1月31日 (土)
境界条件駆動型非平衡系での Green-Kubo の(もっとも簡単な)導出を考える。 あれ? うーん?
1月30日 (金)
本郷に修論審査にでかけたついでに、佐野さんと村山さんに非平衡定常系の 新しい理解をめざした実験装置(その1)をみせてもらう。先は長い気もするが、 はじまりつつあるのは嬉しい。好きかってなことをいい、次のことなどを話す。
1月29日 (木)
学部が金曜、大学院が木曜という両方の日常スケジュールが流れる。その木曜の 部のKISS 前半で、「structured time series ...?」だっけか、小松崎さんの 集中講義で紹介されたたんぱくの1分子測定の不思議な時系列に関する実験 報告(サイエンス)に関して、石原氏が簡単な解釈を与える。ほう、正解に思える。 (その場でもいったけれど、できるだけ簡単なモデルをつくって、公にした方が いいと思う。)
多少咳こんでいるので、はやめに帰宅する。最低限の宿題をこなす だけでおしまい。
夢:おたまじゃくしの群れをみながら、説明をきいている。「昔は、揺らぎの スペクトルをとるくらいしかできなかったんですよ。今では、この群れの 特徴づけまで大きな理論に入ってしまうのだからすごいもんです。」 僕は相当の年齢になっている様子である。非常に満足そうにうなづく。 突然、見ているおたまじゃくしがみるみるうちに蛙になって 飛び跳ねていった。「これは理論の想定外だった....」
ここで目が醒めた。色々なことを解釈してしまったが、まぁ、そういうことか。
1月26日 (月) 〜1月28日 (水)
3日間の睡眠時間の総和は10(=3+5+2)時間。 ここまで過酷なのは久々だな。
小松崎さんの集中講義: 状態遷移理論の力学系版、 saddle point でのnormal form theory、主成分解析によるデータ処理。 各項目であらわれる道具に関する知識はある程度もっていたので、 道具たちと対象である化学反応やたんぱく運動の関連に焦点をあてつつ、 自分で再構成しながらきく。(道具についても細かい点で新しく学んだ 点がいくつかある。)
1月25日 (日)
一歩も外出せずに、宿題にしていたことを順調に消化した。 夕方からのD論読みになって急速にペースダウン。
1月24日 (土)
外力駆動1体Langevin系の数値実験での Θの測定を試行錯誤する。 計算の手間など現実的な制限のもとで、もっともよい測定法を探索 するためである。悪夢にうなされて目が醒めた朝4時に浮かんだ アイデアがなかなかよく、それを実装すると、数値実験の測定装置 としてちゃんと機能するようだ。今のモデルでは、摂動計算で答え は知っているが、具体的な測定方法をおさえておくと、他の系を 考察するときや「Θ > T 問題」を考えるときなどに役にたつだろう。
この忙しい時期にのんびりした課題をやる時間があっていいなぁ... というのではない。実は、秋に投稿した Hayashi - Sasa 論文 に対して、ひとりのReferee さんが「おまえらの提案する有効温度測定法は、 (数値)実験でうまく働くのは簡単ではないように思える。ほんまに うまくいくんか?うまくいくいうんなら数値実験でみせてみぃ! それみるまで納得できん。」 というようなことを(もちろん英語で) 書いてきたのである。
ところが、既に林さんは何ヵ月も前にちょこちょこ具体的な測定を 数値実験でやっていて、論文草稿に書いてあるもっとも素朴な路線 に沿った方法では、確かに簡単ではないことを知っていたらしい。 とすると、「そうなんですよー。簡単にはいかないのですよ。。」 という返事を書くことになってしまうが、それではまずい。 たしかに、「現実的な制限のもとでのΘ-測定装置最適化」の考察は してなかったので、急遽、その点をつめないといけなくなった... というのが、忙しい日々のリズムが狂うような一日が生まれた真相である。 まぁ、よい機会になった。(そのかわり、他の課題はお休み。)
今年のD論審査は4つで、今日4つめのD論が届いた。枕元につまれた これらを眺めると、胸湧き踊る... にはならないけれど、とにかく 読もう。
1月23日 (金)
おぉ---。
1月22日 (木)
項目毎に書類がファイルされ、いつまでに何をするか、というスケジュール表が あって、それにしたがっててきぱきと事務処理をこなす....というの全くの反対 である。不要な書類は床の上にあり、必要なものは机の上の山のどこかにあり、 いつまでに何をするか、というのは書類をみないとわからず、なんとなく〆切が 近いぞ--- という焦りだけがある。考えると気分が悪くなるので忘れるように しているが、そうすると処理はちっともすすんでいかない。すくなくとも、 あれとこれとそれとなにとはもうすぐよなぁ、〆切。
目先のことを忘れて、ず〜と先の事項から処理しようとする。17ヵ月後の 滞在型研究プログラムに関して、滞在可能期間に関する事前アンケートみたい なものがきたので、返事しないといけない。3週間から5ヵ月の間か。 5ヵ月いきたいけれど、現実問題として不可能だから、どういうプランが いいかな。複数回にわけるしかないか....。
1月21日 (水)
昨日の朝の電車では、k-空間熱伝導で、もりあがっていた。DLG のような系では、 k=0 にエネルギーがはいって、高波数にエネルギーが流れている。横軸にkをとって エネルギーの流れの絵をかくと、あたかも、熱伝導がおこっているようにみえる。 で、3次元 FRR plot からきまる 温度をつかうと、各波数毎に異なる温度をとり、 低波数ほと高温になっていて、k=0 の温度と k=max の温度(=環境の温度) の間に温度profile ができている。この場合、local steady stateは波数に 対応する。温度一定の外力駆動 DLG もこういう視点からみると何かたのしい。 この k-空間熱伝導率とかがどうなっているのかとか、揺らぎがどうなっている のかとか。(Fourier 基底が local steady state になりうるほどにえらい 理由をさぐるのが、最近の悩みの根源になっているのだけど。)
昨夜の問題はそんな簡単にいくわけがなく、もっと時間が必要だという ことが確認できたのみ。具体的に計算しはじめると、力学系の摂動論との 違いばかりが目についてくる。また、高等技術(diagram)を使わないとこれ 以上の計算は困難なのだが、diagram を使うには、文法書を書くことから はじめないと、今はまったく書けない。が、そんなゆったりした時間はとれない。 (場の理論っぽいのを基本にすればいいのだが、独特な約束を用意しといた 方が便利だった記憶はある。「ガラス転移は臨界現象である」と主張する Bouchaud の最新論文をみて、やっぱ diagramer を復活させるかなぁ... と思い始めていたし、motivation はあがっているので、いつか時間をとりたいな。]
1月20日 (火)
問題の核心は、1/8の林さんの「3次元空間内の 螺旋型 FDT plot が だいたいある面上にのっかっている」という結果の「だいたい」をどう 定量化するかである。浅い考察からこんな感じだろう、と考えた案は はずれ、昨日の案もはずれていた。(そうして定義された面は Einstein からわずかにずれるということ。) いまのところ、「だいたい」というのは 物理をもちださずに、最小2乗fitting とかできめてしまうのがもっとも いいようだ。単なるパラメータをきめる問題ではなく、こうしてきめられた「値」が 輸送特性と関係していそうだ、という証拠をだすのだから、 最小2乗fittingが最終的な答えなはずがない。どういう物理とつながって、 「だいたい」というのを特徴づけれるのか...。
帰りの電車で、イメージトレーニングをすると、なかなか面白い風景がみえてきた。 今悩んでいることは、昔、力学系の摂動論で徹底的にくらもとさんを問い詰めて、 完全に頭にいれたことと非常に似ているではないか。[ごく一部の専門家への注: 例えば、非線形振動子の「位相」の定義の仕方をおもいだそう。「だいたい」 定義することはいつでもできるが、定義が人によってまちまちである。よい定義は 何なのか? あるいは、人によってかってでいいのか? ということ。概念的な問題 ではなく、それが測定可能量の計算とも関わる。その明確なこたえは、くらもと さんに教わった。どの本にも書かれていない事柄だし、くらもとさんの本にも ちゃんと書かれていない。]
林さんの螺旋が「だいたい」のっかっている面を定義する問題をその類の問題 にマップして考え直すと、精神的にはかなりパラレルなので大変気持がいい。 この線で数理的な表現をつくってしまおう... と深夜に(ある例題で)猛然と 計算をはじめる。
当然のことだが、技術的には、パラレルでない部分があって、つまりまくる。 これができると、例えば、fluctuating hydrodynamics のモデルでは、カレント 相関の異常性に関して系統的な摂動計算が可能になるはずなんだが.....。 [現時点では、(論理的根拠が明確でない)ダイアグラムのたしあわせできまる closure equation を解いて、異常性をもとめるのが最適の方法だとされている。]
1月19日 (月)
非平衡定常系での 多体 Einstein 関係式:half-filled の場合が特殊 すぎるので、この1ヵ月くらい、それ以外のパラメータでの可能性を 数値実験と物理的考察でつめていたのだが、「最新予想」が微妙にはずれている ... というのが、昨夜届いた "bad news" だった。 データを全部みせてもらいながら、いくつかの「もっともらしい可能性」 を模索し、最後にひとつ残った。今から思えば、以前の案は大変不自然で、 最新のがもっともらしく思える。これで、うまくいけば、またひとつ 賢くなったことになる。ミクロレベルから直接証明をするのは途方もない問題だから、 物理的考察と数値実験で正しい関係式を見出していくしかない。 (そして、本当に正しくて、意義があることが確定すれば、 この関係式をミクロから理解することが、非平衡統計力学の課題になる。) とりあえず全力で考えた。あとは、祈ろう。
学会予稿がなぜか up できない。なんでだ ??
1/6に深く考えずに書いた
ちなみに、他人の計算やら理論を読むときは、結果と条件だけみて、 大事だと思えば、自分で好きなように導出する。について、何人かの方から間接的・直接的に意見をいただいているので、 補足をしておきます。
Q. 「そんなこといったって自分で導出できなかったらどうするの?」: A . そりゃ、論文よみます。自分の阿呆さ加減を認識することだってあるし、 論文のすごさに感嘆することもある。しかし、「阿呆だ!」と頭を抱える ことや「すごい!」と声をあげる前提として、「自分がどこまでどう考えた」 かが必要だと思う。
Q. 「そもそも、自分で導出する基礎素養がないときはどうするの?」: A. 例えば、導出に高等な技術を要する場合、そもそも考えようがない、という ことだと思う。自分にとって何が必要か、というのがわかったのだから、 その機会に「基礎素養」を身につけてしまえばいいのでしょう。
Q. 「本当にすごい計算や理論は、ほいほいと他人が導出できるものではないの では? 他人の論文に身を委ねて学ぶことも多いでしょう?」 A. たしかに そういう論文もあります。しかし、その凄さや本当の飛躍を自分の感覚として 納得するためにも、僕は最初に自分でやろうとします。(単に僕はそうやって 感動してきたから、そういっているだけで、普遍性があるわけではない。)
Q. 「全ての論文に対してそんなことやってたら時間がないですが..」: A. 「大事だと思えば..」という前提がついています。時間は有限なので、 自分にとって何が大事か、という判断はつねについてまわることです。その判断 をするのは自分しかない。その判断はたぶんに本能的なもので、形式化 できるものではないと思う。
1月18日 (日)
1日がおわろうとしているのに、予定の半分もできていない。 学会の予稿を pdf で書いておくろうと思ったら、template がない、 といわれる。どういうことだ? 意味がないではないか....。
Hayashi-Sasa論文:夜おそくなって、数値実験の結果が「微妙に」ずれる という連絡がくる。おそらく原因は、計算時間を短縮するためにつかった 「ある経験則」のせいでいであろう、、という。(この経験則がいいことは他の パラメータでは確認できているが、物理的意味はよくわからないし、いまとっている データでは確認できていない。)うーむ。たしかに、これを使わないと計算時間が かかるし、何か方策はないものか考え込む。考えていると、色々なことが よくわからなくなってきた。頭を冷やすか.... (赤入れどころでなくなった。)
1月17日 (土)
小雪の舞うなか、次女の幼稚園にでかけ、もちつき大会に参加する。 おもちはおいしかったが、身体の芯から冷えた。
帰宅後、一瞬の休みもなく、Hayashi-Sasa 論文で構成が汚い部分について、 段落移動をはじめて、いちおうの筋をとおす。その段落移動と関係ない 部分について、Hayashi-Sasa論文の丁寧な赤入れをする。 (今回の赤入れは、ふたりが全部を丁寧にみる、という方針にたっている。 あとで赤をつっつきあわせて、相談して確定させてtex 化する。 これで、文レベルでおちつくはず。ただし、段落移動させた部分や原始的状態の ままになっている段落は、文を丁寧にみても仕方ないので、後日にまわす。) 全体の1/3までのチェックを目標にしたが、ちょっと届かず。
3年生セミナーの補足ノート(揺らぎの関係式)をつくる。先日配布したものの version up もつくる。
Sasa -Tasaki 論文の草稿を読みながら瞑想する。およそ3年前のノート (A4 2枚程度)がここまで膨らんだのは感動的である。論文の主張は、 「いかいかの命題を検証せよ。YES なら(線形非平衡領域に限定されない) 非平衡定常系に新しい普遍的な構造が宿ることがわかる」という提案であり、 その実験で検証されるべき命題たちを思考実験形式で提出していく。 したがって、7節からなる論文草稿の本文は、基本的に「文章」 でつないでいく。数学は大学1年程度の知識しかいらないし、 大変わかりやすく書かれている。 ところが、「思考実験の積み重ね」 という作業に専門家はなれていない。(僕もなれていなかった。) だから、これを正しく理解してもらうのは大変難しい。
1月16日 (金)
Sasa-Tasaki 論文: 草稿が田崎さんからおくられてきた。内容的には、 付録を除いて、からだのすみずみまでしみついていることではあるが、 そのすばらしい筆力にため息がでる。しかし、筆力にだまされないように 自分を前にだして読もう。(添削モードと反対。)
Hayashi-Sasa 論文:今日までに段落構成をかためて週末に文レベルのチェック をする予定だったのに、まだ段落構成がおちつかない。昨夜もずいぶんと頑張った のだが、なかなか全体がみえてこない。ざっとみた田崎さんの草稿との違いに 呆然とする。しかし、林さんの強い希望で、週末に、構成のいれかえと文レベルの チェックの両方をすることになった。ちょっと無謀な気もするが、流れに まかせて頑張ってみるか。
1月15日 (木)
"SST" というアナクロム(頭字語)が主題として登場する実験の論文草稿を おくってもらう。米西海岸発で実験の大物さんも加わっている。設定や結果 に意見はあるが、何はともあれ「非平衡定常系の法則の探索を目指した実験 がはじまった」のは大変嬉しいし、実際にはじまったことの意義は大きいと思う。
気分もいいので、現在、格闘中の Hayashi-Sasa の論文 ver.0 にむけて ピッチをあげる。この長い論文よりもっと長いらしい Sasa-Tasaki 論文 の草稿も近日中に届く予定だし、しばらくは、長い論文との戦いに 明けくれる日々になるかな。(戦う時間をどれだけ確保できるか、、という 問題はあるが、これはグチらない。)
1月14日 (水)
体調がいいので全力で駆け抜ける。寒いので腰をいたわりながら。
1月13日 (火)
「あっ」というまに時間がすぎた。
1月12日 (月)
予定していた作業はまだおわらないが、12時間目でばてた。 ひたすら文章をよんで、コメントを書いていく。論文草稿に6時間、 D論草稿に6時間。もう放心状態なので、ともに次の節にはいる気力 がない。こういう作業は(いやおうなしに)訓練されてきたので、 10年前や20年前とは比べようがないくらい進歩した、と自分では思う。 が、研究ノートを書くのと比べると高揚感はないし、「ばて」がくるのもはやい。
頭のリフレッシュのために、残った時間は違うことをしよう。
60年代に非平衡定常状態測度として、Zubarev らが提案したのがある。 いくつかの導出方法があるが、どの方法も明確に頭にはいらないので、 放置していた。ところが、DLG では次元に関係なく(おそらく)正しい。 しかも、Zubarev が議論したように、線形応答領域では、この測度を きめる変分原理をつくると、変分関数は物理的な意味があるきれいな かたちをしている。Zubarev 測度は任意の外場で成立するので、 線形応答を越えたところでの変分関数はないのかな.. と思いたくなる。 こうした試みは、おそらく無数になされているはずだが、Zubarev 測度 が簡単にみえる DLG のような玩具でいじっているみるのは練習問題 としていいかもな、、、。手を動かす前のイメージトレーニングで夢の 中へ。
Zubarev は学部3回生のときに図書室で借りて目をとおしたが、 概念的な部分が難しすぎて、ついていけなかった。 (正直にいって、いまでもついていってない。) ついでに、ちょうど同じ時期に読んだ Faddeev-Slacnov を思い出した。 計算や論旨の細かいところまでチェックをいれて完読したはずで、 今の研究とは何の関係もないけれど、そのためか懐かしさを覚える。 (Zubarev を思い出すときは、懐かしいとはいってられないからかな。)
1月11日 (日)
論文草稿改訂。ver. 0 完成が遠い。年末版が ver. -1 くらいか、と思っていたが、 ずいぶんと後退したので、今度できるのが ver. -2 くらいかな。金曜日に仕上り 予定枚数を見積もったら、PR E 出版スタイルで 18 page までふくれてしまって いるようだ。たしか 6 page の予定で書き始めたと記憶しているが...。
今度の version をつくるときには、僕の担当分のうち節単位でできると 林さんにおくり、林さんが林さんの担当分と僕がおくった分を辻褄を あわせながら集約することにしている。論文の作成のしかたは、 場合と状況に応じて色々ある。今回のように、書きながら理解を深め、 計算をしなおすような場合、一人が原案をつくるというのは難しいよう に思える。多少、継目はあらくても、そこは最後に調整することにして、 書き手も知らない全体像を論文を書きながら共同で確定させるのがよいうように 思える。論文をかきはじめるのが早すぎる、ということかもしれないが、 論文草稿としてまとめる作業をするのは研究をすすめる駆動力になるので、 新しいことがみつかりそうなら、さっさと論文草稿をかきはじめた方がいい と今は思っている。(ちなみに、多くの場合、連名論文でも大まかな原案草稿は ひとりでつくる。複数でつくると全体のバランスが悪くなるから。)
さて、最近、歩くときは、「非平衡統計力学の目標をどう語るか」を考える ことが多い。3月の超弦理論の研究会で「非平衡統計力学の構築をめざして」 という講演をすることになっている。CFTの量子細線への応用を話す押川さん と僕以外は、全て超弦理論関係の講演だから、色々な話題を集めて.. というのでなく、研究会の目的は「超弦理論」そのものであって、 僕等は「超弦理論」の研究者に理論的刺激をあたえよ、、 という役割を担えということらしい。依頼趣旨として明確だし、 やりがいも感じるので、講演させてもらうことにした。
非平衡統計力学の目標に対して、すぐに思いつく、、というか、普段喋って いることはたくさんある。ただ、本当にそれか? と違和感を覚える部分も ある。だから考えている。この件に関しては、この日記でちょくちょく 実況中継することにした。これは予告編みたいなもの。
1月10日 (土)
この2、3日悩んでいたのは、輸送係数と関係する(だろう)「カレント 相関」の妥当な定義とは何か? ということである。論文草稿の全体からすれば 「ごくごく小さな論点」に過ぎないことだが、気持がわるくなったら処置 しないと他のこともできない。一般的にいって、カレントが保存量と相関を もつばあい、その「カレント相関」を輸送係数との関係の議論にそのまま 使うわけにはいかない。例えば、カレントをk-空間表示した場合、k=0 以外 の場合には、保存量と相関する部分をもつのは自明でなので、その相関を 消した上でカレント相関を考えないといけない。この「消す」という作業が、 物理的にわからない。非線形性に関して摂動論的に考える場合には、まぁ、 伝統的な処方箋があるのだが、実験データから操作的に定義する方法が わからないのである。
問題が難しくなる理由は、カレント相関に保存量に関する多体の相関が 絡んで来て、いわゆる long time tail の領域とかぶるからである。long time tail そのものは、不気味なものではなく、long time tail より 長い時間スケール(といっても実験的にな普通の輸送スケール)までカレント 相関をみれば、異常なtail は消える。カレントと保存量の2次の相関がない場合、 そうするだけで、輸送と関わるカレント相関をとりだせる。ところが、 カレントと保存量に2次の相関があって、かつ、カレント相関に保存量 に関して多体の相関が絡む場合、long time tailより長い時間までみる と保存量の動力学をひろってしまうし、短い時間では、long time tail をひろってしまうしで、欲しいカレント相関はどこにもみえない。
結局、きれいな理解はあきらめた。long time tail より長い時間領域 で保存量の動力学が絡んだものをそのままみる。で、そこでの振るまい からカレントのランダム部分を評価する、という実験データをみながらの 愚直な行為をそのまま書くことにした。(下手にへ理屈をこねるよりは その方がいいから。)
1月9日 (金)
ふー。KPZ の MCT による解析が定性的にも間違った予言を与えるのが正しく、 その知見を捨てれたので論旨の矛盾がひとつとれた。あと1箇所が、まだわからない。
昨日の林さんの絵と数値解析法にもとづいて、論文草稿年末版の段落構成を 大幅に変更することになった。(効率悪し! が、効率最大原理を生きかたの 指導原理にしたことがない。) [無駄な作業をうまくはぶくことと別次元の ことではある。いずれにせよ、苦手分野に違いない。]
1月8日 (木)
うーん。論旨の断線がいくつかあり、どうもいかん。後ろ向きの気分だが、 林さんは楽しそうに怪しげな絵を書いてきた。3次元空間中の螺旋模様 の FDT-plotで、視覚的には今まででいちばん印象的だな。 螺旋がある面にのっかっていって、その法線ベクトルのある成分が "有効温度" として、Einstein を復活させるはず....(きっと)。
稲垣さんとD論の話し。粉体多体系ののマクロな弾性的性質の履歴依存性を 理解する鍵は何か、という問いかけに対して、少しづつ犯人をおいつめていく 感じの構成にするための工夫など。(確定まではいってないが、 かなりおいこんだと思う。)
佐藤と非平衡熱力学の話し。「そんなのはどこに書いているのですか?」と 聞かれても、文献は知らん。オンサーガーを解読したらそうなる。と、同じ ことを先月もいった気がする。
1月7日 (水)
予定していた作業はあとまわしにして、昨日明確になった論点のつめをおこなう。 かなりクリアーになってきたが、最後の霞がとれない。論文草稿にも関わるので ここで完璧にしないといけないのだが。今日は時間ぎれで、残る数時間は作業に 徹する。
1月6日 (火)
色々な作業のあいまに、懸案事項を少しの時間だけ考える。 1/4の証明を介すると、先行研究に我々の計算と矛盾しているのが あることがわかったので、これをなんとかしないといけない。 数値実験を丁寧に確認しても自分らのはやはり正しい。先行研究の理論編 をよみはじめるが、センスが全く違うので、さっぱり頭にはいってこない。 うーん、と腕をくみはじめた頃、林さんが部屋にとびこんできた。 「我々の計算時間が足らないのでなくて、先行研究の計算時間が足らない! ほれほれ、我々のにはクロスオーバーの時間スケールが2つあって、 それにはさまれる真中の領域をみると、先行研究の主張する振るまいではないか!」 速攻で自分のデータでも確認する。 「おお。」つまり、先行研究の長時間領域は僕等の短時間領域だった。 矛盾がないことはわかったが、論文草稿にいくつかの記述を 加筆しないといけないし、理論的にもうちょっと 理解を深める必要がでてきた。
ちなみに、他人の計算やら理論を読むときは、結果と条件だけみて、 大事だと思えば、自分で好きなように導出する。他人の導出は、 「流れ」があわないことも多く、そういう場合は頭にはいってこない。 式をおえばおえるのだろうが、「流れ」があわないまま計算をしても、 気分がよくならない。もちろん、「流れ」を共有できたときには、 同じ計算をすることになるが。
1月5日 (月)
昨日の練習問題(DLG での 重心の拡散係数と密度の拡散係数の関係)は、論文に 注釈を加える程度のいちづけとして年末に林さんが数値実験していたものだが、 昨日の証明をみると、今までの理解で早とちりをしていることがあることが 明白になり、急遽、数値実験で確認をおこなう。うーん、今日の数値実験では 今までと矛盾しないけどなぁ、、計算時間が足らないのかなぁ。(time scale が複数あって、 そのひとつが明示的にわからなくて長い場合、数値実験では、手元にある数値 だけをみて、間違った筋をたててしまう。) とりあえず、あれとこれとを結ぶ 話しを真面目に検討しないといけないようだ。
H-S III a 多体系の次の手に関して話をする。冬休みにはいってからの 自問自答では指数関数的にアイデアが消えていったのだが、何故か、 ちゃんと甦えっている。不思議だな。大枠の検討はこれからだし、 実際に根をつめてやるのはもっと先だが。
1年でもっとも忙しい40日間がはじまる。
1月4日 (日)
復活の手始めに、元旦の計算のつづき。(DLG での 重心の拡散係数と密度の 拡散係数の関係について。) どんどんややこしい問題になってきて嫌気が さしたあと、深呼吸して問題をみなおせば、1瞬でみえる自明な話しだった。 最初の一歩がまちがっていた。筋がわかったあと、念のため、丁寧に 証明をかいておく。
昨年末に書いた報告書に赤いれ。日本人が書いた日本語の文とは思えない 代物を普通の文程度になおす。
1月2日 (金) 〜 1月3日 (土)
早速風邪気味になり、調子がでないので、手も動かさないことにした。(今年は 闘病日記になることを避けたいが、先がおもいやられる。) 3年連続で「犬夜叉」 を長女とみにいく。正月なのに、映画館にいたのは24人で、半分くらいは、 お父さんと小学生くらいの娘というカップルだった。(筋とは無関係のカットにあった PIYO PIYO マーク に反応したのはお父さんたちだけだろうが。)
1月1日 (木)
昨日のうちに厄避けにいく。元旦はいつもの地元の神社におまいりをする。 年末にわいた宿題の計算をするが、微妙にああわない。