皆さんへ:この論文で展開している体系は、糸一本でぎりぎりつながっている、 というのが正直なところです。手放しで受け入れるのではなく、また、頭から 否定するのでもなく、この「糸一本」の緊張感を味わうことができたとき、 この論文の(本当の)楽しさがわかると思います。 学生を含む非専門家の方へ:流れるように読める文章にひきつけられ、熱力学の 拡張可能性を模索する真摯な試みとその到達点に学問の香りを感じてくれたなら、 大変嬉しく思います。しかし、だまされてはいけません。(Sasa-Tasaki 現象論 スタイルとしては)4年近くをかけてここまできたけれど、全く未完のもので、 とくに核心部分はまだぼやけています。この「ぼやけ」を感じさせないのは、 田崎さんの筆力のなせるわざです。論文をよーく読んで、何がしかの違和感を覚え、 その正体をみきわめれたら楽しいと思います。(* 注:決して、ごまかしているとか、 あいまいにして逃げている、ということではないです。逆に、完全なまでの丁寧さ と正直さで、問題点まで含めて、書いています。だから、違和感を覚えたときに は、それに対する我々の現段階の答えまでもが、論文中に書かれているはずです。) 専門家の方へ:新しい現象論の矛盾のなさを徹底的に検討して、その範囲で、 その現象論が本当に自然に存在するかどうかを検証・反証できる命題を提示 する、というスタイルの論文は、ほとんどないので、論文の読み方にとまどう かもしれません。既に論文として出版されている DLG の結果(Hayashi-Sasa) の背後にある枠組みからはいる方が専門家にとってはとっつきやすいかも しれません。まずは、付録から読み始めてはどうでしょうか。本文では、早々に 自分の専門領域に強引にひっぱりこんでしまうことなく、素直に論旨をたどって ください。 文章中心に一見平易に書かれていますが、現時点では、ぎりぎりのところは 大変難解なままです。 この難解な箇所を消化するのは、(僕らも含めて) 普段の研究生活と全く頭の使いどころが違って楽しいと思います。