日々の研究

日々の研究(リスト)

7/31 (水)

研究の集中力を保てないので、今日と明日の臨時休業をきめる。

見知らぬ学部生から熱力学の拡張に関する質問mailがきたので返事をおくる。懸命に 考えた質問は、質問を読んでいるだけでうれしくなる。今年は、関西の学部生からも 非平衡や統計の基礎に関する質問や議論mailがきたが、それらもよく考えた質問で 気持がよかった。

e-mailの答えだとどうしても、最短の説明になってしまう。専門用語の説明から 考え方の背景から書いていると本になってしまう。非平衡の背景説明を書いた本 があったらいいよなぁ、と最近実感する。

7/30 (火)

定期試験の監督。書類等の処理を一気にやってしまおうと思ったが、最低限に とどまる。

(物理の)雑談がもっとも平静を保てる。いつもと同じかもしれないが、 院生が気をつかってくれたのかもしれない。

7/29 (月)

強外場極限:定常系と平衡系の化学ポテンシャルが等しいとき、定常系の圧力の 方が大きくなる、というのが flux-induced osmosis (FIO)とよばれる、SST自由 エネルギーの凸性からくる結果である。低密度側ではよいが、密度を大きくすると 大小関係がいれかわる。まだ計算間違いの可能性はあるが、数値やふるまいは 合理的なようにみえる。

仮にこの計算が正しいとすると、解釈が問題になる。モデルの選択という常に ある問題はよこにおいとくとして、100年以上まえのファンデルワールスモデル のように、凸性の変化と何らかの現象が対応していて、その現象がモデルの範囲で 議論できればよい。そうなれば、SSTがより本物らしく感じるし、生現象への あらたなアプローチにもつながっていく。

7/28 (日)

強外場極限:今までの理解のノート書き。操作的化学ポテンシャルについては 平衡系と定常系の接触のさせかたが鍵で、今までも苦闘してきた。数値的にもっとも よかったのは、局所詳細つりあいを保った接触になるように外場のいれかたを 工夫し、それを実現するために、外場方向の周期境界を開放系にした接触である。 ただし、複数の要因がからみ、数値的には面倒なので今は放置したままである。 最近のアイデアは周期境界条件のもとで局所詳細つりあいをたもったまま平衡系と 接続しているので、そういう意味では自然ではある。(強外場極限の結果をみて SST等式にあうように考えた、、というのが本当なのだが。) 残るは FIO だが、 明日一日ごりごり計算すれば何かの結果はでるだろう。しかし、計算間違いの山 だろうしなぁ。。(あぁしまった。定期試験の問題作成を忘れていた。明日つくら ないといけない。タイミングが悪い。)

7/27 (土)

強外場極限:操作的化学ポテンシャルとSST等式との関係をめぐっての格闘。 完全に明快とはいかないまでも、論旨はかなりはっきりしてきた。いまのところ は大丈夫にみえる。(何度もダメになって復活したけっかだけど。) 数値実験 でも使えるはずだし、結果を確認した方がいいかもしれない。近いアイデアは 昔ためしたが、そのものずばりはまだだった。

7/26 (金)

強外場極限:もっとも自然なモデルの範囲ではどうしてもややこしくなる。折角 あれこれと整備したことだし、このまま撤退するのもしゃくなので、最小の計算 で解析可能なモデルで具体的に計算することにする。最低次の定常分布関数の計算 までノートに書く。非平衡圧縮率は紙の裏の計算まで終了。Kim-Hayakawa の解析 と同じアイデア(=バルクでの粒子流バランス)にたつ操作的化学ポテンシャルは 紙の裏のスケッチまで終了だが、計算をつめるまでもなく、SST等式は成立しそう にないのでポイ。日曜日にラフにやった方針をつめることにする。 すっかり忘れていたが、そもそもこの部分をノートに書きながら慎重に考えるのが 目的だったのに、極限の解析でまわりみちをしたのだった。直感的な描像では SST等式と一致するはずだが、直感があてにならないことを身にしみた1週間だった ので慎重に考察しよう。

7/25 (木)

強外場極限:普段、数値計算でつかっている時間発展ルールと強外場極限解析の 時間発展ルールが頭の中で混ぜこぜになっていたのが、混乱の大きな原因になった。 混乱は全て解消したが、難しさを納得し呆然とする。物理的な設定の健全さを たまったまま解析可能なモデルを求めてのたうつ。

7/24 (水)

悪夢でめがさめた。頭の中を摂動論の形式が流れはじめて、みおとしに気がついた。 系統的な摂動論では、Beijeren and Schulman ('84)にならない。彼らが論文で摂動 論とかかずにモデルと慎重に書いたのはこのためか....。最低次はそういうものだと 直観で思っていたが、直観はあてにならない。 正しい摂動の枠組がわかれば、 正しい直観もわかった。摂動の仕方をいんちきにあつかわないと、彼らの「モデル」 にはならない。こういういんちきレベルでSSTの是非を議論するわけにはいかない。 さて困った。どうしよう。(朝、2時半頃かく。)

学部セミナー(stability of matter)最終回:(5時間半)。ほんの少し命題の証明に 穴はあいたものの、予定していた安定性の証明までを終了する。実は、このセミナー は教養学部基礎科学科数理コース3年生が受講したものである。3年生の標準コース からは大幅に逸脱した内容ではあったが、参加者は膨大な量の予習をこなし、少なく とも論理と証明は追った。

近年は、大学にもシラバスというのがあり、与えられた履修内容を消化することが 大学の勉強だと考える風潮もひろがっている。しかし、本来、学問には天井がない。 あるテーマに興味をもって勉強するとき、自分の積み上げがないからといって放棄 する必要は全くない。今積み上げがなければ、必死で積めばいい。同時に、積み上 げがないままに表面の理解だけで満足すると、最悪の事態になることも強く意識す べきである。だから、計算や証明を追うのは当然のこととして、全体の流れに関す る対話や議論をくりかえし行うことが大事になる。3年生の段階で背伸びした内容 をセミナーでとりあげたのは、背伸びをする自由さとその厳しさを感じる機会を与 えたかったからである。

学科のセミナーでこのようなことをするのは無謀かとも思ったが、参加者の能力と やる気のお蔭で有意義におわったのはよかった。stability of matter の本当の 理解については、僕も彼らもこれからだろうが、それはゆっくりでいい。

7/23 (火)

driven lattice gas の強外場極限: 摂動論の枠組つくりは、昨夜は混乱したままで、 今日にもちこした。(強外場極限の)0次オーダーの定常分布は簡単だが、そのオーダ ーの時間発展には詳細つりあいがない。そのため、直感で正しいと思っていた摂動の 最低次の定常分布が満たす方程式が本当に導けるのか途中で不安になった。昼御飯前 に、詳細つりあいはないが、doubly stochasticity があるおかげで直感どうりになる ことがやっとみえてきて、夕方までかかってノートを書いた。形式的な摂動論の枠組 はできたので、平衡のまわりの摂動論と同じ程度のことをやろうと思えばできる。 (ただし、平衡からの展開でも強外場からの展開でも繁雑なので、使いものにするに はさらなる工夫がいる。)

最低次の方程式の解(= Beijeren and Schulman ('84))をもとめる方法の論点整理 のノート書きまでを今日中にやっておきたい。SST等式は木曜日以降で、FIOや非平 衡自由エネルギーの話しは週末かな。

昼御飯時、思いがけないところで思いがけない人にあう。非平衡に興味をもつ学部 生がいることを聞き嬉しく思った。非平衡に興味をもった学生が既存の本を読むと きは、できるかぎり批判的に読んでほしい。技術的なことは消化できても、背景に ある考えかたについてのメーセージが感じられない本が多数ある。本に迎合するの でなく、自分自身が自然に納得できるようになるまで、あれこれと自分で考えるこ とが大事だと思う。分野に関係ないことかもしれないが、とくに非平衡に関しては、 そういう側面が強いと思う。

7/22 (月)

大学の部屋の机の上の整理。ヘルパーもいたので3時間の作業でなんとか終了する。 棚の整理にはのべ10時間と予測しているが、さていつのことになるのやら。

driven lattice gas の強外場極限:ノートを最初から書きはじめる。強外場での 最低次の寄与をきめる方程式は直感で書いたものが正しいと思っているが、摂動論 としてきちんと枠組をつくっておくことにした。縮約摂動論の典型的範疇にはいってい るのだが、あまりみかけない側面もあってストップしてしまった。摂動論をきちんと くんでおくことは形式の問題だけではない。高次の寄与が加わったときSST等式が どうなるのか、答えが肯定的のとき、自由エネルギーの(外場に対する)凸性が どうなるのか、というSSTとして重要な問いがまっているのである。強外場極限 という特殊な状況の成立以上に説得力をもつだろうから、こういう場合の高次の 計算は大事なのである。(勿論、最低次でSST等式が成立しないと話しが はじまらないのだが。)

7/21 (日)

driven lattice gasの強外場極限: 紙の裏のレベルだが、たぶんSST等式は成り立って いる。ただし、(平衡系とちがって)有限自由度の恒等式はなく、成り立つとしても 熱力学極限においてであり、漸近則に関する物理的な議論をいくつか利用している。 だから、ノートに清書をしても数理物理的なレベルではない。強外場極限をとった あとのモデルを直接数値検証した方が確実かもしれない。(あるいは、漸近則の評価 が得意な人ならちゃんと評価できることかもしれない。) いずれにせよ、ノートに まとめよう。計算の本質は、Beijeren and Schulman ('84)でつきているので、 SSTにとっての論理をきちんと整頓することが主目的になるだろう。

この強外場極限では、外場に平行な層内で「平衡化」が最初におこってしまうので、 いんちきに近いくらい簡単な構造をもっている。しかし、最終的には、状態方程式 の変更や臨界点のシフトなど非平衡性による物性の変化はきちんとみえる。Beijeren and Schulman ('84)は、時代の影響もあって、臨界点シフトに焦点をあて、Onuki - Kawasaki と比較しているが、着目している物理がまるで違うのだから、そもそも 比較不能なんだが。

数値実験をやっているメトロポリスや熱浴法の強外場極限の解析はパラレルには できない。朧ろげな方針はあるが、できたとしても相当に繁雑になるはず。

正午前後にプール。長女の連続クロールの自己記録更新につきあう。今日は300 だが、最後は自分の方がばてばてになった。そのせいで、午後には紙の裏を 睨みながら昼寝をする。

7/20 (土)

driven lattice gasの強外場極限: うまくやらないと膨大な計算量になってしまう が、Beijeren and Schulman ('84)の結果を睨みながら絵をたくさん書いて要領よく 計算する。彼らの結果の確認は午後の外出時までに終了する。操作的圧力計算に 関して、物理的に考えないといけない箇所がでてきたので、しばし考える。 微妙なところが残るが、たぶんよいだろう、というへ理屈をみつけて先にすすむ ことにする。

夜に操作的化学ポテンシャルの計算にはいる。朝よりは簡単な絵を何枚か書いて 第一段階終了。ここからが頭の使いどころなので、2本目のビールをあけて休憩 がてらこれを書く。

7/19 (金)

昨夜、一般的な戦略や考え方をつめながら、具体的な計算可能性という点から例題 を模索する。数値計算ではつかわない(=おそろしく非効率)が、物理としてはもっとも 自然な update rule の強外場極限なら、計算できることを納得し、寝る前に方針を つめる。ああしてこうしてこうすればいいことを確認してねる。

朝、driven lattice gas の強外場極限での臨界点移動は Beijeren and Schulman ('84) が論じていたことを思いだし、読みはじめる。強外場極限の考え方は昨夜の と同じで、しかも、ああしてこうしてのあたりくらいまで、既に計算してくれている。 あとは、SST等式の十分条件にむけてごりごり計算すればいいか。。

と、考えていたあたりで、田崎さんから mail がくる。論文改訂に関する editor and refereesへの返事が数倍に膨れあがっている。 しかも、事務的な調子の僕の 草案とちがい、説得力溢れる文章である。 論文改訂に関して代案を書きたい部分 があったので、確認のため Derrida-Lebowitz-Speer の論文をみようとしたら彼 らの最新論文がひっかかった。driven version か。はやい。 前の論文のIntro はOnsager から書いていたが、今回はどういうIntro かな、と目をとおす。 非平衡系の一般的問題提示で Ruelle の Nature解説を引用し、熱対流の問題で Cross-Hohenberg のReview を引用し、、、へ? 非平衡系の自由エネルギーの promising attempts で Sasa-Tasakiのpreprint ではないか。その後、論文の テーマにはいっていく。

preprint が引用されることは珍しくないが、general introduction にくるとは 驚いた。4人までreferee がまわって、2 : 2 で、やはり簡単には理解してもらえない 、、と思っていたが、元気がでるニュースである。

お調子ものだし、調子にのって強外場極限の計算をやってしまおう。(2、3日かかる だろうけど。)

7/18 (木)

昨夜からの格闘を続ける。平衡系の場合に積分可能条件が成り立つ理由を徹底的に 絞り込む。今までの理解が朧ろげだったことを認識した。何度か紙の裏に書いていた ことではあるが、ノートにきちんと書くべきだった。定常系の場合、(Sasa-Tasaki の意味の)積分可能条件が成り立つための十分条件をできるだけ明示的にする。

○○の是非を示すことができればよいのだろう、、というところまできたが、うーん、 できそうでできない。最低限、strong field limitで具体的に計算できるように 思うのだが。

7/17 (水)

今日から夏休みである。境界があるわけではないが、自分で宣言すればそうなる。 学部セミナー延長戦や定期試験の諸々や事務的な書類が数点などの仕事はあるが、 普段よりは時間的に余裕のある日程が8月21日くらいまで続く。

finite size 効果のleading orderに関して、昨日ちょこちょこやっていたことを ノートに書く。結局、今までやってきたことは正しい。収束が遅いのは統計が足ら ないせいかバグがあるのか、のどちらかである。(昨日とは関係ない部分の改良で 収束の速さをすこしだけ速くできそうだが。) ボーナスとしては、平衡系の有限の N で厳密になりたつ Maxwell 関係式の離散版が導出できて、これは綺麗ではある。 統計評価の検証くらいに使えたら、、と思ったが、諸般の理由で使い道がない。 つまらねぇな。

定常状態のSST等式(=Maxwell関係式)が成立する十分条件は、昨年から わかっている。何度も何度も頭をよぎってきたことだが、すぐにgeneral nonsense に落ち込んでしまった。平衡系の離散Maxwell 関係式をみたせいで、 具体的にできないか考えたくなったので、今日は寝るまでこれでつぶれるのだろう。

7/16 (火)

基研研究会 web 中継を少しだけみた。passive に参加するだけなら、これで十分 な気がする。「生」は直接議論できることに意味があるのだけど。昨日のをみた かったが、まに合わなかった。

熱力学講義最終回。ミクロとの関わりを気にする学生がいたので、いつも以上に そういうことを喋った気がする。エントロピー力の現実性と不思議さを伝えるこ とを目標にした。講義後の雑談で、理想気体の圧力が、分子間力起源でないこと も強調すべきだった、、、と後悔した。来年だな。毎年、学生さんの質問で少し づつ進歩している。

物理部会談話会:国場さんの「可積分のはなし」。スターウォーズと平行させて Episode I から Episode VI を構成したもので、非常に楽しくかつ勉強にもなった。 (Episode I が Lagrange, II がコワレスカヤ、IV がBethe〜, V がソリトン, VIが Faddeev で、映画どうり IV から話がはじまる。) forceが対称性という対応だった ので、その暗黒面は何ですか? という質問をしてしまった。国場さんの筋書きでも、 対応づけがあって、表では空欄になっていた(アナーキンがダースベーダーになる) Episode IIIの期間を、映画そのままに、具体的な計算から離れ(数学としての)抽象 化の波に因われていく時代とみていた。

林さんが化学ポテンシャルのサイズ依存性がおかしい、というので、有限サイズ 効果をきちんとだしておこうと電車の中で計算する。4月に一度ラフにやったはずで、 そのときはノートをつくらずに、極限がよさそうだ、、ということだけ確認した つもりだった。が、、、おかしい。ありゃぁ?? 今のアルゴリスムでは、平衡系 の熱力学極限で正しい化学ポテンシャルを与えないようにみえる。今日の計算が 間違っているかもしれないから、とにかく落ち着いてノートをつくって、間違い なければ、化学ポテンシャルの数値計算は全てやりなおしだ。(これでうまい方向 にながれればハッピーだが。)

付記:熱力学極限では今までのでもよいが、有限サイズ効果を速く抑えるためには、 アルゴリズムを変更した方がよい。で、化学ポテンシャルの数値計算はやりなおし する。

7/15 (月)

学部セミナー(stability of matter)は発表予定者の学生が急病のため、 次回予定分のno-binding theorem の準備としての劣調和関数の性質を先にすすめる。 公式には今日が最終回のセミナーだが、来週1日4コマくらいの延長戦をする。

セミナーの最初のあたりで下半連続関数がでてきて、発表者の学生がε-δで 説明したので、使いがってのいい収束列をつかった定義を質問した。 ほぼ完全な解答がすぐにかえってきたのだが、「連続関数の場合のそれぞれ の定義の同等性云々」といらんことを僕が喋ってしまい、別の学生がこっち からそっちへの証明に選択公理をつかう、、とコメントがはいり、そのせいか、 今日のセミナーは、選択公理を過剰に気にする妙な雰囲気になってしまった。

普段は選択公理的な表現をつかっていても気にとめないが、気にすると気になる ものだ。しかし、問題は、選択公理的な表現を使っていても、選択公理を使わな いように証明を書きなおせる場合が少なくないことである。選択公理を避け得 ないのかどうか、、というのは難しい。セミナーの議論に影響されて、流し読 んだあと本棚に放置してあった、田中尚夫 著、選択公理と数学 (遊星社)を手 にとってぱらぱら眺めると、デリケートな例題がいくつかのっている。理解が 進歩したわけではないので、ふーむ、、とため息をつくばかりだが。

(球をうまく有限個に分割して、うまく組みあわせると、もとの球と体積が 等しい球が2個できる!)というBanach-Tarskiの定理からあきらかなように、 選択公理が気持の悪いものであることには違いない。その一方で、 選択公理がないと数学がかなり 窮屈になることも本の説明をみればわかる。そういうことをうつらうつら考えるの は面白いが、解析や代数の問題とは切り離した方がいのだろう。むしろ、物理系の 学生が例えばランダムネスの議論と関係あるのでは、、という雑談を楽しむのに 適当な話題かもしれない。

7/14 (日)

昨夜の学部セミナー(stability of matter)の準備でひっかかったのは2箇所で、 ひとつは「考えていた筋を紙に書くときの技術的な混乱」で、もうひとつは「筋 をつくる部分の早とちり」だった。前者は落ち着いて丁寧に書けばなんでもない。 後者は、紙に書く以前にもどらないといけない。もともと簡単な練習問題のはず なので、あることに気がつけば瞬間におわる話しだったが、それに気がつかない と時間ばかりが流れる。なんとか朝のうちにおえる。

昼、プール。長女が50メートル以上の連続クロールができるようになり、やる たびに連続水泳距離の自己記録が更新されていく。いちばん面白いころだろうな。 今日は連続最高200、合計600。ボディーガードのようにピッタリ後ろをつ いていく。

夜、論文かき。モデルの説明。考えることもなく書きつらねる。

7/13 (土)

朝6時の佐藤のFAXで目が醒める。たしかに、FAXを送ってくれ、と昨日の昼間に 頼んでおいたのだが。。 結局、10時頃まで寝る。

午後、論文書き。intro だけおわる。非平衡定常系の揺らぎに関する過去の理解の 進展を踏まえ、その中でどういう問題を考えるべきか、という構成にする。わかって もらえるかどうか微妙だが、そのあたりに古い参考文献を多めにつけることにしよ う。Derrida-Lebowitz-Speer が過剰評価されている現在、非平衡揺らぎの論点を 理解してもらうのは作文技術としても難しい。SSTとの関係はintroではもちださ ずに、論文の最後の節で「ほうら。この関係式はSSTを認めると自然でっせ」という のりで議論する予定。SST等式そのものについては精度を確認するのにまだ時間が かかりそうなので、この論文ではとりあげないつもり。(まだ死んでいない。)

夜、学部セミナー(stability of matter)の準備。今週、Thomas-Fermiでは荷電中立の 場合がエネルギー最小になることの証明を終えたのだが、minimizer が存在する、 という数学的には最初にやるべきことを証明なしで認めていた。どういう空間で 変分問題を考えるかで、minimizer があったりなかったりするし、その存在は全く 自明ではない。物理的な直感で議論できるものでもない。で、それを来週の月曜 日にとりあげる。証明のアウトラインはわかっていたつもりだったが、きちんと書 いていくと、肝心の部分がふにゃふにゃして証明できない。ものすごく丁寧な証明 を書いてくれている Lieb-Loss にも練習問題とされているくらいだから、(おそらく) 簡単なことなんだろうが、どこかで誤解しているのだろう。

7/12 (金)

稲垣さんが昼過ぎにくる。来週から10月中旬までふたたび海外なので、海外渡航の 書類を書いてもらう。

熱力学講義:相変化。クラペイロンの式の説明に力がはいってしまう。この非自明 な関係式は測定で検証可能であり、実際に成立していることを確かめることができ る。その結果、第2種永久機関の非存在という納得しにくい前提にたった熱力学の の正当性への強い信頼を与えるのだ。(力がはいってしまう理由は書かない。) 講義 の後の雑談で、分子の力学から相変化 をどのように考えたらいいのか、関係式をどう理解するのか、、という質問がでた。 統計力学的なラフな説明をしたが、学生が知りたいのは「分子の立場にたった」説 明だと思う。これは僕も知りたいことで、難しい事情を説明するのがいっぱい。 そういう逃げでなく、もうちょっと説明の仕方を考えないといけないよなぁ。 来年の課題だな。

熱力学講義は、来週の火曜日が最終回だが、空席のクラスターができないくらいの 出席者がいた。

学位論文審査開始や海外渡航などの学務関係で説明しないといけないので、委任状で なく会議に出席する。皆さんつかれているのか、うとうとしている姿が目につく。 自分が説明する直前まで、内職でとある計算をしていたが、おわらなかった。

7/11 (木)

昨日まで3日連続で電車の中でうたたねをした。普段は滅多にうたたねしないので、 よほどつかれているのだろう。

driven lattice gas のつめデータ採取のあとは、局所平衡仮説に関する論文をいくつ かおとしてきて眺める。数値実験では、局所平衡仮説が非常にいい場合と非平衡性に 関するモデル化が悪くて破れる場合がある。後者は論外で、欲しいのは、局所平衡 仮説の破れが連続的にかわるような状況である。理想気体の「内部エネルギーが体 積に依存しない」という特別な性質をあたかも、一般的な公式として(間違って)捉 えるのと、局所平衡仮説を大事な原理と捉えるのは似ていると思う。そのあたりを ミクロからつめよう。

夜、サントリーホール with 本堂さん。

7/10 (水)

水曜日なのに月曜日のカリキュラムなので、午前は、学部セミナー(stability of matter)。午後は会議資料の作成のあと、データ整理をしてjobとばし。

9/9〜9/11に予定されていた「量子カオス」研究会での(依頼)講演の キャンセルを世話人に伝える。もともと隙間が小さかったのに完全に会議等 で埋まってしまった。その直前にある学会も土、日だけかなぁ。

7/9 (火)

今週の(来週も)火曜日は金曜日カリキュラム。午前、各種書類でばたばた。 午後、講義、会議*3。

7/8 (月)

午前、学部セミナー(stability of matter)。午後、臨時セミナーの後、中江君の 中間発表。蛇行現象について。学会からの進歩は(実質)0だが、昨年の貯金とうま い発表ですました。

driven lattice gas:土曜日の予感どうり、ちがうプログラムをとばしていた。

7/6 (土)

何かの閉じた軌道にたいして何かを求めると綺麗な関係式がでてくるのだが、 どうもぴったりせずに苦しんでいる....という夢を朝方に長時間みてくるしんだ。 そのせいで午前中がえらく短かった。

午後、referees への応答案を書く。(誰もがそうであるように)気がのる作業では ないので、しょっちゅう脱線する。しかし、推薦書を書くと被推薦者が立派に思え てくるのと同じことなのか、論文がえらく立派に思えてくる。

風呂あがりに、no-binding theorem の証明を読む。これで、問題となっていた多体系 のエネルギーの下からの評価に関して、算数上はほぼ全部フォローしたことになる。 物理的な理解はまだまだだが、ときどきゆっくり考えたり、何かの機会によく知って いる人に教えてもらえばいいや。

stability of matter という題材を学部セミナー としてとりあげた位置付けについて は、最終回を無事に迎えたら何か書きたいが、僕個人の興味は、「古典力学世 界で多体系として不安定なものがフェルミオンの導入で安定化する」という のを、動力学や熱力学第2法則との絡みで考えたいことにある。 例えば、この問題で、 古典描像と量子描像の関係はどうなっているのか? 安定性のいれかわりはどう 理解するのか? (量子できちんと記述できているから万歳! という立場には なれない。)

もうちょっと書きたくなった。

例えば、古典に直接対応するのは、(粒子交換の)対称性を仮定しない N 体 波動 関数だろう。そこでは、半古典や量子・古典対応がある。 最初、波動関数はボゾ ンもフェルミオンもなく、古典にもっとも近いN 体 波動関数があったとせよ。 この N 体 波動関数の時間発展をおっかける。ただし、ある時間がたつと不安定 領域をきりはなすようなことをやる。(物理的には、radiation とかをきちんと いれて世界を接続するのだろう。まぁ、電子の古典的運動でradiation を考えない のは、そもそもいんちきではあるが。) これをくりかえしていくと、反対称成分 だけが残る。「安定な物質が残ったから、電子はフェルミオンになった。だから、 量子力学では粒子は区別ができない。」 酒を飲んで喋るようなことだけど、上の 意味でのN体波動関数の時間発展をみて、 反対称成分が残ってくるような数値実験をはじめてみたら楽しいだろうな。

化学反応ネットワークで構造をつくらせたり機能としての分化させたりするのは できる。(パタンレベルは飽きているのだが、高い機能性をもたせるのは非自明で、 そういうことを金子グループがやっている。) そういう世界は古典力学に対応 する。一方、機能をDNAの発現からみるのは量子力学に対応する。現存する生物に とって、DNAが重要な役割を果たすのと同じように、物質科学の理解に量子力学は さけることができない。

僕は、DNAありきの話しは知識として仕入れるのが楽しい程度で、かりたてられる ものがない。DNA の問題では、化学反応がごちゃごちゃしているなかから DNA と いう特異なものが残ってきた理由が明らかになったら感動するだろう。DNAでなく ても、今の生物はどうもうまくできすぎていて、しっかりした制御ラインがある 一方で、柔軟性もある。その両側の境目をうまくつくと、細胞に魔法の薬かけた ら心臓ができるほどだ。 単なる化学反応ネットだが、任意のネットではなく、 進化で残ったきたネットなんだろう。ただし、進化をだすと思考停止するので、 そういうこといわずに、理解を前進させるにはどうしたらいいか。。。と悩む。

量子力学のきちんとした解析とは別に、「安定な物質が残ったから、電子は フェルミオンになった。だから、量子力学では粒子は区別ができない。」という のりに惹かれるのと、生物の理解に関するこの悩みは同じような気がする。

あれれれ。driven lattive gas の根性をいれた 48 x 48 の揺らぎの計算結果が おかしい。たしか、4月にはうまくいってたはずなのに、なんで詰めになって 狂うんだ? (データをみていると、とばすプログラムを間違えた気もする。 整理が悪いので、何が何だかわからなくなりつつあるしなぁ。)

7/5 (金)

昨日の砂糖水振動子。大槻君が理論を考えてきた、という。それなら、参考のために、 吉川さんの論文もみた方がいいだろうから、本棚をごそごそ探すがでてこない。その 代わり、いばさんのマルコフ連鎖の解説や、清水さんの非平衡揺らぎの解説がでてき た。おお、これらは今の僕にタイムリーなので鞄にいれる。(昔もらったときにちゃん と読んでなかった。) 整理が悪いと、思いがけず文献に遭遇するので楽しい。 (目的の吉川さんの論文は webで 調べればでてくるだろうし。)

7/4 (木)

KISS:前半の前半、大槻君が「正しい鞭の使い方」というPRL論文の紹介する。PRLで もこういうのはありか。。。前半の後半、GCMの実験的デモだが、うーむ。 とりあえず、collective motion に関する正しい status をいっておく。 (それに刺激されたのか、ささ研の何人かが柴田君のD論をとりよせるらしい。) 金子さんも池上さんもいないし、僕も(早くおわった)会議からかえったばかりで、 さらに事務的な仕事を抱えていたので、後半は来週に延期する。

ホテルに向かう前に印刷出力をとりに院生室にいくと、つい雑談をしてしまい、 塩水振動子 (=「はてなぜだろうの物理学」を参照)の話しになった。大槻、中村、 中江の各氏は、その有名な現象を知らなかったらしいので、急拠実験を開始する。 およそ90分後に「紅茶で色づけした砂糖水振動子」ができた。(僕はみてるだけ。)

理論は? という宿題をだす。(僕は、学生時代に1日挑戦して敗退。吉川さんの 論文はもっているが、まだみていない。)

夜、Thomas-Fermiの変分問題。とりあえず追うことはできるが、まどろこしい。 もっと簡単にできないのかなぁ。

7/3 (水)

明日からの2週間、臨時講義やら臨時会議があって、講義も会議も普段の倍になる。 そこに突入してしまうと、おたおたしたまま時間がすぎていくので、熱伝導系の 整理を頭にロードして、2週間分の仕事の道をつける。

Aoki-Kusnezov, nlin.CD/0105063 は昨年の preprintなのに、読んでなかったのは まづかった。\phi^4 熱伝導系での局所平衡の破れをハミルトン力学系(+熱浴モデル)で 定量的に議論している。結果の解釈に異論があるものの、この数値計算の結果には重要 な点がいくつかある。SSTとの関係を調べるのにも適当な題材でもあるので、2週間後 に僕もやろう。

Kim-Hayakawa, cond-mat/0202003 も論文版にはじめて目をとおす。論文としてよく書け ている。ただし、driven lattice gas でもそうであったように、バルクで非破壊的に化 学ポテンシャルを定義するのと、境界で弱く接触させるのとは値が異なる。早川氏が当 初から指摘していたことと本質的に等価であるが、僕は1年前は両者に差がないと考え ていた。

そのdriven lattice gas は、化学ポテンシャルの密度微分や揺らぎに関してふたけた の精度は確保できているが、それくらいの精度では説得力がない気がする。有限サイズ 効果もあるので時間を喰う。うまいデータ整理の方策を考えないといけない。

以上をふまえて、5ヵ月放置していた Sasa-Tasaki にとりかかる。その間、個人的な 経験値は大きくあげたし、あらためてその可能性の「よさ」を認識したので、改訂する のにいいタイミングであろう。

7/2 (火)

学部セミナー(stability of matter)の準備。昨日までのセミナーで、原子核電荷Z, 電子数Nの原子に対する 量子力学のエネルギーが Thomas-Fermi で漸近的に下から抑 えれることをみた。(実は、漸近的に上からも抑えれるのだが、それはパス。) 残る 問題は、複数の原子に対するエネルギーを下から評価すればよいのだが、そのために は、Thomas-Fermi の解析が必要になる。 全体像を掴むために道筋を整理していた のだが、その過程で、Teller '62 という論文をみた。式がほとんどでてこない 論文であるが、(no biding theorem)「Thomas-Fermi では、原子が束縛されること がない。」を結論している。

僕が'62にその議論を耳にする機会があったら、Thomas-Fermiなんていう近似理論の 解析だからなぁ。。。という常識的な反応をしたに違いない。(ただし、'62 の段階 でも Thomas-Fermiの背景の説明をうければ、Ginzburg-Landau と同じような感じで 受け止めれると思う。) 数理的な人は、この解析は数学になっていない、、と切捨 てただろう。興味あるのは、Teller氏がどのような位置付けでこういう議論をした かである。20年後、 Thomas-Fermiが(Z、N 無限の極限で)漸近的にexact になり、 Teller のほとんど文章による説明のアイデアは結果として正しく、厳密数学の レベルにまでなることを想像していたのだろうか。

Thomas-Fermiが漸近的にexact であることや Teller のアイデアの厳密化はLieb を中心にするグループによるものであり、数理物理としての題材選択の着眼と その完全な議論は凄まじいと思うが、Teller の論文の方に惹かれる。(難解だけど。)

driven lattice gas: もうアイデアは尽きたので、残ったものをひたすらつめる だけだが、また狂っていた。デリケートな領域なので、落ち着かないと、ゴミ結果 ばかりたまっていくな。「こりゃいいわ」という説得力の程度をあげないと、誰も信用 しないようなネタだもんな。

ランダムネス、統計の基礎、不可逆情報損失のあたりのスケッチ。

7/1 (月)

学部セミナー (stability of matter): 発表者が膨大なノートをつくってくる ので、全部で何ページになったことやら。僕はいまのところ証明を追うのが一杯 で、気持のよい理解にはほど遠い。次はもっと大変かもしれない。

driven lattice gas: 有限サイズ効果を徹底的につめろ、、という段階なので 計算時間は長くなる。

先月の日々研究