日々の研究

日々の研究(リスト)

2/28 (木)

朝、渋谷のドトールで朝食をとりながら、かってな非平衡格子気体モデルから 対応するfluctuating hydrodynamicsを正しく導く摂動論を考える。とにかく、 動力学記述縮約の基本的考えに則って自分で摂動論を書いてみよう。多体問題も 絡んでくるが、一旦論点を切り離す。切り離せるかどうかはやってみないと わからないが。

昼間、偶然(でもないか)出会った清水さんから「マルコフ近似で..... 」という 話題をふられる。清水さんがどういう経緯でその問題を考えはじめたのか聞かな かったが、大事な問題なのに放置されているなぁと僕も思っていたことだった。 世界的な流行と無関係に、各研究者が自分自身の動機で客観的にも重要だと思う 課題をとりあげてきて議論する、というのは好きだな。

2/26 (火)

非平衡定常系の揺らぎ:あって欲しい理論の形は朧ろげにわかってきたが、 そこへの到達のさせ方で悩む。摂動/数値実験/現象論の課題を考えるも、 よい課題がわからない。思考が分断される箇所を検討すれば、結局のところ、 「多体系から(広い意味の)流体へ」の理解の貧弱さにいきついてしまう。 現象論側から大域的なhydro揺らぎを議論すること;現象論側から局所的な SST揺らぎを議論することは可能だが、両者を接着させるには少しミクロから の訓練が必要かもしれない。

ちなみに「多体系から(広い意味の)流体へ」は動力学記述縮約の問題のひとつ だが、形式化された手続きが使えない例題の典型例でもある(はず)。前から この手の問題をまじめにやろうと思っていたのだが、動機が湧いてこなかった ので放置していた。そういう意味でも丁度よいか。

2/25 (月)

「SST揺らぎの理論:再考にむけて」というノートを書いて、これから具体的に 考えていくことを絞りこんでいこうとした。ひとことでいえば、fluctuating hydrodynamics で記述される長距離の揺らぎとSST変分原理からきめる揺らぎ の関係や如何に、という問題につきる。無関係という答えもありえるし、矛盾 するという答えもありえる。(ただし、現象論で考える限りは、矛盾する、とい うのはたぶんない。) もっとも楽しいのは「関係あり」で、11月のノートでは やや強引に関係づけた。しかし、満足いく状態にはほど遠いので、再考する時期をま っていた。機は熟したので、再考する頃である。

70年代初等、化学反応系の運動論的記述における非平衡定常系の揺らぎと Einstein lawに従う熱揺らぎの間に矛盾があるのでは、という真面目な議論 がプリゴジングループから提起された。結局、両者が矛盾しない、というこ とに落ち着いたのだが、その議論の本質は、両者の間にスケール分離がある ので干渉せずに共存できる、ということにある。示したのは(蔵本方程式の 前の)蔵本さんだった。

fluctuating hydrodynamics とSST揺らぎの理論の場合も、スケールが違って 無関係になると、矛盾はしなくなる。だが、例えば、臨界点のあたりでは両 方がもろにかぶるので、どうしようもなくなるし、臨界点でなくても平衡か ら離れると fluctuating hydrodynamics は無原理状態になるので個別的に なってどうしようもなくなる。だから、単に「そうなったら面白い」という だけでもなく、関係してくれないと困る。しかし、、難しい。文章ばかり 10 kbyte ほど書いたところで完全に止まった。

2/24 (日)

連続系のcomplexityに関する昨日のノートはやっぱり変だった。symbolic dynamics におとすとどうも物理的な感じから遠くなる。難しい。外場 ビリアードで I と分割によるシャノンエントロピーの差の対応関係の 数値的な確立はますます大事に思えてきた。

SST揺らぎの理論の再起動とおもいきやノートがない。前のノートをどこかに おいてきてしまった。初心に帰って最初から丁寧に考えなおせ、ということ だろう。お。序盤から新しい展開になっているような。いかにも僕が考えそ うな路線なのに10月に考えた記憶がない。 ま、アイデアの最初は楽しい。 大概はすぐにつぶれる。

2/23 (土)

昨夜からの延長で、古典力学系のcomplexityの定義とそれによるBrudnoの定理と 不可逆性の理解に没頭した。ノート4ページ分書き殴ってmailでおくったが、数 学技術以前に、正しいイメージ(感じ)がもてていない気がする。

2/22 (金)

非平衡+相転移に関する諸問題を和田君と議論する。Onuki-Kawasaki理論(計算で なく物理としての論理の部分)、非平衡格子気体モデル、SSTからのアプローチの位 置付けをかなり理解したし、考えるべきことが明確になってきたと思う。

報告書の製本を依頼して、学部教務関係の書類と会議が2つ。この3日間頑張った ので、土、日、月と3日連続で研究時間がとれる。体調もよくなったし、 明日からSST揺らぎの理論をみなおして、長距離相関との関係を再考しよう。

講義ノート「熱力学とランダムネス」に関して、「orthodicsをcomplexityで 規定することはできないでしょう」という意見がきたので、深夜にふんばる。

2/21 (木)

書類。KISS。 書類。MS-Wordで仕上げるのは途中でギブアップして最後は手書き。

ガラスの議論。

2/20 (水)

朝から報告書草稿などの文書をばりばりと書いていく。夕食過ぎに予定していた のを全て終了。これで3/5(火)に業務終了を迎えれるめどがたった。そういう 意味でアクティビティーが高い一日であったが、虚しい。

ストレス発散のために、寝るまでに、時空測度と空間測度の関係をもう一度 みなおすことにする。非平衡定常系の統計力学の表現にしろ、平衡系の統計 力学の基礎的な側面にしても、結局ここにいきつくのでないか。大学院講義 でもすこしやったが、不満な点が色々とでてきた。今の理解と知見を土台に して、そういう側面を考えていくには具体的に何をしたらいいかをつめる。 3/6にすぐに課題にとりくめるようにいまのうちに外堀を埋めておこう。

2/19 (火)

増富君につづいて名大R研からのゲスト立川君のセミナー:2次元格子上の 結合 heteroclinic cycle 系。 空間的に乱れた安定周期解がおそらくO(e^N) 個でてくる、、という予想外のもので非常に面白かった。セミナーをきいて いると、筋書きは少しわかってきたが、これから先も楽しみだ。 3日連続で大学にとまった増富君といい名大R研は元気だな。

事務書類のWindows化に対応するために、Windowsのイロハを教えてもらう。 MS-Wordで書類をつくる作業は実に不安定だと思うけど、もう仕方ないとこ ろまできている。その後で大槻君と粉体系の今後の話しやら小松君とIの 今後の話しやら。

昨日の日記の中途半端な出題にしんしな考察をされた方がいたので、 きちんと設定を書くことにする。

2次元diskに大きさの異なる粒子を多数閉じ込めて壁(円周)を回転させる。重力も 考慮にいれる。壁では、shear流の標準MDのように衝突によって壁の速度でとばさ れ、かつ、垂直方向にはマクスエルになるように跳ね返すものとする。粉の動力 学の標準ルール(?)であるDEMでやれば、動径方向に大きさの異なる粒子が分離 する。(radial segregationという。) DEMには色々な因子が絡んでいるので、(i) まず、 粒子間接触時の接線方向の力 をなくす。そうすると非弾性衝突する粒子多体系になる。エネルギーは壁から供給 される。(ii) 次に、非弾性衝突をなくすと、境界だけでエネルギーのやりとりがあ る非平衡定常系のモデルになる。(iii) 回転をやめて、境界を弾性的にすると、完 全にハミルトン系になる。

問:(i), (ii), (iii) で radial segregation がどうなるか ? (大槻君が学会で ゲリラ発表するそうだ。) もちろん、こうした相の変化を理論的にどう考えるのか が本当の問題なんだが。

2/18 (月)

卒研発表会:大槻君のsize segregation。粉体系(DEM)、非弾性衝突多体系、 非平衡定常系、Hamilton系で平均運動エネルギーをそろえて、radial segregation の変化をみた。DEMは物理のモデルとしては最初から何もかもとりこみすぎている ので、何がどう効くかを最初に整理することからはじめようという戦略で、結果 も自明ではないように思う。(segregation の有無、および、その様子を直感で 予想できる人はmailをください。) 理論的なことはこれからだが、学生が主体的 に考えた卒研だから僕も楽しめた。発表には自作の実験装置をもっていってたのに 何故か「生実験のデモ」をしなかった。

増富君は渋谷でさか立ちするはずだったが、僕は先に家にかえったのでみそこねた。 (僕にさかだちをさせるためではないだろうが)、土曜・日曜とホテルに帰らず大学 にこもって計算していたらしい。1週間の短期滞在ではあるが、下手な観光より記 念になった。。?

2/17 (日)

休日にとある書類をつくろうと家にもってかえってきたのだが、気分がのらず 結局できなかった。それが気になってしまって、研究モードにも入れず最悪だ な。しかし、結果として休養日になり、お蔭で風邪もやっとなおったようだ。

休養なので本をぱらぱら読んだ。そのうちのひとつは、Li-Vitanyの5章 inductive reasoning。大学院講義のおかげで4章までの理解が深まったので、数年前に読ん だときよりは理解できたが、まだピンとこない。まさか、Kを上から馬鹿ちょんで 近似するという話しではないのだろう? もしそうなら、たしかに、全部確率の話 しになって、MDLもベイズで尽きるのだが...うーむ。

2/16 (土)

朝おきたら身体が鉛のようだった。今週は忙しさの山場を越えていると期待して、 ホテルを予約してなかったのが失敗だった。

昨日、渡辺君の日記をみて、e-mailでやりとりをした。僕がきちんと考えてい なかった指摘もあったので有意義だった。(その点については、今日はまだ考え 尽くしていない。) 渡辺君にしてみれば、セミナーの感想を直接僕に送りつける ほど僕に親近感もないだろうから、公開日記という手段がなければ、このやりとりは 成立せず、僕は渡辺君の有意義なコメントをもらえなかったことになる。

web日記の意義とかを真面目に考えるとおかしなことになる。備忘録なら公開する必 要がない、という指摘はもっともである。また、顔をみた議論;声だけの議論; e-mail による議論;掲示版での議論;日記を通じた議論の順で不健康になってい るだろう。しかし、後ろにいくほど予期せぬ人との予期せね議論が生じる可能性が あるとは思う。このあたりのバランス感覚が必要かもしれない。まだよくわからない。

2/15 (金)

朝と夕の会議にはさまれて、増富君の位相方程式に関するセミナーがあった。 月曜日の夕方に、僕か増富君のどちらかが逆立ちをすることになった。 僕が逆立ちすることになれば、 学問的には非常に面白いことになるので、どっちみち僕には楽しいからいい賭 けだ。(ここに書いたから逃げれないよ。)

2/14 (木)

佐藤(勝)のセミナー:テープの剥がれの考察。全体的には、自然に考えるべきことを ちゃんと考えているので、聞いていて気持ちがよかった。しかし、肝心の部分を「自 明」で逃げようとしたので、袋だたきにあうはめになった。

四方さんによる自身の実験の紹介。遺伝子発現と細胞間相互作用が絡んだある種の 不安定性が生じているらしいこと。gene tip で解析するにあたり、大事な変数を 抽出するアイデアをだせ、という理論家に向けたメッセージ。現象としては分かり やすいが、大腸菌の中の化学反応ネットをみると気が滅入る。遺伝子発現について は、いつか徹底的に勉強したいな。

院教務関係が明日の会議でおわるので、年度末に処理すべきことを整理する。 順調にいっても、3/5までは平日昼間の研究時間は0になることが確定し てしまった。1月は昨年よりは忙しくなかったが、尻尾は昨年より長いぞ。

夜、aging の実験の論文を読む。うーむ、わからない。

2/13 (水)

試験監督と会議。増富くんが来ていたのでちょっと話しをする。(摂動論で求めた 不思議な解が本当に実現するのかどうか、などそれに関連する色々。)

(研究以外の)今日の予定を全て終ったら、24:00か... 非平衡系の 長距離相関の位置付けが気になっているが、何もやっていない。

(保存量の)long-time tailが空間相関にうつれば長距離相関が生じるので、特別な 対称性がなければ、一般には長距離相関が生じる。ただし、平衡系ではこの対称性 があるから、長距離相関は生まれない。(ここまでは、誰でもが知っている。また、 巾のあらわれかたもだいたい理解したつもり。集中講義の講義ノートで書く。) ところが、この対称性は、space-time configration でみえるものなので、 (static) statistical weight にどう反映されるかが、自明にはわからない。 勿論、結果としては、statistical weightに表現されているはずであるが、 その原理(ルール)がわからない、といってもよい。ところで、SST があって、 それに対応する統計力学があるならば、そのstatistical weight について 何かいえるはずである。実際、ヒントはあるので、具体例をいじくっている うちに何かわかる気もするのだが。

あれ、2/9 (土)となんか似た話だな。うーむ。

2/12 (火)

押川さんのセミナー(低温の量子スピン鎖におけるESR):「処方箋」とよぶ(やや 不思議な)作業仮説にもとづいて、ESRの非自明な実験データまでひっぱってくる のは流石だなぁ。久保=富田理論や森=川崎理論が、「(講演者が)生まれる前の 理論として」最初に紹介された。蔵本さんが院生の頃は必読だったらしいこれら の論文を僕は読んだことがない。いつか読んでおこう。

会議*2の書記。

長距離相関の再考を開始する。あと1週間はまとまった時間がないし、まだ夜更し できる体調ではないのがつらいところだが。

2/11 (月)

試験とレポートの採点。

2/9 (土)

もう少しで体調が戻る感じなので、何もしない。

時系列の複雑さと配置の複雑さを space-time でまとめてみて、相互の関係を 捉えれる可能性はないのかな、と想像する。KS entropy と熱力学エントロピー の関係というのは、その関係に他ならないのだし。しかし、時系列の複雑さは symbolic dynamicsにおとした後の議論なので、space-time という視点ではみ にくいなぁ。誤解してるのかな。

2/8 (金)

試験。会議。他。途中ちょっとだけあいた時間にぼやーと考え事をしていたが、 まとまったものにならず。

体調は(やっと)上向きになってきた。もう治るだろう。今日も早くねて、まだ 薬を飲むが。丸1週間とんでしまった感じだ。

2/7 (木)

病院にいって薬をもらう。インフルエンザではないが、風邪がこじれ気味らしい。 明日の試験問題(統計力学)をつくって、最低限の事務仕事をすまして、寝る。

今月はまるで闘病日記だな。寝ている間に、途方もないことから目前のことまで、 色々と考えていることもあるのだが、熱にうなされて錯綜している部分もあって、 ここに書けるものでもない。

2/6 (水)

修論審査関係の山場終了。審査そのものより裏方任務の方が大変だったかもし れない。2日間かなり動いたので、熱なんかふっとんだかな... と期待して、 家で体温を測ると、うーん、単に麻痺していただけだった。

2/5 (火)

完調にはほど遠いが、修論審査の日なので、7時に家をでる。

講義ノート「熱力学とランダムネス」(ver. 02/02/04)を up しました。興味があれば御自由にどうぞ。(ただし、PDFの作成技能が ないので、gzipped ps fileです。) 今読むと、誤解を招きそうなニュアンス や説明不足なところもあるが、まぁいいか。

2/4 (月)

寝る。

2/3 (日)

ひきつづき寝る。

2/2 (土)

講義ノートのマイナーな変更をしていたが、体調不良なので寝る。 高熱があったようだ。

2/1 (金)

会議やら何やらのあいまに、講義ノート「熱力学とランダムネス」をちょこちょこ 改訂。熱力学極限をとれるような相空間上での computability の解説をAppendix F としてくわえた。texのsource file が48kbyte まで膨れているが、ここまでは、 色々な文献を「熱力学とランダムネス」という視点で再構成しただけで、 学問的に新しいことはない。Brundnoの定理の古典力学+熱力学極限version の表現をあたえて、その証明をやれば、ちょっとだけoriginal partが加わるかな。 できるかどうかはわからないが、練習問題を解くような感じだと思う。 このレベルではまだ研究ではないが、 面白そうなことの土台にはなっている気がする。休日にそこまでやって、 来週にweb公開しよう。(24時付記:ノートに向かってかきはじめたが、 1日で解決する練習問題ではなかった。もっともらしい証明の筋はすぐにわかるが、 「道具だて」を原始的なレベルから構成しないといけないようにみえる。 問題提起をして講義ノートを終えることにしよう。)

清水さんのSSTへの意見 がある。清水さんには歩きながら喋ったし、web上で 細かい意見交換するのはやめる方針なので、簡単に。清水さんが例題にしている 電流系の配置は、僕等が議論しているSSTの配置ではない。最終的には、local steady state の接続で広いクラスの定常状態を議論したいが、いまのところ、 SST変数を選べる配置は限定されている。(何でもかんでも熱力学の拡張を仮定 するのでなく、拡張できるとしたらどういう制限がつくか、という点を明確に したというのが昨年の進歩だともいえる。) Sasa-Tasaki論文の熱伝導系や林さんが 数値実験やっている格子気体系は(今の)SSTで議論できる系の例である。

そういう意味で先は遠いし、ほんまにSSTが大事になるのか、という不安はある。 しかし、物理実験系として明確な熱伝導系に対する非自明で定量的な予言は無駄 ではなく、その検証をすることは非常に重要だと思う。それが本当に成立するな ら、それは普遍的なものであり、そこを足場にして次にいけるのだ。

先月の日々研究