いのか、今日はずっと 風邪気味で、予定していた仕事を先送りにすることにしたので、夕方から少し 時間をとることにした。
頭がまわれば、2時間もあればおわるような課題をやろうとしたのだが、ちっとも まわらない。
ずり+相転移の話しは、たぶん、あと一日で、パートII(統計力学的考察でわかるこ と)を書けるところまできているはずだが。その一日がとれない。勿論、他の原稿や ノートは全く書けていない。
風邪が悪化気味。明日、D論審査ふたつで、木曜日は京都なので、やばい。 今日は、何もせずに早く寝よう。
1/14(日)
ニンテン堂のゲームソフトに占いがあって、名前と生年月日と愛称と血液型を 入力すると、その人にぴったりの職業を教えてくれるものがある。娘がそれで 遊んでいて、僕のデータを入力すると、、、「あなたにぴったりの職業は、 科学者。目先の成果をだすことにあせりながら、ノーベル賞をめざしてくだ さい。」となった。。。。笑ってしまった。
ゲームソフトにあてられるくらいに意外性のない人生を歩んでいるのか。 まぁ、そうなんかな。(しかし、親族に科学者がいるわけでもなく、いまの 職場にいるのも、偶発的な要因がかなりかさなった結果だと思うが。)
疲れはてて、体も頭も動かないので、研究以外のことを書いてしまった。 (研究以外のことは書かないようにしようと思っていたのだが。)
1/11(木)
那須野さんの集中講義。履歴に依存する部分を粉の配置に帰するのか、配置 を固定した上での応力に帰するのか、でずいぶんと考え方が違うように思う。 連続体記述がありえる、という立場では、配置の履歴依存性はあとから考え る方が自然だと思う。理論がきちんと完成しないと説得力はないけれども。
1/10(水)
田崎さんが粉の静力学を進展させている。11月にやっていた粉の静力学の設定 では、欲しいことの数理表現までいきつくような気がする。勿論、この問題設定 は、極端な簡単化をやっているのは承知している。しかし、簡単な例で本質的な ものを抽出できることもよくしっている。一旦、核心部分を抽出すれば、あとは、 応用として展開できる。時代がかわっても「物理学」のそういう側面に変化はない。
1/9(火)
ずり+相転移:ややミクロな立場から考えようと動力学モデルによる考察を やっていて混乱してしまった。ううむ。形式的に、ミクロから熱力学関数を つくれるようにはなってきたが、物理的なことはほとんど理解できていない ような気がする。
1/8(月)
ずり+相転移に関して、ずりによる転移温度移動の定常状態熱力学による 考察のノートを書いた。自信はない。動力学にもとづく定常状態熱力学の 構成や非平衡統計的考察は未完。(スケッチはあるのだけど、まとまらない。)
1/6(土)
正月に、量子タタイ系のある種の安定性に関する宮寺君のD論をひととおり読んだ。 彼の動機と構想と大まかな流れは理解したつもりだけど、詳細はまだしっくりこな い。大いに興味あるテーマなので、ちょっとしつこく考えようと思っている。この 機会に勉強すべぇ、とKoma-Tasaki論文を読む。対称性の破れの深さを知った。
田崎さんが、「雑感」で粉の静力学をやっている。僕は、「くりこみ(的アプロー チ)」は2回挑戦してこけ、自分がきちんとわかっていない、ということだけはわ かった。なんとなく落ち着かなくなって、久々にピラミッドの絵を書いて見る。 うーむ。
色々な事情で、年明け早々から忙しい。おそらく、3月上旬くらいまでは、目前 のことを処理するので精いっぱいだろうな。