日々の研究

日々の研究(リスト)

1/31 (木)

D論審査。中垣さんのセミナー。粘菌が最適化問題をなんとなく解くことはそ んなに驚かないが、パタン形成的な視点では不思議な振舞をしている。しかし、 もっと気 になるのは、「人の手が関与した粘菌」と「wild typeの粘菌」の情報処理能力の 違いかな。(前者の「関与」には、色々な側面があるのだが。) 人間の心理実験 -> 猿の実験 -> ねずみの実験 ...という連鎖の先に、粘菌の情報処理実験があると考 えていいのかどうか。パタン形成の問題としてでなく、生物の問題としてみるとき に、素朴に思う論点だと思う。セミナー後の雑談で、大腸菌はどうだ? 砂はどう だ? ということになって、大腸菌や砂に愛を注いでいる人たちの話になって しまった。

1/30 (水)

講義ノート「熱力学とランダムネス」:1/25(金)に書いた主張は、 可逆CAの場合は(おそらく)いいのだが、古典力学への移行が自明ではなかった。 誰でも思い付きそうなアイデアの無意味性を確認して、 手足がふさがったかのように思えた。しかし、1/26(土)に書いたノートをみていると、 Brundnoの定理を古典力学系の熱力学極限versionに読み直し、それを証明する、 という技術的な側面から考えたくなった。お、 そっちからは「答え」が見えそうではないか。 Brundnoの定理の証明を最も簡潔な形で整理しておいてよかった。やはり、 知識の整理も大事だな。(物理的考察抜きですすんでいるから、 最後までいくかどうかはわからないが。)

1/29 (火)

統計力学講義:吸着の問題をグランドカノニカルでやって最終回を終える。

書類等をだだーと処理して、講義ノート「熱力学とランダムネス」を考える。 技術的なことは明日改訂の仕上げをすればよさそうだが、根本的なところで 白紙に近いくらいわからなくなった。

1/28 (月)

7時に千葉をでて、M論審査やD論審査。どちらの審査も時間が長引き、 予定していた書類の処理を明日に積み残す。ただし、 M論審査(=林さんのSST検証の話)では、 佐野さんや清水さんから貴重なコメントをもらい、 僕(や林さん)にとって非常に有意義だった。(まるでセミナーのようだった。)

講義ノート「熱力学とランダムネス」:今日は改訂する時間はなさそうだが、 書くべき内容がどんどん増えている。

1/27 (日)

講義ノート「熱力学とランダムネス」の改訂:平衡状態に対応するミクロ状態と は何か、に対する意見を変える。M-Lテストよ、さようなら。(今日のところは。)

さぁ、学会予稿やらD論の読みやらをやっつけよう。

1/26 (土)

講義ノート「熱力学とランダムネス」の改訂:ランダムネスの数理に関する必要最小 限の説明を加えて付録にまとめる。本や論文を読んで理解したこと書いていくだけな ので、研究しているときと頭の使い方が違う。(こんなことばかりしていると阿呆に なる気がする。) とにかく、complexityとエントロピーの関係を論理的に納得する 最短構成になったと思う。

1/25 (金)

講義やらD論審査やら提出書類やら、きょうやるべきことを全部こなした、と思ったら、 忘れていた用件が3件もあった。手帳への書き込み不足だ。何故か昨年よりは忙しく ないように思える。忙しさが限度を越えると、細かいことまで全部書き込むからミス も少ないが、中途半端な忙しさだと、細かいことは手帳に書かないので忘れてしまう。

ミクロ状態に対して平衡と非平衡の区別をランダムネステストによってあたえ、ミ クロ状態の関数としてのエントロピー(ミクロスコピックエントロピー)を配置の complexityで定義すると、平衡に対応するミクロ状態ではミクロスコピックエントロ ピーの示量部分と熱力学エントロピーが一致する、というのが大学院講義最終回の 主張(のはず)だった。

この主張に対して、(i) 軌道の複雑性と力学系の測度論的エントロピーの関係を示す Brundnoの定理 と (ii) 1次元写像系と1次元格子統計力学の対応関係から、自明で ないか、というコメントをもらう。たしかに、(i), (ii) を両方みとめると、その まんまにも思える。で、Brundnoの定理をちゃんと読もうとするが難解だ。

何にせよ「主張」の表現を数学的に書いてしまえば、定理として確立しているのは 間違いないので、証明を整理しておこう。そして、この「主張」を原則にして、非 平衡から平衡への時間変化を議論しようぜ、という問題設定ができることになる。

1/24(木)

大学院講義:最終回も時間終了間際、講義の山場を迎え、「主張」を提示し、その 説明にはいっていくと、、、あれ?。考えていた説明は不十分だった。その場で回 復を試みるも、虚しく時間が過ぎていく。とっさに「ウルトラマンの最終回では、ウ ルトラマンはゼットンにまけて死ぬんだ。」と言い放ち講義を終了してしまった。

主張そのものはあっている(だろう)し、もうすこし綺麗な表現になおせる(だろう)、 ということは、夜中に頭の中ではわかった(つもり)。休日に紙に書いて講義ノート 改訂版をつくろう。

1/23 (水)

大学院講義ノート「熱力学とランダムネス」の草稿を書いて、(講義にでない)有志 の人たちに送る。講義をうける人には、明日 down load できるようにする。講義で の説明や議論を踏まえて、問題提起として意味が残りそうなら、改訂したのちにweb で公開する予定だが、まるっきりナンセンスかもしれない。

明日とあさってはちょっと大変なので、金曜日の講義の準備をはじめる。

ええええ。ちょっと気が動転。 牧野さんの日記(1/22)で今知ったが、島田くんが 遭難した? 僕の京大時代の友人で、妻の高校時代のクラスメートの島田くん?..... 牧野さんが書いているのだから、同姓同名の間違いってことはないか...

1/22 (火)

昨夜弱気になったが、寝ている間に正しい見方がわかった気がする。頭の中 ではまずまずかもしれない。(数学として証明できるかどうかはともかく。) 早速つめたいところだが、本郷にいって修論審査をして、佐野さんとSSTと 生物の話をしていると夕方になった。さぁ、これからだ。

1/21 (月)

量子論でのランダムネスとかどうなっているのかなぁ、と思っていたら、 non-commutative Martin-L\"of randomness の議論がやはりあった。W^*の言語、 ということだけ見て横におく。thermodynamic depth やら epsilon-machine やら 論点が近そうな議論に一応目をとおすが、いきなり実用に走っている気がする。 武末さんのCAの論文たちや斎藤さんらの2d-CA論文(斎藤-武末-宮下)を見る。後者 の論文は、SSTに使えないか...と気になったが、そっちは休憩中なので(今日は) 追求していない。

熱力学とランダムネスは、(いまのところ)もうひとつである。今のままだと、揺らぎの 理論(large deviation)を計算論的に厳しくみているだけになる。やや面白い視点では あるし、この講義ならではの側面でもあるが、肝心の熱力学エントロピーは遠くなる ばかりである。Martin-L\"of にベースをおいて、平衡状態を「合格」とするような テストになっているからいけない。おそらく、「○点で合格」という指標がいるの だろう。ううむ。奇跡がおこらないと木曜日には間にあわないな。

1/20 (日)

長女のパソコン:ラックを組み立てて、プリンターとインターネットとメールを使え るようにする。なるほど、これらはさすがに誰もが使うものだから、設定しやすいよ うになっている。

講義ノート「熱力学とランダムネス」の続き。後半は疑問文ばかりになってきた。 講義ノートというより(個人用の)研究計画書みたいだ。武末さんの保存量のある 可逆CAを例題にして議論しているが、そのCAに関する現在の理解の到達点を知ら ない。明日からその調査もはじめよう。

1/19 (土)

講義ノート「熱力学とランダムネス」の続き。発想はきわめて素朴で、統計力学に 関する次の2つの疑問からきている。(i) 平衡状態に対応しない力学状態(=相空間 の点)を見出すのはきわめて簡単だが、平衡状態に対応する力学状態の特徴づけは簡 単ではない。これをどう考えるのか。(ii) 典型的でない初期条件から典型的な状態 への時間発展が緩和である、という古くからある(直感的には正しい)言明におけ る「典型的」とは何か? (大数の法則に従う)巨視変数の値をもちだすのが普通の議論で あるが、力学世界で考察するときに巨視変数を最初から知っているはずもないし、 特定の巨視変数をもちだすのは恣意的ですっきりしない。 大学院講義を受けた人はピンとくるだろうが、(i), (ii)ともにランダムネスと関係 している。そこでこの関係についてまじめに考察したノートを書こうとしているの である。

1/18 (金)

来週の大学院講義「エントロピー概論」の最終回は、「熱力学とランダムネス」を 議論するので、早々に準備をはじめる。(最終回特別版として)講義ノートをtexで書 く予定である。題目からして、 Zurek, Gacs, Li-Vitany らの話を思い出す人もいる だろうが、(関係はするが)そのものではない。僕自身が漠然と考えていることの論点 を講義でやったことを踏まえて整理したい。1節の背景は順調に書いたが、2節の 具体的なところで混乱して、完全にとまってしまった。

1/17 (木)

KISSの途中で10分くらい居眠りしてしまう。眠りから醒めたらすぐに質問しないと な、、というので質問する。

大学院講義:黒板の前で立ち往生する。符号のミスがあったり、簡単な不等式の評 価がでねぇぞ、、、と10分くらい(もっとか?)とまる。大学院講義はあと1回ら しい。シャノンやらずに最終回を迎える、という不思議な「エントロピー概論」に なってしまった。

SST:ううううむ。色々とわからないことが続出。よきことかな。

1/16 (水)

明日の大学院講義「エントロピー概論」の準備をする。coding theorem の証明の スケッチとアプリオリ確率の話。理解した状態にはほど遠いが、かなりの時間勉強 したので、complexity入門の入口くらいには到達したかもしれない。今週の prefix complexityを踏まえて、来週シャノンにいって、最終回は熱力学に戻る(予定)。

1/15 (火)

事務的な仕事を2時間くらいして、physics of fluids の論文をいくつか読む。 うーぬ。うーむ。頭を抱える。シアトルから送られてきた論文に目をとおす。 10分で価値判断ができなかったたので、しばらくもちあるくことにする。

和田君の修論をうけとる。SSTを前提にしたGL現象論でスマートに臨界点移動を議論 していると思う。もちろん、SSTがこければ無意味になる。SSTの生死は和田君のM論 の学問的な生死と直結するので、12月末に悩んでいたSST等式の粒子レベルからの 解釈について議論する。

寺田君の修論原稿も届いた。「何故か」あちらをたてればこちらがたたずで、熱力学 極限が遠く、I = ΔS の決定的証拠に到達しなかった。しかし、苦闘のあとを残すの は、将来の研究にとって意味があると思う。I の話は、1年以上論文改訂版をつくら ないまま放置しているので、今年は僕も格闘せねば。

林さんの修論にコメントする。非平衡格子気体系におけるSST等式の右辺を横軸、左 辺を縦軸にしたとき、データが対角線上にピターと並べば「感動もの」である。林さ んの結果は、だいたい対角線近辺に密集しているのだが、精度との闘いが残ってい る。高密度側で、(いかにもバグっぽく)ぐにゃとずれているのも気になる。林さんは 系統的に誤差が生じる候補をみつけたみたいだし、学会までにはピターとならんかな。 (そのうちに僕も数値実験をやろう。精度との闘いは得意ではないけれど。)

読まないといけないD論3つは積まれたままだが、、ちゃんと読みます。

1/14 (月)

「Oono-Paniconi再考」というノートを書き始める。熱力学関数をつくるだけなら Sasa-Tasakiで十分だが、熱や仕事の関係まで踏み込むと、Oono-Paniconiの改訂 版が必要になる。問題点は理解しているつもりだが、仕上るかどうかはいまのと ころ不明。

1/13 (日)

長女のパソコン/プリンター/ラックを買う。安い。僕がはじめてパソコン(のみ)を 買ったときの半額だ。もちろんメモリーもCPUも比較にならない。僕も使い方がよく わからないので、少しは使えるようにしよう。(家で使っていたノートパソコンは windows だったのだが、トラブル続出で、頻繁にリセットボタンをおしていたので、Linuxを いれてもらった。その後は快適である。) 先日の会議でも、書類をWindows (MS-Word ?)でやりとりする方向の議論があった。どうも unix で仕事をするのは少数になって しまっているようだ。

1/12 (土)

磁性体の場合、磁化=0の状態から磁化させるのに必要な仕事を(特別な配置を 考えることによって)操作的に議論できる。同じように、温度を一定に保った まま、Ψ=0からΨが有限の状態に変化させるときの仕事については、明確に なっていないままだった。こいつをきちんと考えねばならないが、色々とわか らない。

1/7の夜に考えたことをノート化しておく。

1/11 (金)

朝:膨大な数の〒がきている。いったい何から処理していいものやら。

統計力学講義:ゴムの統計力学。ゴムの熱力学の復習のあと、(標準的な)折り畳み モデルを導入してエントロピー経由でばね定数が T に比例することを説明する。 ついで、ゴムの端に点電荷をつけて一様電場でゴムをひっぱると考えると、、、 というところで次回。

夕方会議:これからの一か月が1年でもっとも忙しい(はず)。

夜:眠いので、布団の中で考えることにしよう。

1/7 (月) - 1/10 (木)

京都の京北町で「応用解析チュートリアル」があった。明日、駒場で講義をするた めに、今日の昼に京北町を離れた。モジュラージャックがなかったのでinternetも つながらず、TVも新聞も全くみない4日間だった。体調不十分な状態ででかけたが、 次第に体調はよくなっていった。

北大の柳田さんから中江君がやっていることの実験や粉体に関して教えてもらう。 那須野さんから「楽しい現象」を教えてもらう。初日はこれを考えていると夜中 になり、興奮して寝れなくなってしまった。チュートリアルの間中、この現象に ついてあれこれ議論することになった。大信田さんや飯間さんからも意見もきき、 とくに大信田さんからは、夜中に速攻でやった具体的で(楽しい)計算結果を教え てもらう。しばらく、わくわくしながら過ごすことになるかもしれない。

生物対流やっている泳瀧君から熱対流との比較実験について聞く。(生物性がどれくら い効いているかはともかく)、現象が面白いし、実験としての精緻なデータを地道に とっていくだけでも、次の刺激につながると思う。

藤原君や京大吉川研/蔵本研の面々(M1 5人と坂上君)は元気だった。今度京都に いったら吉川研に遊びにいこう、という気になった。やらされている雰囲気がな いようにみえたし、何か面白いことやったろ、、という気概があるようにみえた。

講義:僕と那須野さんの粉体以外は、数学者3人が講義した。(東北大の)柳田さん の歪勾配系という数学的な形式からはいった反応拡散系の話は、(想像していたよ り)面白かった。ひょっとしたら、物理法則にも関係するものがあるかもしれない なぁ、、と途中から夢想した。新居さんからホモロジー群をおよそ17年ぶりに聞 くことになったが、初等的なところから講演してくれたので段々と思い出した。こ れを力学系にどう使うのか是非知りたかったが、(途中退場のため)聞けなかったの は残念だ。木村さんのHele-Shaw問題は、ゼロ表面張力での等角写像による解の構成 まで聞いて途中退場。有限の表面張力の場合の扱いをどうするのか知りたいが、 講義ノートにも書かれていない。修士のときに読んだHele-Shaw問題のreviewも かなり(ほとんど?)忘れていて、物理的に何が未解決で何が解決しているのか自分 の頭の中でも整理できていない。典型的な問題のひとつだし、いつか再勉強して おこう。

僕の講義は、(i) 熱力学 - エントロピーまで - (ii) 熱力学 - 変分原理から 温度/圧力/自由エネルギー/化学ポテンシャル (iii) SST をだいたい2時間 づつ。応用解析のチュートリアルでこのような講義をするのは、尋常ではない よなぁ。しかし、(熱力学をあまり知らなかったのに)、その場で熱力学をある 程度まで理解して、楽しんでくれた人がいたのは嬉しい。

1/6(日)

明日から京都で応用解析セミナーがあるので、頭をそっちにもどさないと いけないのに、体調不良のため終日寝ていた。

SSTと壁:ミクロレベルからの研究戦略を再考するも、クリアーな方針がたたない。

1/4(金)

日の出の光に赤く照らされた富士山をはじめてみる。

「草枕」、「集合とは何か」、「R.P.G.」を読む。「草枕」の詳細を楽しめる程の 教養はないが、この最近無性に読みたくなっていたこともあって、いままでで一番 はまった。「集合とは何か」のようなブルーバックスがあるのか? 埃をかぶった 集合論の本をとりだして数年前の続きを読もう、という気になった。本屋にならん でいたので手にとった「R.P.G」は、なるほど売れるのはわかる気がする。

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