平成16年度 東大院理学研究科 集中講義の構成(予定)

講義題目     現代非平衡統計力学
講演者       佐々 真一 
     
日時:         6月21日(月)〜23日(水) 
場所:        理学部1号館 あたりでは?

第I部 動機篇

非平衡統計に関して問題意識とある程度の知識がありながらも、釈然としない
違和感を覚えている学生をメインターゲートにして、非平衡統計とは何をする
学問で、どこまでできていて、どこに向かうのか、という整理を行う。したがって、
質問が駆動力になってくれることを希望している。質問は専門的なことに及んでも
構わないが、問題によっては 第II 部、第III 部にまわしながら、そこでふれない
ものについては、全ての答えを初歩的なレベルから説き起こすように努力する。
また、問題意識をまだもっていな学生や勉強をまだしていてない学生も
この第I部で問題意識を共有できるようにしたい。動機がないまま
技術的詳細を勉強するのは不毛であると考えるからである。

第II部 知識伝授篇

線形非平衡領域で成立する「普遍的関係式群」について、各々の関係式と
関係式間の相互関係について紹介する。線形化したモデルの複素解析演習
という(よくみかける)展開は全く使わない。相互作用する多体系があたえ
られたときに、普遍的関係式群が成立するからくりを丁寧にみていく。

さらに、非線形非平衡領域において、現在までにわかっている知見について
トピックス的に紹介する。具体的には、 揺らぎの定理、定常状態測度の表現、
非線形応答関係式、 不可逆循環、 長距離相関、相加性原理 など。

第III部 研究展開篇

非平衡定常状態の統計力学をめざした試みを展開している。局所的な格闘と
その全体像の位置付けの分離をつねに意識しながら、未完の体系に迫っていく
様を紹介する。歴史的に確立している事項や個別的な話題で閉じる研究結果
の紹介ではない。したがって、おそろしく未熟なまま停滞している部分と
かなり成熟している部分が隣合わせていたりする。第III 部では、講演者らが
獲得してきた知識を伝えること以上に、こうした研究の現場感覚を伝えること
を忘れないようにしたい。