H-S III a 多体系の問題 (03/10/12)
1次元Ising 相互作用の driven lattice gas モデルを考える。易動度、 カレント揺らぎ、拡散係数、密度揺らぎという4つの量を測定する。 平衡近傍(外力に関する線形応答領域)では、2つの独立な関係式がある。実際、 数値計算でたしかめることができるし、数理的に証明することもできる。 外力が大きい領域では、このふたつの関係式が成り立つ理由がなく、実際 「大きく」はずれる。非平衡統計力学が線形領域でしか使えない、 ということの典型であり、こういう経験をつんでくると、非平衡では 線形応答領域をのぞいて各論しかない、というあきらめがでてくるのである。
ところが.... 基盤となっている熱力学が非平衡性によってかわっていることを 仮定し、その変化を「測定によって」とらえ、得られた基盤にもとづいて、 関係式を再構成できる可能性がある。(いわゆる、SST 計画。) 実際、そのよう にして自然に新しい関係式が推測されるので、これを数値実験でみてみよう、 ということをやっている。素朴な関係式をそのまま適用したのでは「大きく」 はずれるのだが、新しい関係式では、びっくりするくらい近い値をはじくよう になる。
改善の程度は質的なものだから、そこを基準にすれば非常に満足すべき結果 かもしれないが、等式成立の程度という点では相対差1パーンセントを目標 にしているので、もうちょっと細かい点を色々とつめないといけない。[この あたりはモデル選択の特殊性があるかもしれないので、どこまでまじめにつめる のかは微妙であることは承知の上である。] 数値的な精度をつめること以上に、 間に挟む(拡張された)熱力学関数に相当するものが、いままでにみたことない 異常なものになっているので、その解釈がまだよくわからないのが気持悪さ として残っている。