都立大集中講義

非平衡系における新しい理論の構築を目指し、現象論とミクロな動力学(モデル)の 双方から考察を行う。具体的には以下の項目の講義を予定している。式変形や証明 の詳細でなく、問題設定や考え方の説明に重点をあてたい。    日時:場所 12月4日(水) 3,4,4' 時限 (13:00-) 都立大理学部棟 300室   12月5日(木) 2,3,4 時限 (10:30-) 都立大理学部棟 300室 12月6日(金) 2,3 時限 (10:30-) 都立大理工棟 201室 都立大へのアクセス: http://www.metro-u.ac.jp/access.htm キャンパスマップ: http://www.metro-u.ac.jp/campusmap/campusmap-j.htm

0章 : 一般的導入 [初日午後]

理論物理とは何か。非平衡系における理論とは何か。非平衡系における(現在の) 基本的問題とは何か。なぜ「今」なのか。これらの一般的な問いについて 真面目に考えながら、集中講義のテーマとその意義と構成をのべる。

1章 : ミクロからみた平衡状態 [初日午後後半]

平衡状態に対応する力学状態とは何か、という問いから、統計力学の基礎 (等重率の原理)の意義や論点について complexity をふまえながら考察する。

2章: 非平衡統計力学の到達点 [2日目午前]

20世紀非平衡統計力学は19世紀のブラウン運動と輸送係数の相反性の理解が 標的だったことを確認し、そこを標的として成熟した理論の(線形応答理論も ふくめて)第ゼロオーダーの本質的理解は Onsager 理論にほぼ尽きていることを 説明する。

3章: 非平衡理論の向かうべき道 [2日目午後]

21世紀に真にあたらしい理論があるなら、20世紀非平衡統計とは「問いかけ」 から異なっているはずだし、現在、理論の構築がまたれている諸現象の多くは、 ブラウン運動や輸送係数の相反性に尽きない部分である。それらから標的と なるべく単純な現象を抽出し関連する現象群を整理することからはじめるべ きである... という前ふりではじまる Steady State Thermodynamics project の紹介を行う。

4章: ミクロからみた非平衡定常状態 [2日目午後後半 ]

3章の問題提起をうけて、定常状態をミクロな動力学からみたときにみえてくる ものを解説する。具体的には、非平衡下の状態方程式の異常性、非平衡系における 熱力学関係式や揺らぎの関係式、ハミルトン系による問題設定。

5章: 熱力学第2法則をめぐって [3日目午前 〜3日目午後]

熱力学第2法則をミクロ動力学から考察する。統計力学を前提にしたときに証明 できることを明示的にした上で、最終的な理解にとって何が難しいのかを考える。 第1章の問にふたたびたちかえり、時系列のランダムネスの視点から、平衡状態 のエントロピーや熱力学第2法則を議論できる可能性を議論する。(時間に余裕が あれば、この可能性と定常状態への熱力学第2法則の拡張の関係についても述べる。)