応用解析tutorial・冬の学校 2002年1月7日-1月11日 京都・京北町
12/28(金)
年のおわりは記憶に残る。
97年の今ごろは、Lieb-Yngvasonの公理できめるエントロピーを(ある種の)くりこ み群の固定点としてあらわす、というわけのわからんことをやっていた。理想気体 の場合はたしかにそれでエントロピーが求まるのだが、一般的な場合にどうなって いるのか、関数方程式を数値的に解いたりしていた。また、ちょうどその頃、田崎 さんと熱力学に関するやりとりををはじめた。
98年の今ごろは、力学系の勉強をして、操作に対する応答の数学化を模索していた。 (小松君とやったH_exの話を数学的に詰めようとしていた。) 知識は増えたし、ノート もいくつか書いたが、どれも成熟しなかった。
99年の今ごろは、2年生のセミナーを延長して、バナッハ=タルスキーのパラドク スの仕上げをやっていた。同時に、パリティー原稿書きを兼ねて、熱力学と力学の対 応をはじめて書いた。(今その草稿をみると、焦点がいろいろおかしい。)
00年の今ごろは、SSTの現象論と格闘していた。実験や数値実験の結果をみながら ありうる現象論の可能性を模索していた。12月中の完成をギブアップし、年あけ の1月8日に原始的な version を書くのがやっとだった。
ふりかえると、97年のおわりと00年のおわりが面白かった。そして、 98年と01年は、個人内部の学問的な進歩という意味で、productiveだった。 そうすると、今年がこのままおわってはいけない気がする。危機的な状況を一旦 脱出して、ほっとしてしまったせいか、どうも頭がまわっていない。あと1日か 2日で来年につながるような試行を残したい。
よいお年を。
12/27(木)
今ごろになって書類3セットが舞い込み数時間をつぶす。部屋の掃除をしようか と思ったが、やる気をなくした。
12/26(水)
マクロからミクロへ:5月上旬、SSTの典型例としてFIOという現象に焦点があたる。 非平衡性に由来する新しいカテゴリーに属する力が存在することを主張するので、 最初、SSTを疑い、2日間混乱し、3日目にやっとこれこそがSSTの本質だと了解した。 8月上旬、FIOに関する定量的な関係式 -SST等式- を書き下す。SSTの検証につかえ るだけでなく、ミクロレベルとの対応を理解する鍵であることが後でわかる。 12月23日、希薄気体熱伝導系においてSST等式と等価な(運動論レベルでの) 「力のバランス」の表現を書き下す。当初、神秘的だった「謎の力」はだんだん と地上におりてきた。このつぎは、運動論レベルの「力のバランス」から粒子力学 レベルの描像に到達するのが目標になる。
形式的なレベルでやることはわかっているので、絵をかいたり頭の中でもにょも にょ計算したりしているが、何か見通しが悪い。混乱もある。しのごのいわずに 閉じた式を書き下してから考えればいいのかもしれないが、過去の経験からここ はもうちょっと頭の中でみた方がいい。
12/25(火)
今年最後の委員会での実務作業。修論、修論、修論。1月上旬〆切というのは提出 者には厳しい日程だと思う。正月に休みたければ、12月中に完成させればいいの だろうけど、そうもいかないだろうから。
僕がいままで自覚したストレスのなかで、もっとも厳しかったのは修論を書くとき だった。学問的に意味のあるところまで到達していない研究しかできなかったのに、 自分なりの方向性を何とか書く、というのがしんどかったのだと思う。
ここのところ睡眠時間が少なかったせいもあって帰宅後ダウン。研究がない 典型的な一日。
12/24(月)
10月にあった統数研研究会の報告書「熱力学の論理と動的システム」を書く。 〆切は先週金曜日だった。
SST等式の運動論的導出:SST等式は分布関数の定常境界値問題(右遠方に熱 伝導系/左遠方に平衡系)を解析することによっても得られる。(正確には、そういう 分布関数のPDEモデルを与えることができる。) これは今の理解を単に式で書 いただけなので本質的な進歩ではない。しかし、あれこれ考えていると、熱浴の 温度と壁ぎわの運動エネルギーの関係もわかりそうな気になる。そのためには、 もう一歩だけミクロ側に近付かないといけない。そこはまだ霧がかかっている。
これに関連する問題がたーくさんつながってきているように思える。具体的な道が ついたわけではないが、想像をめぐらすと楽しい。
しまった。「安寿子の靴」の再放送をやっていた。17年前たまたまみて印象に 残ったのだが、録画しておけばよかったかな。
12/23(日)
ノート「希薄気体熱伝導のSST」を最後まで書いて、何人かの人におくる。12/18に 書き始めたものの一応の区切りである。運動論との整合性も(今日のところは)よい ように思える。「熱流をとめて粒子を通過する」壁による定常状態と平衡状態の運 動論的なバランス条件は、SST等式と一致する、というのが主張である。この主張が 正しければSSTの基盤がさらに強まったことになる。(もうちょっと寝かす。)
和田君の修論初稿を最後までよむ。細かいところはともかく大きなコメントの チェックをいれる。そろそろ林さんの初稿が届くころか? 寺田君の初稿はいつ だっけ。
12/22(土)
希薄気体熱伝導のSST:水曜日から手を動かす時間は全くないのだが、イメージは次第 に固まってきた。ちょっとだけ普通とちがう(がもっともらしく思える)仮定をいれる と、運動論的考察で欲しい保存則がでる。明日のノートでどこまで理由づけできるか が問題だが、今日のところは嬉しい。
エネルギーがこう移動して...という考察で頭がいっぱいになると、ふと、コルモゴ ロフの41年の論文を思い出した。たしか3ページかそこらだったと思うが、感動 的にすばらしかった。物理的な洞察で乱流の本質を捉え、最小の仮説で本質的に新 しい予言をする。コルモゴロフは、確率論、ランダムネス、力学系でも馴染みの名 前だが、いったいどういう人なんだろう? そういえば、記念論文集みたいな本を 買ったがまだ読んでなかった。
12/21(金)
統計力学の講義:臨界現象。気液臨界点の実験結果と3次元Ising modelの数値計算 の結果をならべると、素朴にすごいよなぁ、と思う。なんだかんだいってもやはり 臨界現象は面白かった。ただし、講義で具体的にやってみせるのは、平均場近似まで。
希薄気体熱伝導のSST: 運動論的考察をすすめるために、定常熱伝導系から平衡系 に空間的に段々とうつりかわっていくような配置を考える。壁の部分を大きく拡大 したようなもの。熱流が消えていく過程で、圧力と密度がどう変化していくのかを 論じればよい。希薄極限の運動論的考察で、火曜日の「意味不明な」フラックスと 一致する保存量がでてくればいいのだが...。
12/20(木)
大学院講義:測度で相対化したランダムネスの概念は、何人かの人にもいわれたが、 僕も落ち着かない気分になる。
12/19(水)
昨日の日記の「初等的に」というのは、おかしな表現だった。ニュアンス的には 「(次元解析と雰囲気だけで)えいやぁと」という感じである。論理的なものでは ない。結果として、SST等式と整合する運動論的条件にはなっているが、それが どういう物理的状況に対応するのか定かではない。
昨日は27時くらいまでこの物理的状況を考えていた。わかるような気もするが、 いまいちバシとはまらない。今朝も気になったのでついつい考えてしまい、明日 の大学院講義「エントロピー概論」の準備開始が大幅におくれた。
明日の大学院講義は、ランダムネスの2回目。自分自身の理解が非常に浅いので、時 間がかかる。読みたい文献も色々とでてきたが、まずは明日の講義の体裁を整えない といけない。結局、(コイントスでの) universal MLテストが plain Kolmogorov complxityで書けることの説明を与えて、その後でコイントスを一般に拡張したML テストに展開して、coding theorem を提示しておしまいにする。(ノートはいまか ら作成。) coding theorem の考え方の説明は prefix Kolmogorv complexity とと もに正月になる。ランダムネスからエントロピー的なものにだんだんと近付いてい く。
12/18(火)
散らかった紙の裏の計算のうち意味がありそうな部分を保存するために、ノート「希 薄気体熱伝導系のSST」をかきはじめる。運動論との対応のところで手がとまり、瞑 想モードにはいったが、先週悩んだおかげで、論点の整理が完全になってきたし、頭 の中で式をいじれる状態にはなっていた。
で、やっとSST等式と整合する運動論的条件がわかった。もっとも「初等的に」フ ラックスつりあい条件をかきくだすと、これがSST等式そのものを与える。金君が 解析した(僕も正しいと思っていた)フラックスつりあい条件と初等的なフラックス つりあい条件は、平衡分布以外では微妙にくいちがう。この微妙なずれがSST等式 の微妙な破れになっていた。
次の問題は、それぞれのフラックスつりあい条件がどういう物理的状況に対応するか をはっきりさせることである。もし「初等的な」フラックスつりあい条件に対応する 物理的状況がなければ、SSTを撤回せざるをえないかな。逆に、「初等的な」フラック スつりあい条件に対応する物理的状況がgenericにあれば、さらにSSTをすすめていける だろう。(ノートを仕上げて関係者におくりたいが、予定表をみるとまとまった時間 は月曜日までとれない。)
12/17(月)
前々から聞きたいと思っていた西浦さんの話をきくために、本郷(佐野研)のセミナー にいく。ひとことでいえば、反応拡散系における invariant manifold approach に他ならないが、saddle-node bifurcation近傍では、解が消えたあとの話なので、 もっと詳細を聞きたかった。また、n-pulse SN-bif の縮退は特異異的なのに genericなのも面白い。そして何より、物理の人がおおらかなレベルでも到達していな いところまで、数学(の証明つき)で切り込んでいるのも素晴らしい。もっと議論を 続けたかったが、西浦さんの都合で2時間で時間切れ。
それに前後して、佐野さんと村山さんにSSTの実験検証の話を聞いてもらう。 はずかしながら具体的な実験測定技術について色々と無知だったので非常に 勉強になった。近日中に具体的な実験系のデザインと測定方法を書いたメモ をつくることにする。正月冒頭には、応用解析セミナーで那須野さんと何日 かすごすので、そのときにも実験検証の話をしよう。そのときに大信田さん ともSSTの物理的な理解についても濃密な議論ができるだろうし。
12/16(日)
長女のピアノの発表会。SSTをめぐる状況を整理しておこう。 5つの仮説や理論の 結果がある。
(i) SST等式 (= SSTの典型的現象であるFIO に関連した定量的な関係式; Sasa - Tasaki 論文に追加) (ii) SST揺らぎの理論 (= SSTの変分原理から期待される自然な揺らぎの 表現であり、平衡近傍でのFIOの定量的な計算を可能にする。) (iii) SSTエントロピー と分布関数のシャノンエントロピーの関係 (iv) ボルツマン方程式の熱伝導解 (v) 孔を介した粒子流バランスによる定常状態の実現.
これらのうち、(i) + (iv)+ (v) は矛盾する、というのが金君の計算結果であり、 計算の詳細はフォローできないが、計算の方針や結果の解釈については僕も同意して いる。ただし、平衡熱力学の浸透圧の議論を思い出すと、(v)というのがどうも特殊 すぎる気がしてきたので、新たな検証命題を考えたのが先週の試みである。その 結果、(i) + (ii) + (iii) + (iv) が矛盾することになった。
ただし、(i), (ii), (iii), (iv) のうちでは、 (iii)は「とりあえずの仮説」 程度のもので、深い考察を経ていない。最終的には、分布関数とSSTエントロピーと の間には何らかの関係があると思うけれども、それば物理的な考察を経て提案され るべきものだと思う。とくに、先週金曜日の夜に、ボルツマン方程式の熱伝導解の 分布関数のシャノンエントロピーに関して、分子に依存しない「ある関係式」があ りそうだ、というmailを金くんからもらって以来、シャノンエントロピーとSSTエン トロピーのありえる関係を模索しているのだった。
残念ながら、今日の時点で、(i) + (ii) + (iii) + (iv)が整合する論旨は見つかって いない。僕は、ボルツマン方程式に非平衡補正がつかないはずがない、という考えが 消えないものの、かりに (i) + (ii) + (iii) + (iv)が奇跡的に整合したら、一挙に SSTの信憑性がますので、ついつい力がはいった。当面、(iii)についてもうちょっと 考えたい。
実験結果をみたくて仕方ない。希薄気体熱伝導ならば、FIOの定量的な値もわかって いる。(ボルツマンから解析してもSST揺らぎの理論から解析してもFIOのオーダーは もう確定している。) 問題は熱伝導性のいい素焼きの壁の用意だけだと思う。
熱伝導系の数値実験ができないか、とも考えているが、これも「熱伝導性のいい素焼 きの壁」のモデルにつきている。問題が逆なんだよな。普遍的な枠組がわかれば、壁 のモデルができるのであって、壁のような泥々したものの実効的なモデルが普遍的な 枠組の前にわかるわけではない。もちろん、普遍的な枠組を(相対的に)ミクロから理解 することに成功すれば、壁に関する物理をきちんと抽出することができて、数値実験 も可能になるが、そうなったときには、SSTのミクロからの理解も同時にできている だろうから、そうなった時点で数値実験をする必要性は薄れる。
「熱伝導性のいい素焼きの壁」なんてどこにでもありそうだが、なすのさーん、佐野 さーん、、、誰でもいいから実験やってくれぇ。(自分ではできないしなぁ。)
12/14(金)
統計力学の講義: 計算間違いだらけ。(学生さんにたくさん指摘してもらう。) SST vs ボルツマン:僕は、計算間違いだらけ。 希薄気体熱伝導におけるFIO 係数αの普遍性に関連した等式がボルツマンで成り立つかどうかの確認を金君 に小さな声でお願いしたら、速攻で計算結果が帰ってきて、なんと....(to be continued). 計算するとき手がふるえてしまう。落ち着かねば。
12/13(木)
半透膜やら多孔壁の実体はいまいちわからない。フラックスバランスで議論 することが多孔壁に対応しないかもしれない感じはわかってきたが、正しい 考え方はわからない。
うーん、と悩んでいたら、夜、5月にノートを書いた「SST揺らぎの理論 (local version)」を思いだした。それを使えば、希薄気体の osmosis に関しては普遍的な 結果になるではないか。熱伝導の希薄極限では、FIO は 質量、熱流、粒子数密度、 温度、で次元依存分をあらわすことができ、その数値因子 α は、分子の種類に よらず、2/35 (=0.057) になる。(実験でSST等式を検証できたら、その次はこ の数値の確認だな。揺らぎの理論がないと統計力学もないのだから。)
SSTエントロピー = シャノンエントロピー を仮定して、金君の剛体球データを つっこんで(火曜日に)計算した値は、α=0.027 なので、揺らぎの理論の結果と 違ってくる。うーん。(色々な可能性を考えれるのだが..。)
12/12(水)
壁のことが気になったので今日やるべきことの開始が大幅に遅れる。ふんぎりを つけて明日の大学院講義「エントロピー概論」の準備をはじめたが、何度も構成 の変更をしたので、講義のスケッチができたときには日がかわっていた。明日の テーマはランダムネスである。
Kolmogorov complexity を定義してinvariance theorem を示して..... という 風にはやらない。僕がはじめて勉強したとき、そういうので勉強したが、途中で 寝てしまった。問題の核心はランダムネスの理解の仕方にあるのだから、 Von Mises --> Martin-Lof --> Lambalgen という展開が僕にはもっともピン とくる。Von Mises や Lamgalgen には深入りしないとしても、 Martin-Lof を基本 におくのがもっとも自然な気がする。そういう前々からの気分をうけて、明日の メインを randomness test の話にした。(無茶かもしれない。)
もちろん Martin-Lofの醍醐味は、Kolmogorov complexity (plain & prefix version) と組合わせることによって得られる。それらの関係は来週にする。(大丈夫か?) いくつか文献を読んでいたら、もっとうまい論理展開もありそうに思えてきたが、 自分で数学的な部分をうめれないのが悲しい。(とくに、確率論がらみは証明をおう のも時間がかかる。不等式のセンスがない。)
12/11(火)
ボルツマン方程式の解 vs SST: ボルツマン方程式の定常熱伝導解から構成した シャノンエントロピーをSSTエントロピーと同一視して、平衡系と定常系の接触 の結果として生じる圧力差や粒子配分やエネルギー配分を計算する。計算が正 しく終了したのは、26:30。単純な計算間違えに加えて、情報論の誤解や SSTの誤解や理想気体の誤解などで一時は相当混乱した。(やっている時間は ぶつぎれだけど。)
その同一視を出発点にして、状態方程式の圧力補正を導出し、それがボルツマンの 解からもとまったものと一致していることを示せればいい、と思っていた。しかし、 よーく考えないとわからなかったのだが、できることは、SSTエントロピーと状態 方程式の圧力補正の両方を仮定して、平衡系と定常系の接触の結果として生じる 圧力差や粒子配分やエネルギー配分を計算することでしかない。 金君におしえても らったデータを代入すると、ほう確かに 状態方程式の圧力降下を補うような粒子 数移動があり、FIO は成立している。
しかしこのままでは、ボルツマンの内部での検証命題がない。(多孔壁のモデルとし てもっとも素朴に考えた「孔」を介した粒子流バランスでつくる定常状態は、既に SSTと矛盾したものとして、論点を分離している。)
12/10(月)
ボルツマン方程式の解 vs SST: 論点整理のノートを書きなぐる。粒子数配分の決定 を仕切り壁の孔を介した粒子流バランスによるもの、だと考えてきたが、それでは SST等式と矛盾する。たしかに、(早川に)何度も指摘されてきたように、「現実の 壁」はそんなものではない。ただし、現実的な壁のデザインなどできるはずもない。 目をつぶって考えると、できる限りランダマイズして粒子移動を許すものを「孔の あいた壁」と考えるべきでないか。動力学ルールとしてどうやるかはわからないが、 この考えに従うと、ボルツマン方程式の定常熱伝導解から構成したシャノンエント ロピーを最大化するように、粒子配分やエネルギー配分がきまるはず。
このようにして決まった粒子数配分とエネルギー配分にもとづいて圧力差を計算し、 SST等式がみたされるかどうかを検討すべきでは。。(つまり、この等式が成立する なら、SSTエントロピー = シャノンエントロピー ということになる。まぁ、それ はそれでよいではないか。) 金さん! ここまできたらシャノンエントロピーも計 算してください。
12/9(日)
ボルツマン方程式の定常熱伝導解の情報を6個の数値の組として捉えることにする。 これらの数値を金君に教えてもらい、SSTと整合する可能性を模索する。ある数字が 半分になってくれたら「道」はあるようにも思うが、、、1/2, 1/2, 1/2 はどこか におちていないか... と何年も前にもそんなことをいっていた気がする。(何の問題 だっけ?)
12/8(土)
異方性について、考えをめぐらす。ううーむ。異方的媒質の平衡熱力学というのは 問題ないのだよな。何が同じで何が違うのか?
12/7(金)
京大集中講義3日目:昨夜はやく寝たのだが、途中で目が醒めてしまい、そこから あまり寝れなかった。色々なことを夢うつつで考えていた気がする。相当に疲れて しまったので、午後の講義はすわったままでする。帰りの新幹線でもずっと寝ていた。
午前:力学と熱力学との対応関係の整理。平衡状態に対応する力学状態は何か、と いう問題をランダムネスとの類推で議論するのは、みかけの面白さ以上に意味があ ると思う。近い将来もっとまじめに詰めたい。(そういえば、大学院講義「エント ロピー概論」は、来週からランダムネスに突入するのだった。) 午後:I の話。 Ψ も I も僕自身完全な理解にはほど遠い。しかし、示唆に富む新しい量を提案し、 それが本物かどうか、はらはらしながらも詰めていくのは、理論物理のひとつの ありようだと思う。
12/6(木)
京大集中講義2日目:昨夜はやく寝たので朝はやく目がさめる。午前、(線形)非平衡 統計入門。午後、非平衡定常状態の諸問題。午前は確立していることのスマートな整 理で、午後は「普通○○」というフレーズを非平衡研究の文脈で安易に使うことの批 判と分析をする。(注:決して過激な主張をしたわけではない。思い込みをなくし既存 の理論の前提と(数値&生)実験から帰結される自然な批判をしたつもり。)
夕方、SST。3枚-5枚程度の変更は気分と場所により色々あるものの、この2ヵ月 で、大枠として同じトラペを5回つかったことになる。(駒場、青山学院、高等研、 九大、京大。) そろそろ新しい波を迎えないとやばいなぁ、と正直思う。
12/5(水)
京大集中講義1日目:熱力学、L-Y を踏まえた復習。熱力学の変分原理から揺らぎの 理論へ。このあたりは学部講義らしい構成だと思うが、ブラックホールエントロピ ーの研究者が興味をもってくれたのは嬉しい。(面白そうな研究をされているので、 論文を送って頂くことにする。)
12/4(火)
やっと 1/r^{d-2} の相関をfluctuating hydrodynamics の暗算でできる程度に理解 した。(計算すればでる程度にはわかっていたが、計算しないとわからなかった。) 1/r^d の方も含めて、excitingなものではないが、局所平衡からの破れ、という点で は重要なことだと思う。
ボルツマン方程式 vs SST: ゆっくり見直したが、結果はかわらない。一方で、SST の結果として導いた等式 b=2a というのは、示唆的な関係式で、SSTと切り離した 「物理的な解釈」があるような気もする。
12/3(月)
京都では、集中講義の合間をぬって、ボルツマン方程式の熱伝導解がSSTと整合する かどうか、という(最後の)議論をする予定になっている。その warming up のため、 非平衡状態における温度の操作的定義に関する仮説を踏まえて、SST等式を再計算し、 解からきまるある係数たちの関係式をだしておくことにした。具体的な結果を金君 に問い合わせて、いくつか議論する。
「物理的温度の定義に関係なく、SST等式が b=2a になる」、という金君の指摘は 正しいようだ。(念のため、圧縮率経由の等式を書き下したが、結果は同じ。) そして、b=2a は成り立っていない。この時点で、「SST」と「ボルツマン方程 式の定常状態への適用」は矛盾することになる。
考えられることはふたつ。(i) SST がない。 (ii) ボルツマン方程式の定常状態へ の適用が間違い。後者は、ぎょっとするかもしれないが、理論物理的なレベルでも、 ボルツマン方程式の妥当性は、平衡状態での緩和でしかない。例えば、BBGKY を非 平衡定常状態で考えてから、希薄極限をとるとき、ボルツマン方程式に補正がつく 可能性がある。(そういう類の話を京都の集中講義で議論する。) もちろん可能性 に過ぎない。ボルツマン方程式は綺麗な形をしているので、非平衡定常状態の 希薄極限では、やはりボルツマン方程式になるかもしれない。そうなったら、(i) し かない。
希薄熱伝導の生実験でボルツマンの妥当性を定量的に検証して、そっちが生きたら SSTは死ぬ。逆に、SSTの検証生実験でSSTが生きたら、ボルツマン方程式の定常状態 への適用が死ぬ。いずれにせよ、6ヵ月以上にわたるハードな計算で、そういうと ころまでおいつめた金君は素晴らしい。
だけどなぁ。「物理的温度の定義に関係なく、SST等式が b=2a になる」というのは 変でないか? 今晩寝れないぞ。
12/2(日)
今週の水曜日から京大で集中講義がある。九州での反省を踏まえて、いくつか変更 する。とくに、2日目、SSTの前座として、detailed-balance, local detailed - balence, local equilibrium などの概念分析を簡単な例題でやろう、、と決意して、 ごちゃごちゃ計算する。概念分析なのだから、たとえば、「なーるほど、たしかに、 モデル H にもとづく計算は、こういう物理を外している..」ということが納得でき ないといけない。また、数行の式変形で理解できる程度の簡単な例題でなければな らない。が、もたもたする。(まにあわないかな。) 肉体的疲労からは回復したつも りだが、頭に疲労が溜っているのかもしれない。
12/1(土)
応用解析チュートリアルの講義ノートに関して、組織委員の方からコメントを 頂いたので少し改訂する。肉体的疲労が臨界を越えたようなので、しばらく横 になる。その後、卓球にいって、からだをうごかしていたら、次女がフェンス に激しく追突し、みるみるうちにオデコが腫れてきた。卓球を中止して病院へ いく。 目標に向かって突進しぶつかって倒れる.... というのは、次女がよく やることではあるが、、、しかたないか。